表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マッチポンプで世界が変わる!?  作者: オーメル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

175/304

子供達の好奇心

「モザンさんは居ますか?」


 その日、蓮司を中心とした子供組はフォートレスに居た。

 彼等には専用の権限が与えられているので閉店以外の時間に訪れても不思議ではないが、ヴェルサスの個々人を呼ぶことは予想外だ。

 特にモザンとなると珍しい部類に入るだろう。受付の女性は少し驚きながらも、彼女が居るであろう場所を教えた。

 フォートレス内の構造は何度も鍛錬に赴いたお蔭で完全に把握している。目隠しをされても配信場所に行くくらい簡単なもので、クルスが迷わないようにゆっくり歩けば簡単に目的地に辿り着く。


 果たして、彼女はそこで機材を弄り回していた。

 蓮司達にはよく解らない装置にパソコンを接続し、何やら高速で文字を入力している。タイピングは残像が見え、打ち間違えをしている様子もない。

 作業中であるのは言うまでもなく、だからこそ一瞬蓮司達は足を止めた。今は少し待った方が良いのではないかと。


「――どうしたの? 此処には僕しか居ないよ」


 だが、モザンは彼等の存在を既に知覚している。

 自動で展開されているセンサーが四人を捉え、マルチタスクの一つを会話に回した。その分だけ処理速度は落ちるが、所詮は誤差だ。大した変わりはしない。

 話し掛けてきた以上、答えないのはおかしいだろう。蓮司は一度咳払いをして、モザンさんに用があるんですと告げる。

 流石にそれはモザンにとって予想外だったのか、作業の手を唐突に止めた。

 パソコンにロックを掛け、一度完全に電源を落とす。床に胡座を掻いていた体勢から立ち上がり、彼女はそこで漸く四人を見た。


「僕に用? 一体どうしたんだい、皆を引き連れて」


「聞きたいことがありまして。 ですが仕事中でしたら、また後日にしますが……」


「気にしないで。 今やっているのはまだ期日が先の作業だよ。 先にある程度完成させておこうと思っただけで、まだ後回しでも大丈夫さ」


 伸びをして、床に置きっぱなしになっていたペットボトルを拾う。

 半分程入っていた中身を一気に飲み干し、近くのゴミ箱に投げ捨てた。その姿からは仕事を終わらせる気配を感じさせ、ならばと蓮司は口を開ける。

 

「最近あまり怪獣も出てきませんし、色々聞いておこうと思ってたんです。 例えば本部の在所、とか」


「ん? あれ、そういえば一度も言ったことなかったっけ」


「はい。 具体的な部分は何も」


「そっか。 んじゃ、今日はちょっくら説明役として喋ろうかな。 長くなるからお菓子とか持って僕の部屋に来なよ」


 蓮司としては渋られる覚悟で尋ねたが、モザンは酷くあっさりと説明をしようと口にした。

 秘密にさせようとする素振りも一切無く、本人としてはついうっかり忘れていたような口振りである。肩透かしを受けながらも全員で菓子や飲み物等を外で購入し、フォートレス上階の居住スペースに足を踏み入れた。

 ヴェルサス組が居るのは居住スペース内の奥。黄色と黒の警戒ラインによって仕切られ、メンバー以外の者が許可無く足を入れれば即座に機械音声が警告を発する。

 今回はモザンが居るのでそのようなことはない。彼女手製の単純な人工知能が監視を担っているので、メンバーが傍に居れば警告を発しないのだ。


「ようこそ、僕の部屋へ。 とはいっても、あんまり物は置いてないんだけどね」


「……ひっろ」


 カードキーで開いた扉の先を見て、奈々は純粋な感想を口にする。

 施設と一体型の居住スペースと聞くと一人用のワンルームを想像するが、目の前に広がっているのは1LDKと非常に広い。

 それに物もあまり置かれておらず、最初から設置されていた冷蔵庫やテレビ等をそのままモザンは使っているようだ。

 彼女自身を示す特徴的な家具は存在せず、強いて言うのであれば数台の棚に置かれた作業道具だろう。

 床にも白いカーペットが敷かれているものの、個性と表現するには至らない。

 

「ごめんね。 あんまり来客用の物は準備してなくてさ。 一応大型の机とパイプ椅子はあるからそれで我慢して」


「え、ええ。 大丈夫ですよ……ええ」


 鳴滝は一目で理解した。

 この人は基本的に私生活は駄目駄目だ。キッチン周りには何も無く、恐らく冷蔵庫の中には食材なんて皆無だろう。

 指摘をすれば山のように解決すべき事柄が出る。しかし、彼女はそれを意識的に無視して折り畳み式のパイプ椅子を部屋の端から机の周りに並べた。

 十人分はある椅子の内、木製の椅子はモザンだけ。机は広いのに椅子が一脚しかないのは、恐らく彼女が作業目的で購入したからだろう。

 全員のお菓子や飲み物を机に広げ、モザンはではと早速口を開ける。


「本部の場所だっけ?」


「出来れば画像や動画があれば良いんですけど、ありますか?」


「んー、僕は基本的にそういうのは仕事以外で撮らないからな……。 構造データで構わないかい?」


「十分です。 いきなり言ってきたのは此方ですから」


 モザンは自分用の端末を弄る。

 彼女も澪が現在製作中の空中戦艦の存在は知っていた。実のところ旅行というのは建前で、本当は戦艦を作る場所を探す為にあちらこちらを彷徨っているのである。

 場所を敢えて明言しなかったのも、決めてから旅行という体にする為。蓮司達がまさかこんな質問をしてくるとは思わなかったが、こうしてされた以上はある程度隠した状態で説明するしかない。

 それが一番怪しまれないし、実際に足を踏み込む前の興奮にも繋がるだろう。遥か未来のような乗り物に乗れるとなれば、子供でなくとも喜ぶのではないかとモザンは思考した。


 目当ての構造データを画面に表示し、更に投影アプリを起動させて机の上に置く。

 空中に大規模な構造物が投影され、その姿を見た蓮司達は驚きの声を漏らした。


「これが僕達の本拠地。 対怪獣用空中戦艦・アラヤシキ」


 ボディは細長く、全体的に灰色が目立つ。側面には幾つもの砲門が見受けられ、その姿は嘗ての軍艦に近い。

 上部には複数個のレーダーが取り付けられ、窓の数は少ない。下部には巨大な推進装置が付いているようで、後方に付いた二つの装置が前進用のものだろう。

 対怪獣と言われているように、武装面については充実している。砲門が付いているのもそうだが、自動機銃やミサイル発射口も確認出来た。

 総じて、SF作品に出てくるような戦艦だ。とても現実にあるようには思えず、蓮司を除いた面々も信じられないと目を見開いている。


「ほ、本当にこれがそうなんですか?」


「そうだよ。 僕達が他所に所在を見つかりたくないのは、その姿が異常極まるからだ。 上空を進む巨大な鉄の塊に世間が騒がない筈ないからね。 今もステルスを起動させて世界中をゆっくり進んでいるよ」


「私はこの手の知識が無いので解らないのですが、本当にこんなものが飛ぶのですか? 実験をしていた研究者達は武器を搭載させた私を飛ばそうとして、凄く苦心していたのですが」


「飛ばすだけなら簡単だよ。 ウチの技術者達は皆優秀揃いだし、何よりイブっていう人類技術の全てを閲覧することが出来る人も居るからね。 何百年も何千年も先の技術を取得することは不可能じゃないんだ」


「何千年……」


 絶句する奈々の言葉を他所に、モザンはアラヤシキの一ヶ所を触る。

 すると、その部分が拡大されて内部を映し出す。戦艦内は外側とは異なり、廊下の天井を埋め尽くすように設置された白色灯と、明るめな色の床材を使用することで全体的な光量を増やしている。

 暖色系の空間は穏やかさを与え、彼等の暮らしを維持する工夫が凝らされていた。

 戦艦という、戦闘目的の建造物で長期間暮らすのはストレスが溜まるだろう。

 家とは安心出来る場所のことで、そこが戦場に近ければ中々心休まることもあるまい。

 心理的に安心感を与える為の色。横幅も広く、モザンが見せる部屋の一室には普通のリビング空間が広がっていた。


「本部と聞いてどんな想像をしたかは解らないけど、僕等にとっては最後に帰る場所さ。 だから、そんな重要そうに思わないでくれ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ