第10話 A級モンスター
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俺達は目的地である大陸の南部の方向へと歩いている。
噂によると、南部の方にあるギルドの依頼は、高額報酬のものが多いらしい。
だから南部の方には、長めに滞在する予定でいる。
そして現在、大陸の中央部へと入ろうとしていた。
「ここからが中央部か………ここまで魔物は少なかったからな、もしかしたらここから増えてくるかもしれない」
魔物の数は、確かに少なかった。
ここから増える可能性は大いにある。
気合いを入れる必要がありそうだ。
「確かに………ここからは気をつけていきましょう!」
シェリアが全員にそう言った。
俺達は大陸の中央部を前に、一旦気合いを入れなおした。
「……………なんかなぁ」
ロインがやけに悩んでいた。
見るとロインは、『これより先、中央部』と書かれた看板を意味ありげに見つめていた。
「どうかしたか?」
「いや、勘違いならいいんだが……この看板がやけに不自然というか………」
不自然?
別にそんな風には見えないけどな。
「どういったところが?」
「いや、これまで大陸の境目を通った時に看板なんてなかったじゃねえか。なのにここだけ立てられてるってのは、騙されてるんじゃと思って………」
「考えすぎだって」
「それもそうか」
という事で、その件についてはなかった事になった。
今思えば、ロインの勘は凄まじいな。
まさか的中させてしまうとは思わなかったよ。
そうして、俺達は中央部へと入った。
◇◇◇
中央部は巨大な森林地帯だった。
グランデの森を思い出すなー。
そして魔物は、予想通り多かった。
そして強かった。
さっきまでの魔物がC級程度だとすれば、こいつらはB級はある。
「はぁ………はぁ……中々、やるじゃねえの!」
「えぇ………って、ロイン後ろ!!」
シェリアがそう叫ぶ。
ロインの背後には、巨大トカゲの姿があった。
そしてトカゲの鋭利な尾がロインにぶつかろうとしていた。
あれがぶつかれば、最悪貫通もありえる。
これは、そのレベルの危機だった。
と、いつもの俺なら焦るところだろう。
だが今回は安心できた。
何故ならトカゲの尾は、中級の火魔術によって、ロインに到達する前に焼け落ちたからだ。
そしてこの火魔術を放ったのは………俺だ!
どうやら説明しなければならないらしい。
俺の進化を!!
以前、獣王に捕まり魔族の血を飲まされたあの日から、俺の魔力はありえない程に溢れかえっているのだ。
故に魔力操作のお粗末な俺でも、強引に魔力を使えば、中級や上級の火魔術なんかも使えるようになった。
「油断すんなよ!」
俺は調子に乗っていた。
久しぶりの活躍に、胸が躍っていたのだろう。
故に、考えなしに突っ込む。
それが、いつもの様にシェリア達の助けがあればいいが、もしも無かったら………
もしも、シェリア達でも助けられない次元の話だったら………
俺はどうなるんだろう。
そして俺はそれを、身をもって体験する事となる。
「くらえっ!」
次も巨大シリーズ!
巨大蜘蛛だ!
俺は考えなしに、上級の火魔術を放った。
これなら一撃だろう。
『シューーー』
煙が止んだ。
しかし煙が消えてなお、存在し続けるものがいた。
それがこの巨大蜘蛛だ。
こいつは俺の上級火魔術をものともせず、無傷で生還したんだ。
間違いなくB級じゃおさまらない。
A級の魔物だ!
「嘘だろ………!」
驚きと絶望が交差し、気づけば俺は膝をついていた。
「くそっ!アンドリュー!」
ロインが必死に叫ぶ。
シェリアは既にこちらに向かって動いていた。
しかし恐怖とは、体が分かっていても動かないものだね。
指一本、動かせない。
死を感じる。
目の前の蜘蛛に食われるのだと。
蜘蛛は、ついに俺の目の前まで近づいた。
そして、強靭で巨大な多数ある足のうち、たった一本だけをふりあげた。
俺は食われるまけでもなく、潰されて終わるのか………
だめだだめだ……
これじゃあまるで、今から死ぬみたいじゃないか。
悪いけど、俺はまだ死ぬつもりはない。
反射的に、意識的に、いや無意識に、俺は『生きたい』という行動信念のもとで咄嗟に動いていた。
蜘蛛の足が到達するよりも速く、俺は右へとんだ。
『ぶんっ!』
空気をきりさくような轟音が響いた。
蜘蛛の足が、地面についた。
そして俺の体は、無事だった。
「危ねぇ………え?」
違和感に気づいたのは、危機が去ってすぐのことだった。
無いのだ。
左腕に感覚がない。
途中でバッタリと途絶えているんだ。
嫌な予感がした。
俺は、自身の左腕を見た。
「あ……あぁ………?」
俺の左腕は、肩の辺りからバッサリえぐりとられていた。
そしてそれに気づいた途端、とてつもない痛みが俺を襲った。
「ぐあ!ああああああああああぁ!」
痛い。
人生で味わった事のない痛みだ。
泣き叫ぶ事しかできなかった。
「痛ぇ………くそ………」
咄嗟に出た声すらも、そんな弱々しいものだっ………
「逃げて坊ちゃん!!!?」
考える暇もない危険信号。
シェリアが叫んでくれた。
蜘蛛の追撃がきていた。
避ける。
無理だ。
終わった。
間に合わない。
………死ぬ時って、こうも呆気ないのか。
『ザシュッ!!』
それは、人を潰す音とはあまりにもかけ離れた効果音だった。
まるで人を斬った時のようなそんな効果音。
俺が聞けたのは、それだけだった。
痛みと恐怖で目を瞑っていたからだ。
俺は恐怖を押し殺して、目を開けた。
「え………………」
目の前には、茶髪でボサボサなロングヘアーを身につけた大男と、その目の前で倒れる巨大蜘蛛の姿があった。
大男は長剣を握っており、それは煌びやかでお高そうであった。
そしてこれは、誰が見ても明らかだった。
この男が、巨大蜘蛛を倒したのだと。
そして、俺を助けてくれたのだと。
「危なかったな坊主!既に重症っぽいが………」
男はそう言うと、俺に近づいてきた。
そして、俺の腕に治癒魔術をかけてくれた。
「おぉ………!」
出血が一瞬で止まったのを見ると、恐らく相当高位の治癒魔術なのだろう。
「これで応急処置にはなったが、再生までには時間がかかるな。まあ包帯巻いて治癒魔術かけてりゃいつかは治る。気長に……………」
男はそう呑気に言っていたが、急に途中で言葉を止めた。
男は俺の腕をじっと見つめて、何やら驚いている様子だった。
俺の腕がどうかしたのか?
俺は再び、左腕を見た。
「え」
あった。
さっきまで消失していたものがあった。
潰され、抉り取られていたはずのものがあった。
そう………左腕があったんだ。
手の先、爪の先まで、完全に再生していたんだ。
「おいおいおいおい………お前の再生能力、どうなってんだ!?これじゃあ魔族並………いや、それ以上か!?」
魔族の血を飲んだ事で、俺の再生能力も格段に上がっているみたいだ。
「なぁアンタ、助けてくれたのはありがたい。本当にありがとう。ただ、一体何者なんだ?」
ロインが割って入った。
男の正体を明らかにしろと言う。
「俺はただの、森に住む臆病者だよ。ただ、皆からは《大陸王》だなんて大層に呼ばれているがな………」
この日、俺達は南の大陸王に会った。
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