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冒険記録-世界を救う30年間-   作者: 鮭に合うのはやっぱ米
プロローグ
3/71

第2話 怪物の肉体と気力



 いくらシェリアでも人間なんだ。

 生身の人間が、《魔狼》なんかに噛まれたらそれはもう……………

 

 俺はシェリアを助けようと、全速力で走った。


 だが、俺はすぐにその足を止めた。


「……………え?」

「心配しないでくださいよ、坊ちゃん」


 何事もなさそうに、シェリアはそう言って《魔狼》を腕から剥がしてみせた。

 見ると、シェリアを噛んだ《魔狼》の牙はシェリアの腕を貫いてはいなかった。

 それどころか、牙は皮膚に一切の傷をもつけれてはいなかった。


「………ほんと、お前の体はどうなってんだよ」


 俺は笑いながらそう言った。


「それは褒めてる………んですよね?」


 俺は適当に、「あぁ褒めてる褒めてる」と言っておいた。


 《魔狼》はというと、シェリアの化け物じみた強さに勝てないと分かったのか、すぐに森の奥へと逃げていった。


「まぁ、これでもう襲ってくることは無くなるだろ」

「ですね!」






◇森林生活〜三年◇


 それから俺達は、さっきシェリアが吹き飛ばした《魔狼》を食べて今夜を過ごすことにした。

 そして、俺達の森林生活が始まったのは、次の日からだった……………


 朝6時 : 俺の朝は、樵から始まる。どこから持ってきたかも分からないシェリアの《魔道具》を使って、〝木〟をバッタバッタと〝切〟っていく。木だけにね!

 そうして俺の6時間は消える。


 昼12時 : いい汗をかいた後は、大人のワイン………ではなく、あったかいミルクでひとときの安らぎをえる。ご飯も専属のメイド特製の《魔狼》ステーキだ。とんでもなく生臭い。


 夕方6時 : 飯の後の数時間は自由休憩。そして夕方になると、シェリアとの魔術と剣術の稽古がある。だけど剣術は嫌いだ。というかできない、むずすぎて。《鈍流》の初級ならできるが、シェリアは何故か《鋭流》という極めて難しい剣術を教えてくる。ほんとなんでだろう。魔術は、初級火魔術ならできるけど、他はなんもできない。才能の差ってやつだ、諦めよう。ただ、火魔術は風呂の火おこしですごく便利だから愛用している。初級だけどね!


 ………そうして、三年が過ぎた。


 俺は三年という長い時間、同じ場所で同じことをし続けるということに飽きが出始めていた。

 そして、一つ思った。


「………街に出かけたい」

「いいですね!それ!」


 俺のポツリと呟いた一言に、シェリアは大きく同意した。

 こうして、俺は街へ出かける許可を得た。

 もちろんシェリアも一緒にだが。






◇サーバック王国のとある街◇


 久しぶりに故郷とも言える国に帰ってきた。

 そして、久しぶりに見る人。

 〝飽き〟というぽっかり空いた心の穴を、ようやく埋めてくれそうだ。と、俺は思った。


 街の雰囲気というか、見た目は三年の間で大分変わっていた。

 クーデターが起きたといっても、もう昔のことだからかな。みんなもう、そんな事は忘れちゃってるのかも。


 俺はそんな故郷を見て、もしかしたら城にまた戻れるかも!という淡い希望を抱き始めていた。


「………掲示板」


 街の中心部には、巨大な掲示板が設置されていた。

 

「へー、結構再建されたんだな。あ、これ俺の好きなたこ焼き屋じゃん!」


 俺は掲示板を見ながら、そう言ってはしゃいでいた。


「なぁ、シェリ……………」


 と、シェリアを呼ぼうと振り返った俺は言葉を止めた。

 シェリアが、勢いよく俺を引っ張って全速力で街の外まで走り出したからだ………





 

◇執着◇


「………何すんだよ!」


「静かに!」


 俺が叫んだ途端、いつにも増して怒った表情でシェリアは俺を怒鳴った。何なんだよ……………?

 するとシェリアは、俺の耳元に口を寄せて、囁くようにしめこう言った。


「………これを見てください、坊ちゃん」


 見せてきたのは、一枚の紙だった。

 そして、そこにはこう書かれていた。




《グランデの森、捜索部隊の募集》


 私はスカリー・サーバック。

 現国王ローグ・サーバックの孫であり、今は亡き前国王ルーク・サーバックの息子だ。

 突然だが、皆は三年前に起きたあのクーデターを覚えているだろうか。

 皆も知っての通り、クーデターの主犯は我が弟アンドリュー・サーバックである。

 そしてあのクーデターでは、何百という数の人々が殺された。

 とても許せるものではない。

 しかし、我が弟はまだどこかで生きて、のうのうと暮らしておる。

 あの忌まわしい事件に恨みを持つ者、もしくは許せないと思っている者。

 そう思っている人に協力して欲しい。

 我々は今、大規模な捜索隊を使って王国付近を隅々まで探している。

 しかし弟の姿どころか、形跡すら見つからん。

 我々の推測では、おそらく奴はグランデの森で隠れている。

 そこで、グランデの森捜索隊を作りたい。

 もう一度言うが、あの事件に恨みを持つ者、もしくは許せないと思っている者。

 我々と協力し、あの事件に終止符を討とう!

 そして、この国を更に発展した豊かな国に変えていこう!


 協力したいと言う者は、ここにある紙を王宮の門番まで届けてくれ。

 たくさんの報告を期待している。


               〈スカリー・サーバック〉



 

「………これは、あの掲示板に貼られていたものです」


「…………………………」


 シェリアの言葉に対して、俺は何も言わなかった。


「………もし、あのままあの国にいたら、私達は捕らえられ、そして処刑されたでしょう……」


 クーデター首謀者のスカリー・サーバック。奴は俺の兄貴である。

 そして王戦争いで勝つために、サーバック王国にクーデターを起こした。

 そんなのが、この国の現国王だそうだ………

 

「ま、いいんじゃねえの?」


「………え?」


 俺の返事に、シェリアは驚いたような声をだした。


「だって、別に俺はこの国に思い入れねえし」俺は続けてこう言った。


「だから、サーバックの名も捨てようと思う。いらねえよ、こんなの」


「…………………………」


 次は、シェリアが黙っていた。


「お前はどうなんだ?」


 同意を求めるようにして、言った。


「私は………」


 シェリアは言葉を溜めていた。

 そんなシェリアの溜めは長そうだったから、俺は待たずに次の言葉をかける。


「だからさ、俺もそろそろ変わろうと思うんだ」


「……どうゆうことですか?」


「俺は、お前がいてくれたらどこまでもいけそうな気がするんだ」


 だから………と言葉を置いてから俺は言った。


「なろうぜ、《冒険者》!!」




 

 



 


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