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マッチポンプで世界が変わる!?  作者: オーメル


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柔軟な子供の思考、現実を見過ぎている大人

「今日は来てくださってありがとうございます、レッドさん」


「気にするな。 お前が普段以上に真剣な態度で頼んできたのだからな」


 フォートレスの応接室を借りて、レッドと蓮司は向かい合っていた。

 本日は土曜日の午後十四時。昨日に突如としてチャットに送られた蓮司からの呼び出しに彩斗は応え、午前中の段階で部屋の予約を取っていた。

 応接室は普段から空きやすい。日頃訪れる人も少なく、あったとしても話し込む時間は最大で三時間程度。

 黒革のソファに透明なガラス机が置かれた部屋と最低限の物だけが用意され、他の応接室も同様の作りになっている。

 彩斗の恰好はレッドのものだ。パーカーを纏い、今はマスクを脱いで顔面を彼用に変えている。


 端正な顔立ちをした彼の様はやはり蓮司から見ても勇ましく思えるもので、一組織のリーダーであると言われれば納得も出来てしまう。

 暫くは顔を見せなかったことで鍛錬そのものにも参加していなかったが、他の者達に直接教えてもらったお蔭でレッドの強さを再認識した。

 やはり率いる人間として強さは一種の指針となるのだろう。こうして見ているだけでも秘めている力を感じ取れるようで、莫大な熱量が傍にある感覚は蓮司の危機を煽って仕方がない。――全て彼自身の勘違いだが。


「他の方々は休暇を楽しんでいたそうですが、レッドさんも休んでたんですか?」


「本部でな。 久方振りに読書に没頭していたよ」


「本を読むんです?」


「暇潰し程度にはな。 それに誰かの考えた創作話が俺達の戦術に使えないとも限らない。 予想外な方向から暴走しがちだった能力を制御可能になった例は実際にある」


「成程。 普通の人達からすれば超能力の使い方とかを知っても特に意味はありませんが、ヴェルサスにとっては思わぬ収穫になるんですね」


「人の創作意欲は無限だ。 何処で無意識領域から情報を掬ってくるかも解らん」


 レッドの言葉に蓮司は酷く納得していた。

 強さとは、何も己の身体だけを指すものではない。情報から力の活用法を思い付き、実戦に転用するような柔軟さも強さの一つである。

 蓮司は人並みに漫画は読むが、かといってそれを戦闘に使えるかという視点で読むことはない。

 レッドの視点は戦いの中で培った無意識のものだろうが、それが使えないということは断じて有り得はしないだろう。

 基礎的な能力は勿論大事だ。しかし、能力の使い方について見識を深めることも大事である。

 特に彼の繋がっている能力は単純なものではなく、頭を回転させながら使うものなのだから。


「で、そろそろ本題を聞こう。 どんな相談事だ?」


 実は知っているとは態度で示さず、レッドは真剣な顔で蓮司に問い掛ける。

 その顔を見て、蓮司も今は自分の考えを端に置く。姿勢を正し、頭を下げながら彼は願いを口にした。


「フォートレスを怪獣に対抗する組織として運用させることは出来ないでしょうか」


「……」


「実は、この案を考えたのは俺だけじゃないんです。 奈々や鳴滝、クルスといった子供組全員で考えました。 更に事前にモザンさんとも相談し、最終的にレッドさんや渡辺社長を説得しようという結論に到達しています」


「突発的な提案、という訳ではないんだな。 よし、具体的に言ってみろ」


 蓮司からの説明は、端的に言えばモザンが語った内容と変わりはしなかった。

 社会とヴェルサスに繋がりのあるフォートレスに今後複数箇所に現れるであろう怪獣討伐の任を行わせる。

 国家も彼等の力は必要であろうし、金銭の要求をしても良しとするだろう。空我の経験からロボットを作り、せめて日本だけでもヴェルサスに頼らない土台を作る。

 彼等に頼る形となっているのは蓮司としては申し訳ないが、それ以外の全てについては子供組が率先して動くつもりだ。

 フォートレスの運用は大変にはなる。問題点は未だ多く浮上するものの、渡辺社長や他部署の責任者達と話を詰めていく予定だ。


「……お前の相談については理解した。 粗が目立つが、ヴェルサスが日本に拘らなくて良い点は魅力的だ」


「日本は国家防衛リストから除外されています。 フォートレスはフローさんの行いに対する謝罪目的で設立されましたが、だからといって何時までも戦力面でもお世話になっては流石に申し訳ないと鳴滝は語っていました。 かといってまだまだ頼る必要はある訳でして、ならば武器だけ渡すのはどうかと」


「その武器が此方に向く可能性は?」


「無いとは言いません。 ……貴方に対して嘘を吐くつもりは毛頭ありません」


 国家防衛リストを出されると彩斗としても思う所はある。

 折角守るつもりはあまりないと語ったのに、戦力は未だ日本にあるのだ。そんな状態ではドイツと比較しておかしいと指摘されかねず、本当ならばなるべく日本にメンバーを置くべきではない。

 しかし、それでは居住スペースの問題がまた湧いてしまう。故に武器だけ渡して日本を現行人類だけで守れる形にするのは願ってもないことだが、澪が作った物である時点でメンバーにもダメージが通りかねない。

 澪ならば加減はするであろう。しかし彩斗は、例え手加減した品物でも何らかの重大なミスが発生するのではないかと危惧している。


「まぁ、武器についてはウチの技術班がロックを設ければ解決する話だ。 俺達でなければ解析も破壊も出来ない専用のモノを付ければ良い。 ――だが、本当の問題はそこではない」


「はい。 政府からの命令と各国の反応ですね」


「そうだ。 土地の準備もあるが、そちらは正直些事だ。 ただ買って作るだけならフォートレスを建てた時と変わらない。 問題なのは、国家間で水面下の争いに発展しかねないことだ」


 流石に問題を洗い出していたかと彩斗は蓮司の次の言葉を待つ。

 これらは全て解っていたことだ。目立つ粗の中で、他国に波及するだろう問題にどう対処するかを考えねばならない。

 政府に情報を提供しなければならないのもヴェルサスとしては問題だ。解析が出来ないように作っているからこそ、未だバッテリーや服は完璧に模倣されていない。

 手を抜いて模倣が可能となれば、そこから人は発展させていくだろう。何世代分も飛び越えた技術を手にして、さて日本政府はどんな行動をするか。

 そして、政府が選んだ行動に世界はどのような目を向けるか。

 考えれば容易く浮かぶ地獄絵図に、だからこそ慎重にならざるを得ないのだと言外に彩斗は告げた。

 

 それを蓮司は正確に理解している。

 地頭が良い為に、頭を花畑一色にすることは出来ないのだ。嫌な未来も想像して、それを回避する手を打つ必要がある。

 

「では、武器自体はヴェルサスの物にしませんか。 人だけを世界各国から選出し、人種を無視した多国籍軍という枠に収めるんです」


「――お前、それは」


 蓮司が提案した内容は、あまりにも規模が大きなものだ。

 様々な国家から平等に人間を選出し、それらを一つの組織に纏め上げる。やっているのは国連軍と同じだ。

 国家が水面下で争うのなら、全ての国家にチャンスを与えれば良い。ヴェルサスが主導となることで全体の舵を取り、小競り合いもある程度は此方で解決する。

 それは彩斗自身が想像していなかったことだった。ましてや、悪巧みの中でも一度も出てこなかったことである。

 対怪獣を目的とした世界規模の連合軍。それこそが蓮司が思い付いた解決策であり――あまりにも創作めいていて彩斗は惹かれた。


 面白い。実に実に、面白い。

 話し合いは必須だ。許可を取るべき対象も膨大だ。何より、作るべきロボットの数もかなりの量になる。

 戦艦を作った後でなければ着手は無理だ。現実的ではない案ではあるものの、それはやってみたいと思わせるだけの魅力に溢れている。

 

「どう、でしょう」


 不安に揺れる瞳を見て、彩斗は一度息を吐いた。

 その後、言葉を述べる。彼の放った言葉が一体どんなものだったかは、蓮司のみしか知ることはない。

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