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ABC人間

日の下に出るとそこには特筆すべきものは無かった。

青い空、ビルにアスファルト、カフェにレストラン。


看板にある文字は読めた。

どうやらここも日本にあたる地域らしい。

俺からすると少し古臭いが、戦争が起こっていなかったならこんな感じなのだろうなという風景が拡がっている。


周囲をみわたすと、たまたま人通りが少ないようで、視界に入った人間は先程のサラリーマンだけだった。


思い切って声をかけてみるか、、、


「あぁ、そこのお兄さん!

ちょおっと道をお尋ねしたいんですけど、、、」


「B?」


「ビー?」


「B?B?B?」


「え?ああ、ソーリー。

アイムノットスピークイングリッシュ、、、ディスイズアペン。マイネームイズ、、、」


「A!A!A!A!」


「え?なに?どうしました!?」


「ゲンくんこの人変だよ!」


サラリーマンは頻りにAと連呼し始めた。

すると放射状に周囲の飲食店やらコンビニから人間がゾロゾロとこちらを覗き始め、その波が交番のような施設に到達し、恐らく警官であろう顔が現れた時、俺たちは一目散にその場から逃げ出した。


***


「何だったんだ。アイツ、、、」


「なんかヤバそうな雰囲気だったよね!

こっち指さして!」


俺達は土地勘も無いまま人気のない路地裏まで逃げ込んだ。

サラリーマンを追いかけた時に結構店を挟んでしまっていたのでインフィニティのある倉庫には戻れなかったのだ。


「うーん!

もしかしたらABCがあの人達の言葉なのかも!?」


「ABCが?それだけで言葉が通じるわけないだろ?」


だが確かにそう言われればしっくりくる気もする。

、、、いや。

もしやあのサラリーマンだけがおかしく、周りはただAと連呼する奇人に反応して顔を出したのではないのか?


「、、、もう1人、声をかけてみよう。」


「ええ!?また追いかけられちゃうよ!!」


「アイツがおかしかっただけかもしれない。

もう1人声をかけて、ソイツもABCだったらインフィニティの所まで無理やり行くさ。」


だが、なるべく人畜無害そうな奴にしよう。

いきなり叫んでも取り押さえられるような。


「あの子供にしよう。

年端も行かないだろうし、抵抗できないだろう。」


俺は路地裏の隙間から少年が過ぎるのを見ると、なるべく自然に見えるように堂々と外へ出た。

さっきとは打って変わって住宅街のような街並みだ。


揺れるランドセルが見えた。


「ちょっと君〜!道を教えて欲しいんだけど〜

ほら、溶けて合体してるけどチョコだぞ〜!!」


「A!」


「おいクソガキコラ」


「A〜!!」


「「「「「「A!A!A!A!A!A!A!A!A!A!A!A!」」」」」」


その少年がこちらを指さすと周囲の人間たちが遅れてAの輪唱を始めた。

俺達は今度こそ一目散に倉庫の方角へと向かった。

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