第25話 目覚め【破】
〈レイス視点〉
「ふむ……」
生きてはいる……だがいくら無属性魔術師とはいえ、脳と心臓の両破壊をされれば再生は不可能のはずだが。
アンドリューの体は今や原型を留めておらず、肉片の塊となっていた。
「少し調べてみるか」
私はアンドリューの肉片に手を置いた。
これで魔力の流れを確かめるのだ、死んだ者には魔力は流れない……人間なら……な……
「やはりですか……」
微小だが、魔力の流れを感じる。
それも人間の魔力とは違うドス黒いものだ、これは……
「……魔族のものだ」
「!?」
突如、後方からそんな声が聞こえた。
私は瞬時に離れ、振り返った。
そこには背の高い男が立っていた。
アンドリューの肉片が無くなっている……じゃあコイツが……!?
「君はアンドリュー……じゃないね」
「我がそんな低種族に見えるか?」
男はそう言った瞬間、とんでもない殺気を飛ばしてきた。
「グゥッ……!」
なんという殺気だ……一瞬ながら死んだ自分が見えたぞ……
だ、だが……
私は反抗しようと体を起こした。その瞬間……
「ほぅ……我と殺るか?」
男は、先ほど以上に悍ましい殺気を私に飛ばした。
これは……まずい……
意識を失いかけるほどの殺気に、私は汗をダクダクとかく。
「し、失礼をしました……貴方様は何者でございましょうか?」
「立場をわきまえたか、だがいいぞ!先ほどのことは許してやろう!」
男はそう言って私に近づいてきた。
近くでみると更に迫力が変わるな……
まるで目の前に悪魔でも立っているかのようだ……
アンドリューの魔力のことも気がかりだったが、これで決定した……
こいつは魔王だ……そうでなくては魔族でもこれほどの殺気、出せるはずがない……
「ま、魔王様に無礼をしたことは悔やみ悔やみきれません……た、ただそれでも一つ聞きたいことがあります、貴方様とアンドリューの関係というのは一体……」
「あぁ、こやつはただの我の新しい肉体……そう、器だ」
「し、しかし彼は炎神の器でもあります、炎神は魔王様に【神証】を与えるつもりはないでしょうし、このままでは炎神に命を狙われます。幾ら魔王様といえど、炎神相手では勝機は薄いでしょうし……」
「我が炎神如きに遅れをとると……!?」
魔王は私をギロッと睨んだ。
「ヒッ……!」
あまりの威圧感に、私は腰を落としてしまった。
「それと我は魔王などではない、あんな弱者と一緒にするな!」
「……えっ!?魔王じゃない!?」
どういうことだ……これほどの威圧感と殺気を持つ魔族、魔王以外には……あっ…
一人だけいた……歴史上最も恐れられ、その強さから勝てる者は誰もいないとすら言わせた、【神証】を持つ魔族……
「我は魔神……魔神グラトムだ!」
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