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こんにちは赤ちゃん

 アマリアの息子は母親と同じ榛色の髪と、大きな目をした可愛い男の子だった。ただ、瞳の色だけはマテオと同じ灰色である。

 最愛の妻によく似た息子に、マテオはすっかりメロメロになった。しかし、不意にあることに思い至って青ざめたそうだ。


「……次が女の子だったら、俺に似るんだろうか?」


 確かに男の子は母親に、女の子は父親に似るという話がある。

 そして、マテオは大きく厳つい男性で――男の子ならまだしも、自分に似た女の子を想像して絶望したらしい。

 そんな夫に、産後で横になっていたアマリアは手を伸ばして慰めようとした。彼女が起きないよう、慌てて膝をついて身を屈めたマテオの頬に触れて、アマリアは笑って言ったそうだ。


「マテオに似たら、切れ長の目をした美人さんになるから大丈夫」

「……アマリア」

「まあ、年齢的にもう一人生まれるかどうかは、神様の思し召しだけどね……まずはこの子を守って、この子の弟か妹が生まれたら、家族みんなでその子を守りましょう?」

「ああ……ああ、勿論だ!」


 子供が生まれたら、涙もろくなると言う。

 だがそれは、母親だった筈だが――すっかり涙もろくなったマテオは、泣きながら何度もアマリアに頷いたらしい。



「……良かったわ。ただ、くれぐれも無理しないでね? はい、出産祝い」

「エリさん……ありがとうございます! 助かりますっ」

「こういうのは、いくらあっても良いわよね」


 出産から一ヶ月くらい経ってから、恵理はアマリアの家に行ってそんなやりとりをした。

 ちなみに異世界には紙おむつはないので、赤ん坊用の布おむつと肌着を数枚手縫いして持ってきた。恵理は刺繍は出来ないが、裁縫はそれなりに出来る。こちらでも習ったが、日本で母親や小学校の家庭科授業で教わっていたからだ。


(ちょっと服が破れたり、ほつれただけだと買うより、繕った方が楽なのよね)


 平民だと古着を買うのが一般的だが、冒険者の報酬があったので金銭的な問題はない。ただ恵理の冒険者活動はズバリ肉体労働なので、体育のジャージのようなイメージで一着を着潰していたのである。

 そんなことを考えながら、アマリアに抱かれた赤ん坊を眺めていると――アマリアが、緊張した面持ちで口を開いた。


「エリさん……わたしは今、幸せです。マテオと出会って、結婚して。こうして、子供まで授かりました」

「? ええ」

「だから……押しつける気は、ないですけど。わたしもエリさんも、今はもう冒険者じゃないですよね? 結婚までいかなくても、恋愛とか……考えて、みませんか?」

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