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冒険記録-世界を救う30年間-   作者: 鮭に合うのはやっぱ米
冒険者編 南の大陸
20/71

第17話 一年後

「どうしたもんか……」


 あんな事を言っておいてだが、やっぱり一人ってのは難しいことばかりだな……


 俺が転移してから、約一年が経過していた。

 そして俺は、俺を転移させたと思われる魔法陣の場所を特定していた。

 ただ……


「これをすぐ発動できるのなら良いんだがな……」


 実はこの転移魔法陣、発動するにはとんでもない量の魔力を必要とするっぽい。

 それで俺は毎日ここに来て、魔力を注いでいるわけだ。


「だがまぁ、もうすでに一年以上これを続けているわけだが、それでも魔法陣に未だ反応がないんだ……」


 ただでさえ魔力を必要とするってのに、それを一人でやるってなるとあまりにも効率が悪すぎる。


「誰かに協力してもらえればな……」


 俺はこの一年で魔術士としての腕も成長した。

 上級の火魔術なら、難なく使える使えるようになった。

 それは全て、魔力を瞬間的に大量に放出する訓練や、魔力の形を変えたり分散させたりする訓練のおかげだ。

 そしてその訓練は、通る人達によく見られていたようだ。

 そのせいか俺の噂は広まり、いつしか俺は"高位の火魔術を使う少年"と呼ばれるようになった。

 

「俺も有名になったものだな……」


 こうして有名になった俺だが、その影響というのは思っていた以上に凄まじかった。


「こんな物も貰っちまったしな……」


 そう言って俺は、ポケットから一枚の手紙を取り出す。

 この手紙は、聖天騎士団から送られて来た物だ。

 手紙の内容を簡潔に言うと、"俺に聖天騎士団に入ってくれ"というお願いが書いてある。


「何のメリットも無しに俺が入るわけないってのにな……」


 そう言って俺は、手に持った手紙を開いた。

 視線は下の方へと移動し……手紙の一番下の所で止まった。


「こ、これは……」


 手紙の一番最後の文、そこにはこう書かれていた。


 要求があれば、できる範囲でお応えします。

 詳しくは騎士団本部へとお越し下さい。


「一応もう一回読んでおいてよかったー……」


 できる範囲ってのがどこまでかは知らんが、もし可能なのであれば俺が要求するのは、魔力の供給だな!


「まあ行ってみなきゃ分からんだろうし、早速行ってみるか!」


 俺は聖天騎士団本部へと向かった。






ー聖天騎士団本部前ー






「ここか……」


 入口には巨大な門があり、その奥には案内人が立っていた。

 そして、案内人が俺に話しかけてきた。


「アンドリュー様ですね?お待ちしておりました」


「そうです」


 案内人は俺を"中に入れ"と言っているかのように手回しをして招待して来た。


「どうぞこちらへ……」


 そして俺は、本部内の会談室に案内された。


「ドスッッ」


 俺達は会談室にある長椅子に腰を掛けた。


「早速ですが、アンドリュー様は聖天騎士団の入団を希望されているということで宜しいですか?」


「まあそうですね。ですがそれには条件があります」


「条件?」


「要求は有りと書いてありましたが……」


「あぁ、その事でしたか……すみません。ちなみにですが、条件というとどんな事をすれば良いのでしょうか?」


「簡単な事です…団員全員から毎日、魔力の供給をさせてもらうことです」


「魔力の供給…ですか?それはいったいどうやってするつもりなのですか?アンドリュー様に魔力を直接流し込むということですか?」


「そうじゃありません。魔力はこれに流してもらいます」


 俺はこの一年の間で、魔道具が結構増えた。

 その中でも特に希少なのがこの、魔力保管庫マジックケースだ。


「この魔力保管庫マジックケースを使います。これ一つで、並の魔術師一万人分程度の魔力を保管できます。団員の方々には、これに魔力を流してもらうだけで結構です。簡単でしょ?」


「一万人……そんな小さな物にそこまでの魔力を貯める力があるとは正直思えませんが……」


「まあ何にしろ、俺が知りたいのは団員全員からの魔力の供給ができるのか?ということです」


「ああ…はい。それくらいなら可能だと思いますが。本当にそれだけでいいのですか?」


「はい。あと、一つ質問ですが、入団にかかる費用ってのはいくらくらい何でしょうか?」


「お答えします。まず、聖天騎士団には隊士と見習い騎士の二つがあります。隊士の場合は費用を必要としません。しかし見習い騎士の場合は、費用を必要とします」


 見習いの方が楽そうでいいと思ってたけど、そういうことならなー……


「まぁしかし、アンドリュー様の場合は我々の推薦入団となりますので費用はどちらにしろかかりません。なので費用について考える必要はありませんよ」


「えっ?そうなんですか!?それはありがたいです!」


 やったー!

 有名になるってのも案外良い事あるもんだな。


 それと、俺はもう一つ疑問に思っている事がある。


「もう一つだけ質問いいですか?」


「何でしょう」


「何故俺をこの騎士団に招待しようとしたんですか?自分で言うのも難ですが、俺は確かに強力な魔術師として有名です。しかし、この騎士団には俺なんかより強い魔術師や剣士が山ほどいます。そんな中に俺を…要求を有りにしてまで誘いたい理由とは何なんですか?」


「それは……話せば長くなるのですが、宜しいですね」


「はい」


 そこから、案内人の男は話を始めた。


「騎士団には、さっき話したように隊士と見習いの二つがあります。それには勿論序列があり、隊士では 総長→騎士団長→副団長→隊長→副隊長→隊士 の順です。そしてそれは見習いにもあります。 上級兵→中級兵→初級兵→見習い兵 の順です。しかし、我々聖天騎士団では上級兵の上にもう一つの枠があります。それが四天です。四天とは、火・水・土・風・雷の五大魔術の内一種を"上級以上にまで使える者"だけが入れる枠です」


「ち、ちょっと待ってくれよ!"五"大魔術をって言ったけど、それなのに何で"四"天なんだ?」


「それはですね……我々も最初は五天にするつもりでした。しかし、五大魔術の中でも火魔術は特に難しい。それを上級までとなると、はっきり言って不可能でしょう。そう思ってました。だから火魔術は無しで四天に変えたのです。まぁでも、四天を作ったら作ったで、見習いの中に火魔術を上級以上に扱う者が一人出てきてしまいましてね、今の四天は火・水・風・雷の四属性となっています。」


「ちなみにその人ってのはいったいどんな人なのですか?」


 正直興味はないが、なぜか聞いていた。


「お答えします。火 : シュバルツ・ハーツ。彼は自分を炎王ダルトスの孫だと自称しています。真実かどうかは知りませんがね……

 次に水 : カーナ・シーベルト。彼女は、才能あふれる貴族の生まれでして、水以外にも多種の魔法を使えます。

 次に風 : グリム・ウィザード。彼の実力は確かですが、"軍団一の臆病者"といわれるほどに恐怖に耐性がありません。

 最後に雷 : ルナリア・エーラルキ。雷と言いましたが、実際彼女は雷以外にも水や風の魔術を中級まで使いこなせてます。そしておそらく、軍団一の努力家といえるでしょう……とまぁ、こんな感じですかね」


「一人一人の細かな説明、ありがとうございました」


 本音を言うと、俺は"火のやつだけ"で頼んだつもりだったんだけどな……


「一応確認ですが、俺はつまりその火のシュバルツ・ハーツとやらの代理で入ればいいということですね?」


「その通りです」


「よく分かりました。まぁ俺も暇なんで、要求をのんでくれるのならば全然いいですよ」


「要求については大丈夫です。ただやはり、途中から入ってきた者がいきなり四天に入るとなると、不満を持つ者が出てくると思います。我々も協力はしますが、そこら辺のこと、気をつけておいてください」


「分かりました。それではこれから、よろしくお願いします!」


 こうして俺の、急遽な騎士団見習い生活が始まるのだった……


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