第29話 開幕!そして終了!?
感想など宜しくお願いします!
※これまでの話で分からない点なども感想で記入してもらって結構です。
早くも剣魔闘祭は午後の部へと入っていっていた。
俺達は空席に座って、午後の【剣魔闘大戦会】を観戦していた。
今は準決勝戦へと入っており、左右に分かれた競技場で各グループごとに対戦が行われている。
そして早くも左側のグループで、決着がつきそうになっていた。
左側のグループは、優勝候補とされる上位兵のランガー・ベイル。
その相手は、同じ上位兵のバスカ・ルーツという男。
そんな左のグループの戦況は、誰の目から見てもランガーが優勢といえた。
「お前……本当に上位兵か!?」
「あぁ。まぁ確かに、お前らみたいなクソ雑魚上位兵とは比べ物にならんかもしれんがな!」
そう言ってランガーは、隙をついて蹴りを入れた。
バスカ・ルーツはその拍子に倒れ、尻もちをつく。
ランガーはその瞬間を見逃さず、木剣をバスカ・ルーツの首元に当てた。
「勝負あったな!」
「……クソ」
左グループはバスカ・ルーツの降参という事で、ランガーの勝利に終わった。
そしてほぼ同時に、右側のグループも決着がついたようだった。
……いったい誰が勝ったんだ?
そうして俺は右グループの方へと目を向けた。
舞台では、二人の闘技者が同じように膝を抱えてうずくまっていた。
「な、何があったのよ!?」
異変に気づいたカーナが声を荒げる。
少しして審判が退場コールを鳴らし始め、闘技者二人は先生に運ばれるようにして退場していった。
闘技者の退場が終わった所で、実況がアナウンスを始めた。
「え、ええ……先程の試合ですが……まさかの両者とも、重度の負傷による引き分けとなりました……」
りょ、両者引き分け!?
それじゃあ決勝はどうなるんだよ!?
「……審判の結果、決勝戦は行わないこととなりました……」
実況がそう言った瞬間、空気は突然重苦しいものへと変わっていき、嫌な雰囲気に包まれていった。
「アンドリュー、準備しておきなさい!」
と、いきなりカーナにそんなことを言われた。
まさかとは思ったが、どうやらガチのようだ
それはつまり、こういうことなのだろう……
「ということで!今年の剣魔闘大戦会の優勝者は……ランガー・ベイル君です!」
うぉー!という歓声が、舞台中に響き渡る。
その歓声によって、さっきまでの悲しい雰囲気というか、重苦しい雰囲気は一瞬にして消え去っていった。
「それではこれより、毎年恒例の裏イベントを行いまーす!優勝者であるランガー君は、これから四天の誰か一人と対戦することが可能になります!それではランガー君、誰をご指名しますか?」
うわぁ……遂に来ちまったよ……
誰を指名するかなんてもう分かりきってるけど、何かの間違いで変わってくれねえかな……はぁ……
「お前だ!アンドリュー!」
そう言ってランガーは、上から観戦している俺に向かって指を指した。
その瞬間、先程以上の歓声が舞台中にこだました。
俺は同時にそそくさと席を離れようとしたが、周りの視線は既に俺に釘付けであり、逃げる事は不可能であった。
(あの野郎……あんな大声でしかも指までさしてきやがって!)
「はぁー……」
俺はため息を一つつきながらも、闘技場と観戦席を繋ぐ階段をおりていく。
辿り着いたのは、ランガーの待っていた競技場だった。
「全力でやる約束だったよな、アンドリュー!?」
ランガーは興奮した様子で俺にそう言い、剣を持って構えていた。
「勿論、手は抜かねえって」
俺はそう言って、審判から競技専用の杖を借りる。
「両者準備はいいな?」
俺達は同時に、首を縦に動かしてコクリと頷く。
「両者よーい……始め!」
審判がそう言葉を放った瞬間……ほぼ同時にランガーは勢いのままに俺目がけて飛び込んできた。
それに対して俺は、別に動くこともなくただ待ち構えていた。
「おらっ!」
ランガーと俺との距離はどんどんと……いや、案外一瞬にして縮まり、やがて俺はランガーの射程圏内に入っていた。
ランガーは木剣を手にして、俺の頭めがけて木剣を突き刺した。
俺はそれをスルリと回避し、横へ動いた、が対してランガーは追撃を仕掛けてきた。
木剣を突き刺した勢いを、俺が回避したのを理解した瞬間には止め、そのまま横にいる俺目がけて木剣を振り出した。
「またかあぁぁぁー!!」
俺はそれをもまた回避し、同時に火球を放つ。
「!?」
ランガーは驚きつつも、瞬時に木剣で火を受け止めた。
だが最悪なことに、木剣だったため火は燃え移り、木剣は跡形もなく消えさっていった。
「どうする?もう武器はねぇぞ、早めに降参しとくか?」
「いや、武器ならまだある」
そう言ってランガーは後方へと走り出し、壁に腰掛けられた銅像の腰にかかった剣を抜き出した。
「お前こそ、降参しといた方がいいんじゃないか?」
「あ、あんなの反側じゃない!?反側よ反側!!」
観戦席からカーナがそんなことを叫んでいた。
「あれは鉄製の剣だ、当たったら擦り傷どころじゃすまないですよ!!」
グリムもそんなことを言い出していた。
「外野は黙ってやがれ!これは俺とアンドリューの勝負だ!決めるのは俺たちだろ!」
そうだな、確かにそうなのかもしれない……
だったら、俺がだす答えは一つ。
それは……
「確かにそうだ、これは俺とお前の勝負。周りにとやかく言われる筋はない。だからこそもう一度この場で聞かせてもらう、本当に本気でやっていいんだな?お前がどうなろうと、俺は降参というまでお前を叩きのめすが」
「ひっ……ひひひひ!あぁいい、それで結構だ!さぁ、お前の本気ってやつを見せてくれよ!」
「アンドリューのやつ……何無茶を言ってんだよ!最悪死ぬかもしれないんだぞ……」
グリムはそんな悲痛なことを言って落ち込んでいた。
だがまぁ、安心してくれグリム。
今日の試合を見て、そして直接やり合って分かった。
俺がコイツに負けることは、絶対にないってな。
「ランガーのあの動き、確実に去年より強くなってる……剣術上級ってのは、あながち嘘じゃないのかもしれないよ」
グリムは冷静に分析を始めた。
あれが上級?そんな馬鹿な……
あんな遅い動きが、ロインと同じわけないだろ!?
「くらいやがれっ!!」
前を見ると、ランガーは既に大ぶりの構えをしていた。
動きが単調すぎる。
これじゃどう動くのか、すぐに分かる。
「遅ぇよ」
俺はランガーの首元に杖を叩きつけ、そのまま勢いよく後方へと押し倒した。
「ぐあぁ、ぐへっ!」
背中から叩き落ちたランガーは、そんな情けない声を出し、うずくまった。
「降参するか?」
俺は倒れたランガーの顔に向けて杖を指した。
「ぐっ……チッ!あぁ、負けだ負け!降参だよ!」
やっと負けを認めてくれたかぁ……
さすがに上級魔術を使ったらコイツを殺しかねないからな、早めに終わらせとけてよかったよかった!
「こ、これは!ランガー君が降参を表明!?」
途端、観戦者のほとんどがざわついた。
「あ、あいつ……私との決闘の時より、はるかに強くなってる……」
そんなカーナの発言を、グリムは安易と否定する。
「いや、きっとあれこそが、アンドリューの本当の力だったんだと思う」
「か、隠してたってこと!?敢えて全力を出さずに!?それじゃあ何の為に……」
「それは分からないけど……でも、今思うと彼の行動は不可解なことが多かった気がするよ……まるで何か、本当の力を隠しているみたいだった……」
「わ、私にはそうは見えなかったけど……」
そんな中アンドリューは、自分が疑われているとは知らずに舞台上に立っていた。
「しょ、勝者は……アンドリュー君です!!」
その瞬間、うおぉぉぉおー!という怒号にも似た叫びが……今日一大きな叫びが、舞台中に響いた。
「ほらよ、」
俺はそう言って、倒れたランガーに手を差し出した。
「チッ……」
舌打ちをしながらも、ランガーは俺の手を受けとり、起き上がった。
「確かにお前は強かった……それも、シュバルに匹敵するくらいにな……認めてやるよ、お前は強い!」
いや、そんなのを認めてほしくてやったんじゃないんだけどなぁ……
まぁいいか。
「それとな……………『昨日の敵は今日の友』ってことわざもあるだろ……だから………その………あんな酷えこと言っといてなんだが………俺と……と、、、友……達……に、っっっっ!なってくれねえか!」
片言ながらも、ランガーはそんなことを言ってきた。
顔を赤くして、少し照れているようだった。
何だって赤くなる必要が?
……これがいわゆる、男版カーナってやつなのかも!
「そんくらい別にいいけど……じゃあ俺も、これからはランガーって呼ばせてもらうぞ」
「お、おう……よ、よろしくぅっ!」
何やなんやで、こうして俺に新しい友達ができた。
読了ありがとうございました!
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