第18話 入学
私の名前はルナリア
騎士見習いが集うここ、聖騎士学校に通う生徒である。
聞くと今日は、この学校に転入生が来るらしい。
「シュバルの時も転入だったよねー」
私の横の席に座る子が喋った。
彼女はカーナ
カーナは、この学校の最高位クラスである『四天』の一人である。
そして私も、その『四天』の一人だ。
「シュバルが居なくなってから来るって事は、その代理で来るって事だよね?」
「そうだと思う。もしかしたら、シュバル時みたいに火魔術士が来るかもね!」
「それはないわ。なにせ、あんな事できる奴なんてそうそう現れないだろうしね」
「そ、そう……」
少し期待してしまった……
無理だとは分かっていたけども……
ガラガラガラガラ
ドアを開ける音とともに、男が入ってきた。
「みんなー、席についてー」
だらけた声で生徒を仕切るのは、この『四天』をまとめる担当教師。
名をレイス・ランス
「今日は、昨日から言っていた転入生を紹介します!」
「一つ質問していいですか?」
わたしは一粒の淡い希望を抱いて質問をした。
「その転入生は、どの属性の魔術で四天に入ったんですか?」
「皆さんご存知の通り、今からくるアンドリュー君は、シュバルツ君の代理で急遽きてもらいました。そして、"シュバルツ君が戻ってくるまで"の代理ですので、勿論使う魔術は……『火』です」
「えっ!本当ですか!?嘘じゃなくて?」
最初に声を出したのはカーナだった。
「本当ですよ……」
何だか奇跡が起きちゃったみたい!
でも……さっき先生はアンドリュー君と言っていた。
アンドリューと言えばおそらく……
「先生はさっき、アンドリューって言ってましたよね?それってまさか、あの有名な凄腕の魔術士であるアンドリューの事ですか?」
「はい。その有名人のアンドリュー君ですよ」
「ええっ!すごいわ!うっふっふ〜ん!」
アンドリューは、凄腕の魔術士として有名だけれど、裏では黒い噂として、『傲慢で肥満な体型をしたクズを具現化したような存在』と噂されている。
もし本当にそんな人なら…私は仲良くは出来ないかもな……
「それでは、入ってきていいですよ!アンドリュー君!」
「はい!」
アンドリューが入って来た。
「えっ!?」
私は驚いてしまった。
でも、そりゃそうでしょう。
何せ、肥満と聞いていたその体は、噂とはまるで違い、ほっそりとした体に筋肉が付いたたくましい肉体だった。
男の理想とも言えるその体は、私を圧倒した。
そして……
「この度、この騎士学校に転入生として入学させていただくことになりました、アンドリューです。これから、約一年間ほどですが、宜しくお願いします!」
私が見たのは、傲慢と聞いていた性格からは予想もつかないほどの、丁寧な言葉遣いと優しい声だった。
「アンドリュー君も来た事だし、まずはみんなからも自己紹介をしていこうか!」
何だろう……彼を見ていると…何だか心臓の鼓動が早くなってるように感じる……
「じゃあまずは……ルナリア君から!」
彼を見てると……胸がドキドキする………
「ルナリア君………?」
「ふぇっ!?あっ、はい!?」
どうしよう〜……
彼をガン見して…さらにドキドキしてるのを見られちゃったよ……
「えーと、私はルナリア・エーラルキ。皆からはルーナと呼ばれてるわ!えっと…アンドリュー…君も、ルーナと呼んでくれて構わないからね!」
「あ、うん……あと、俺の事はアンドリューでいいよ」
「あっ、うん!アンドリュー!」
「じゃあ次は私ね!私はカーナ・シーベルト。私の事はカーナでいいからねー!アンドリュー!」
「お、おう……カ、カーナ……」
「ぼ、僕はグリム・ウィザードと言います……え、えっと……僕の事は、好きなように呼んでください……」
「お、おう……じゃ、じゃあ……グ、グリム……」
「……………」
な、何だかぎこちない気がするなぁ……
さっきまでの威厳ある格好の良い姿とは少し違う気がする……
「じゃあ僕からも!これから一年間、君の教師をする、レイス・ランスです。魔術全般は得意なので、分からないことがあったら聞いてくださいね?」
「わ、分かりました。よ、宜しくお願いします……」