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マッチポンプで世界が変わる!?  作者: オーメル


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外部協力者・最上彩斗

 新たな会社が立ち上がり、人々の注目を集めるだけの要素は与えた。

 未だ商品は販売されていないものの、一般販売エリアは着々と完成に近づいている。

 販売される商品は基本的に小物だ。持ち運びに便利で、近未来を感じさせる携帯商品。その中で澪が先ず最初に提示したのは極めて普通なバッテリーだ。

 モバイルバッテリーは携帯を酷使する人間程必要となる。大容量ともなれば周囲の他の人間の携帯も充電が可能となり、更にノートパソコンのバッテリー喪失を防ぐことも可能だ。


 モバイルバッテリーの平均は10000mAh~20000mAhとなっているが、今回澪が作り出した長方形のバッテリーの容量は500000mAh。

 デスクトップパソコンでは長時間の維持は難しいが、120W出力はノートパソコンであれば長期の使用に耐えられる。 

 実現出来そうで実現出来ない。そんなラインを狙った澪の製品は、現実的であるからこそ技術力の格差を知ることが出来る。

 外装の種類も澪が提示したサイバネティックな光が側面に灯る白ボディの他に、無骨な鈍色一色のボディやマッドな黒のボディと様々だ。


 勿論、世間一般に広く使ってもらう為には規格をある程度統一せねばならない。

 急速充電は全種類に対応し、端末を選ばずに充電は可能だ。少なくともこれが一つあれば他は要らない程の性能を有している。

 価格も三千前半と安価な部類だ。原価が零であることがこの安さの原因になっている。

 ただし、地下の工場が小さい所為で大量には生産出来ない。これはフォートレスの社員全員が理解していることであり、この状況から利益を積み立てて今後の施設拡充に充てていくつもりだ。


「――それにしても、君のような人物がヴェルサスに協力していたとは思わなかったな」


 社長室にて、渡辺は一人の男と机を挟んで言葉を告げる。

 渡辺の目前に立つ男は酷く平凡だった。黒髪黒目の中背で、顔も格段に整っているとは言えない。

 動きも素人のものだ。柔らかい微笑は戦闘技巧者の気配を感じさせず、本当にただの外部協力者でしかないのだろうと思わせた。

 とはいえ、あのヴェルサスの協力者だ。どのような繋がりによって縁が生まれたかも定かではない人間相手に、迂闊に肩の力を抜くことは出来ない。


「いやぁ、偶然にも縁が出来まして。 でも家や食料を用意していたくらいなんで大した活躍はしてませんよ」


「兵站は大事だぞ。 それに、あのヴェルサスと契約を結べているだけで一目置かれても不思議ではない。 ……我々は実力が認められて外部協力者になった訳ではないからな」


 レッドから紹介を受けた時の事を渡辺は思い出す。

 今後、目の前の男が窓口となってヴェルサスと情報のやり取りを行う。連絡手段はメールが基本となるが、勿論重要なものであれば実際に対面することもある。

 レッドが肩を叩いて男に気安く頼み、それを男は軽く答えて了承した。

 二人の間には確固たる信頼関係が伺え、決して必要に駆られて用意された人間ではないことを示している。

 ヴェルサスにおいて必要の人間だとされている時点で貴重性は桁違いだ。ヴェルサスメンバー個人の連絡先すら持っているとのことで、ますます渡辺は彼に対して慎重にならざるをえない。


「さて、一般販売エリアは来週の頭と聞いている。 此方の準備も予定通り終わるが、何か他にやっておくべきことはあるか」


「では二階の放送室を用意しておいてください。 今後、SNSでの警報を終了させて配信で緊急放送を行うとフローからは言われています」


「……それはつまり、テレビ番組のような構成にするということか?」


「そうですね。 怪獣出現時に情報を流すにしても、SNSでは見易さに難があります。 配信でニュースのように表示出来るのであればそちらの方が良いのでしょう。 それに、この会社の宣伝にも使うつもりです」


「手早いな。 そんなに早く利益が欲しいのか」


「というよりは、皆様が早く普通の生活が出来るようになってほしいのではないでしょうか。 今はまだヴェルサスの金食い虫でしかありませんので」


 さらりと痛い部分を告げられ、渡辺は眉を顰める。

 利益を上げられなければ、ヴェルサスの資金を無駄に食い潰すだけだ。これだけの施設を簡単に作れるだけに潤沢な資金を持っているのだろうが、それでも無駄に遊ばせる金は無い。

 その為にも宣伝を行い、ヴェルサスの影響力も利用して最速で利益を手にする。

 だがそれはついでに近いと渡辺は思っている。

 彼等の主目的は怪獣討伐であって、会社の経営なんてどうでもいいのだ。本当に厳しくなれば切り捨てられ、今度こそ渡辺達は見捨てられる。


 生配信を行うステージを作るのは怪獣出現時の情報発信目的だ。

 確かに無数の画像や長文が乱舞するヴェルサスのSNSはお世辞にも見易いとは言えず、動画に纏めてくれた方が幾分かマシである。

 配信で主に流す情報は会社の宣伝と警報。それに加え、何らかの意見表明にも配信は使われる筈だ。

 

「指示は了解した。 手隙の者で部屋の清掃と家具等の設置も行おう」


「物については後日届けると思います。 これは確認して後で連絡を送りますので」


「了解した。 ……そういえば誰が配信に出るんだ?」


「予定では早乙女兄妹になるようです。 本来は情報発信が彼等の役割でしたからね」


 配信に出るのが高校生。

 今時であればそれは不思議ではないだろうが、真面目な配信に子供だけとはどういうことだと批判を貰いかねない。

 何が引き金で炎上するかは解らないものだ。出来れば子供以外の大人を幾人かは用意すべきではないかと渡辺は思考する。

 

「なら、そこに此方の者を数人出させてもらえないか。 大人も混ざっていた方が説得力も増すだろう」


「……確かに。 それもそうですね」


 成程と頷き、男は彼の提案を受け入れた。

 形は違えど、彼等の配信は報道の一環だ。そこに何の資格も持たない子供が主導で危機を伝えても、説得力があるとは言い難い。

 若い世代であれば柔軟な思考で真っ先に行動してくれるだろうが、遊びであると一蹴されては折角の避難指示も意味が無くなるだろう。

 どの道手伝いは必要だ。情報を纏めて蓮司達に送っても、それを口頭で説明しようとして画像の出力を行わない可能性は否めない。

 

 一応はヴェルサスメンバーの誰かがその場で補助をするつもりだったが、フォートレスで出来るならばやってもらった方が楽になる。

 故に、男の中ではフォートレスの者が参加することは半ば決定事項としていた。

 その後、二人は残りの情報共有を終えて別れる。静かに部屋を退室する男が居た扉を見つめ、渡辺は大きく息を吐き出した。


「まったく、考えることが多いな。 過労死しないように何処かで休まんと」


 椅子の背に凭れ、両手を後頭部に置いて目を閉じる。

 これまでとは勝手の違う生活は、思いの外自由だ。やらねばならないことはあれど、その難易度は軍に居た頃と比較すれば楽なもの。

 渡辺本人も参加して清掃を行った感覚は随分と懐かしいもので、社長という身分になった彼は固い口調を少し崩して皆と喋るようにもなった。

 そのお蔭で隊員達との仲も深まり、少数の面子で飲みに出かける回数も増えたものである。


「恩には報わなければな。 少しでも俺達が居て良かったと思わせんと――あの最上のように」


 男の苗字を口にして、凭れかかった身体そのままに目を開いて机に置かれていた携帯で時間を確認する。

 夜の二十時。その時間を見て、帰ろうと胸中で呟いた。

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