第27話 心、狭し
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予言者リーナの書 : 3
この世界には【王証】【神証】と呼ばれる、いわば階級のようなものがある。
【王証】は、王と呼ばれるに相応しいような何かを持っている者に授けられる証。
例えば、権力的な意味で言えば『王様』があげられる。
純粋な武力で言えば、『火の魔術を極めた【炎王】』
など(水や土や風や雷も)魔術という部門で王に相応しい力を持つ者や、【大陸王】などのように、その大陸で最も強き者として与えられる証である。
【神証】は、『古き歴史に名を馳せた強き者』に授けられる証である。
それこそ権力的な意味ではなく、ただただ純粋な武力の大きさで決まるものだ。
また、人では成し得る事は絶対に不可能とされるような事を成し遂げた者に授けられる証でもある。
いわばそれは、『人外』の世界である。
例を挙げるならば、かつて世界を滅ぼさんとした【魔神】や、その魔神に匹敵したとされる【炎神】などだ。
そして人族からも稀に、【神証】になりえる器を持った者が生まれる。
それを皆は…………と呼ぶ
「何だこれ?最後の文字だけ黒く塗りつぶされてて、よく見えないぞ?」
俺は今、宿の部屋にて本を読んでいる。
名前は『予言者リーナの書』というそうだ。
中身はまだ詳しくは見ていないが、ペラペラ見た感じだと、どうにも胡散臭くて仕方ない。
例えばここ、『歴410年:魔王撃破!』こんなのどうやって知ったんだよって話だ。
予言者なら未来のことは分かっても、過去の事はわかるはずないだろって思う。
過去にでも行ってんのかよこの著者は。
などと思いながら読んでいると、扉から一人の女が入ってきた。
「あっ、それちゃんと読んでたのね。てっきりあんたのことだから、読むといいつつも寝るのかと思ってたわ」
「俺はナマケモノじゃねえぞ……」
ナマケモノは、一日に平均約17時間寝ているそうだ。
睡眠で一日の半分以上を使ってるとか、損にしか思えない。
「あんたがナマケモノだったら怖すぎるでしょ!?木にぶら下がりながら、ゆっくりと火を放ってきそう!」
カーナは笑いながらそんなことを言っていた。
何が面白いのかさっぱり分からんが……
まぁでも、ここは何かツッコんでおかないと面倒そうだし、ツッコんでおくか……
「それだと木が燃えるだろ」
「確かにそうね……だとしても、あんたがナマケモノになってる姿は面白そうだからいいわ!」
良いのかよ……
火事よりも笑いを優先するのかコイツは……
「それにしてもこの本、どうやって買ったんだ?……まさか!貴族専用で、庶民は見ちゃダメみたいなやつだったりするのか!?」
俺はスルッと話題を元に戻した。
正直、謎な『ナマケモノ』で盛り上がるのは訳わからなかったんでな。
「いやいや、普通に売られているやつよ!それも、結構有名な予言者が書いた者らしくて、中々に高値だったのよ!」
へー、この予言者はそんなに有名だったんだな。
「その予言者って、いつ頃に流行ってたんだ?俺が生まれた時に聞いたことはなかったんだが」
「結構昔らしいわよ、確か……20年くらいは前だった気がするわ!」
20年はそこまで昔じゃなくないか……?
……いや昔なのかも
俺はそういう時間感覚がどうにも分からん。
いわゆる世間知らずってやつなんだろう。
「あと、その……ずっと聞きたかったんだけど……体の方は大丈夫なの……?」
突然重い雰囲気に変わり、俺はどう答えるべきか悩む。
実は俺は、前の前日模擬戦にて突如倒れて意識を失ってしまっていたらしい。
勿論のこと、俺の体に異常は一切無かったらしい。
検査結果は、寝不足と言われた。
だったら、ここで普通に大丈夫と言えばいいんだろうが……あいつの言い方的に、結構心配してくれていたやつだ!だからこそ、そんな簡単に言うのでいいんだろうか……こんな心配させといて、実は何もありませんでしたー!なんてのはちょっとなー……
よし、ここは正直に言おう!
そんで何かあったら土下座しよう!
俺はそう強く決意して答えた。
「じ、実は……体に異常は何もありませんでした!ただの寝不足だそうです!」
「え……寝不足……?」
うわっ!
やっぱりそういうリアクション来ちゃったよ!
まずい……ここはどうやって取り入るべきか……
時間もなく、俺は勢いでカーナに土下座をした。
「すいませんでした!無駄に心配させて!」
「良かったー!何かあったのかと思ったよー!」
俺が土下座をすると、カーナは勢いよく俺の方へと飛び込んできた。
(な、何だ……!?)
「本当に心配したんだからね!?もぅ……良かったぁー!!」
カーナは泣きじゃくりながら、俺に抱きついてそう言った。
これは……別に土下座しなくても良かったのでは?
まぁでも、まさかカーナがここまで心配してくれていたとは、驚いた……
「そ、それで……明日の剣魔闘祭は出られそうなの?」
「あぁ、まぁなんとか勝てるように頑張るとするわ」
なんて言いながらも本心は、『大勢の観客の前で、ボコボコのグチャグチャに叩きのめして大恥かかせてやるぜ〜!』と思っていた。
まぁでも、マジの強敵の可能性はあるからな……
ランガー・ベイル……カーナ達が言うには、剣術は上級に近い中級だと言っていた。
ロインは確か上級だったし、それに近いってなると……結構強くねぇか……?
俺は今になって、少し焦りを感じ始めていた。
あんだけ大口叩いといて負けるなんてあったら……それこそ、大恥をかくことになる……それだけはいやだー!?
俺は一人で、焦りと葛藤を繰り返していた。
そんなまま半日が経過し、いよいよ剣魔闘祭当日となった。
いつものように皆で登校し、門前まで来た時……一人の男が立っていた。
今日俺が戦う予定にある男だ。
「ようアンドリュー、俺にやられる覚悟はしてきたか?」
そう、ランガー・ベイルという男だ。
「まぁ負けたら負けただしな……その時は頼むわ」
俺はあえて調子に乗ったことを言わなかった。
これにより、俺が負けた時に大恥をかくことは無くなった!ハーハッハッハッハッー!!
「何だその答えは……まるで勝つきなんてはなからないみたいな言い方じゃねぇか……」
「そんなことはないぞ」
別に負ける気はない…というか、俺だって勝ちたいわ!
「お前から覚悟ってもんが微塵も伝わってこねぇ……もし、本番で全力を出さなかったら……お前がやってる、魔力の供給をする装置をぶっ壊す!」
「……それはやめろ」
「!?」
俺はランガーを睨むようにして、低く言った。
あれがなかったら、俺は故郷に帰れないんだよ!
ランガーはその拍子にこけ、尻餅をついた。
「全力で戦ってやる……ただし、それでお前がどうなろうと、止めてこようと、俺はお前を全力で叩き潰す。いいな?」
ランガーは頷きながらも、少しの戸惑いを隠せていなかった。
それにしても、俺の心は狭いな……
あんな程度でキレるなんて……
そうして俺達は、学校の門を潜った。
読了ありがとうございました!
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