第15.5話 ロインはその時……
「何がおきたっていうんだ……」
ロインは混乱していた。
その理由はというと……
俺はついさっきまで、鍛冶屋に行って製作してもらった大剣を受け取りに行っていた。
あの二人にはそれまで"簡単な依頼でもこなしててくれ"と言っておいていた。
俺は大剣を受け取り、そのまま宿屋へと戻った。
しかし、部屋の中には二人はいなかった。
あった物というと、机の上に置かれていた依頼書と思われる物だけだった。
依頼書を見てみると、場所はさほど遠くない平原だった。
難易度も低ランクのもので、こんなに時間がかかるとは思えないが……
何かあったのかもしれないと思い、俺は新しい大剣を持って、すぐに依頼場所へと行った。
それから数分が経過した。
その時点でもう、依頼場所らしき平原に来ていた。
「魔物は見当たらないな……」
俺はそのまま、どんどんと平原の奥へと進んで行ったー
ーその時だった!?
「何だこれは!?」
前方を見ると、平原の一部に巨大な焼け跡ができていた。
「まるで太陽でも降ってきたみたいだな」
俺は焼け跡という事から、アンドリューの火魔術を一瞬考えてしまった。
「アンドリューは凄えが、今はまだ上級までしか火魔術は使えない」
そして、この焼け跡は確実に、上級の魔術なんかでできるようなものじゃない。
もっと上の……天級とかの域だ。
「アンドリューじゃないとしたら、これは誰がやったもんなんだ?」
あいつらの帰りが遅いことと、この焼け跡は、必ず何か繋がりがある気がする。
「おいおい……うそだよなぁ……」
これは夢だ……これは夢……
俺はそのクレーターの中央に転がっているものを見てしまった。
形はバラバラだったが、そこにあったものは間違いなく、骨だった。
「違う……これは人の骨じゃない!?きっとそうに違いない!」
俺はショックのあまり、混乱してしまっていた。
「そんなわけ…そんなわけぇ!!」
そのまま俺は、ショックで倒れた……
目が覚めると、いつもの宿部屋の上に横になっていた。
「嫌な夢を見たな……」
俺は起き上がり、いつものように二人を起こすー
ーしかし、部屋の中に二人の姿はなかった。
代わりにそこには、宿主がいた。
「やっと起きたかい!三日前に出ていってからいなくなったから心配したよー」
「出ていった?三日前に?……はっ!」
俺は、あれが夢ではないことに気がついた。
そしてそのまま、宿主に飛びかかり……
「なぁ、おい!二人は?いつも一緒にいる青髪の女と黒髪の男のことだよ!」
「おいおいどうした?一旦落ち着けって!」
俺は宿主に手で制され、俺が倒れたから何があったのかを聞いた。
「あんたが倒れてから、俺はあんたらの帰りが遅いことに気づいたんだ。それで捜索隊に連絡し、あんたらの捜索を頼んだんだ。幸い、机の上に依頼書があったおかげで、あんたをすぐに探し出せたんだ」
「俺の事は分かった。じゃああの二人はどうなったんだ!?」
「彼等なら、言いにくいが……おそらく死んだそうだ。あんたが倒れてた近くに、骨が幾つも転がっていたそうでな、後日それを検査してみると……人骨だったことが分かった…」
何だよ……それ……
あいつらが……死んだ?
「ちょっと待てよ!もしそれが人骨だったとして、それがあいつらのとは限らないだろ!」
「捜索隊によるとな、あの依頼は過去にないくらいの簡単な依頼だったそうだ。そして報酬も少ないということで、あの依頼を引き受けるのはお前達が初めてだったそうだ。そんな人の少ない場所に人骨が落ちていて、そこに行ったという人がいて、おまけにそいつは行方不明ってんだ。……そろそろ、現実を見るべきだと思うぞ……」
「そん………な……」
待てよ……人骨のあった所には巨大な焼け跡があった。
あれがアンドリューのやったものじゃないということは、ほかに別の何かがいて、あいつらはそれに襲われたってことじゃないか?
俺がもし、あいつらと一緒に行ってれば……いや、そもそも俺が大剣を壊さなければ、あの依頼をすることもなく、あいつらが死ぬこともなかったんじゃ……
俺が……俺が……
「俺がもっと…強かったなら………あいつらを守れるくらいに…強かったなら」
強く……なってやる…………
そして二人を殺した奴を見つけ出して……何としてでも……
「ぶっ殺してやる……」
ごめんな……アンドリュー…シェリア…俺はまだ、そっちには行けない。
待っていてくれ、二人を殺したやつを殺すその時まで……
そしたら、俺もそっちに行くから……
男は誓う…友を…仲間を殺した者を殺すと……復讐を誓う……。
男は誓う…強くなると…仲間を守れるくらいに強くなると……
男の名はロイン。
復讐を誓いそして強くなるため、"大陸王がいる南の大陸中央部へ"と行った。