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新たな魔石と蒸し窯と、そして。

 結果として、ミリアムは空になった魔石に風と水、二つの属性の魔力を付与することに成功した。嬉しかったのか無表情ながらも頬を上気させ、灰色の目をキラキラと輝かせていた。その頭をサムエルが撫でて、ますますミリアムがご機嫌になったのは余談である。

 ただし、ミリアムは火の魔法属性は持っていない。あと、そもそも複数属性を持つ魔法使いはなかなかいない。

 だから試しにと、炎属性を持つ魔法使いに頼み、ミリアムと同時にそれぞれの魔力を注いでみると――無事に、二属性の魔力を宿した魔石が出来た。ちなみに別々に込めると駄目だったので、付与する時だけは冒険者ギルドで募集をかけて、一緒に依頼を受けるようになった。新たなギルドの依頼が出来て、ルーベルは大喜びだった。

 余談だが二属性の為か、色は通常の魔石と違い、風と水の魔石は緑に、風と火の魔石は薄紅色になった。魔道具にすれば、見栄えも綺麗だと思う。

 そうして、その二属性の魔石と新商品についてローニにお願いすると、嬉々としてドライヤーと屋根散水用の水撒きノズルを作ってくれた。まずはテスト運用とのことで、公衆浴場で使われることになったが――おかげで好評なので、宿や各種飲食店にも使わせて貰っている。まだ多少値段は高いが、帝都で販売して売れればいずれは手頃な値段になり、一般家庭でも使えるようになるとティートが言っていた。

 ……要望を語った日から三週間ほど経ち、屋根散水のおかげで涼しくなった店内で、昼食を食べながら恵理はしみじみとありがたさを噛みしめていた。


(あと、蒸し窯も好評だし)


 元々はロッコの夏が暑いからと、二か月くらい前にグルナに相談したところ――温泉の蒸気を利用した蒸し料理の案が出て、ルーベルがミリアムとローニに頼み中央広場に蒸し窯を作ったのだ。

 旅人は、注文したら食べられる蒸し料理に舌鼓を打ち。地元民も、木で作った蒸篭と材料さえ自分で用意すれば、無料で蒸し窯が使える。

 暑い思いをせずに調理出来ることもだが、グルナが提案した蒸しプリンがすっかり名物になっていた。観光客もだが妊婦の悪阻の時や、生まれた赤ん坊の離乳食としても重宝されていた。


(アマリアも、自分や赤ん坊の栄養が取れて助かったって言ってたものね)


 そう、実はアマリアは昨年妊娠したのだが、先月出産するまで後期つわりに悩まされたのである。食欲が落ちたが、それでも蒸しプリンだけは口に出来たので助かったと言っていた。二十代後半になっての出産でもあり心配していたが、妻と同じ榛色の髪をした赤ん坊が無事に生まれた時――マテオは歓喜のあまり、高々と息子を掲げて涙を流した。気持ちは解るが、見た目の圧がすごくて産婆を慌てさせたという。

 ……そこまで考えて、恵理は昨日のアマリアとの会話を思い出した。

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