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マッチポンプで世界が変わる!?  作者: オーメル


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厳しき寒さも紅蓮の優しさに溶け落ちる

 ――テレビの電源が点く。

 映っているのはニュース番組だ。日々様々な情報が市井の間に広がって消費され、大きな話題であればある程連日に渡って報道される。

 最近ホットな話題と言えば、やはり怪獣対策だろう。まだまだ日常の一部に組み込むには日が浅いが、徐々に市民の中でもそれが当たり前になってきている。

 とはいえ、当たり前になってはいても出来れば居ない方が良い存在だ。絶滅を願い、しかし今はその絶滅以外で人々は関心を寄せている。


 内容は大きく分けて二つ。

 一つは特務機動部隊のメンバーが一新されたこと。これまでの空我の搭乗者達は違反を起こし、全員が強制的に除隊される運びになった。

 また、一部の者を除いて戦闘以外を担当していた者達も殆どが除隊。此方は任意除隊という形であったが、ほぼ全てが完全に居なくなった。

 これについては違反者を庇った行為だと自衛隊高官からは発表されているが、情報に敏い者達は邪魔者を消しただけではないかと疑っていた。

 

 それを裏付けるものとして、もう一つの情報が騒ぎを起こしている。

 新企業創立。それ自体は珍しくもないが、創立に関わる全メンバーが特務機動部隊に所属していたことが騒ぎの原因だ。

 開発と販売を行い、自社製品を主軸とした販売を行う会社を彼等は僅かな期間に立ち上げている。

 指揮所の面々が上位陣となり、パイロットは運送。メカニック達は開発に関わり、少数精鋭で高品質な商品を提供すると宣伝もしている。


 おかしな話だ。

 辞めたばかりの彼等には金銭的余裕も無く、ましてや表に出れば違反者として非難される。

 何処の職場でも重大な問題を起こした者を雇いたくはないので、起業すること自体は悪い選択肢ではないだろう。しかしそれでも、社長をまったく知らない誰かにしておくくらいはするべきだ。

 何かがあるとして、記者達は総じて取材許可を取りに何度も連絡を行った。

 その度に取材は断られたが、それでも何とかと願うことで最初の日から一ヶ月後に取材許可を手にしたのである。


「――まったく、君にしてはとんでもない解決方法だ」


「こうする以外に彼等が生き残れる道は無いだろ。 巻き込んだ保証はすべきだよ、俺達は」


 コーヒーを啜る音が二つ鳴る。

 片方は澪。もう片方は彩斗だ。他に人の気配は無く、リビングには二人しか今は居ない。

 彩斗が気絶していた間、澪は厳しく彼等の道を尋ねた。

 そこには多大なる怒りと、邪魔をしたなりの責任の払い方を決めさせようとする思惑があったのだ。澪は怒りの割合の方が大きかったが、それでも冷静な部分がまったくないではなかった。

 悪意が相手なら慈悲も容赦も必要無い。どんなに厳しくしたとしても、彩斗が激怒することはないだろう。

 

 鳴滝・花蓮に決めさせたのは彼女が一番積極的に行動したからだ。

 何をするにせよ、一番最初に始めた者にこそ全てを左右させる資格がある。彩斗と澪がそうであるように。

 そして彼女は決めた。上層部の意思に背き、彼等を守ることを。

 社会の荒波の中でそれは排除される対象だ。例え学生であったとしても許されるものではない。

 空我の機密のこともある。彼女が意思に背いたとて、自衛隊を辞めさせてもらえずに酷使されていただろうことは間違いない。


「直ぐに起きて良かったよ。 お前は邪魔者として処理するつもりだったろうが、それじゃあ印象がよろしくない。 俺達は正義の味方じゃないけど、進んで人死にを出す殺人者でもないんだ。 敵を増やすのは俺達の活動上避けられないが、理不尽を減らすくらいはしても良いだろ」


「それで彼等の職場作りをするっていうのも極端な話だけどね」


 呆れた眼差しを送る澪に、聞けと彩斗は続ける。


「今後も活動するにせよ、やっぱり資金源は多いに越したことはない。 今はまだ投機で解決しているが、もしも投機が使えなくなった場合に備えておくのも悪くはないだろ。 高品質な品物ならお前以上は無い」


「……まぁ、実戦で使えないだけで一般で使う分なら問題無い商品なら幾らでも思い付くけど」

 

 機動部隊の隊員達が無事に辞めることが出来たのは、無論ヴェルサスのお蔭だ。

 目覚めた彩斗が澪を叱りながら積極的に彼等の生活をサポートしようとあれやこれやと考え、最終的に一本の動画を自衛隊本部のSNSのDMに送りつけた。

 それはβとの戦いだ。彼等が何とか報道局を遠ざけたものの、ヴェルサスのメンバーには最初から録画機能が搭載されている。

 それを使って後は編集すれば、市井の間に流す準備は完了。

 彼等を無事に退職させることを条件に公開停止を狙い、少々の話し合いの果てになんとか全員を強制除隊という形で自衛隊から離脱させた。


 上からしても違反者を抱えるのは不安要素がある。

 空我の機密を公開しないことだけを誓約書に誓わせ、出て来た所にレッドが待ち伏せで登場した。

 そして、会社を作ることにしたのである。

 可能な限りハイスピードで進めた所為で整っているとは言い難いが、先ずは始めることを優先させた。

 普通は製品を仕入れる際に問屋との契約や土地が必要になってくるが、そこは澪の力と金の暴力で解決している。

 

 土地の契約を機動部隊の渡辺指揮官に行ってもらい、結んだ次の日から澪が開発した大型3Dプリンターで建物を建て始めて自家発電用の設備を設置。

 開発室や管理部屋といった業務に必要な部屋も作り、地下に生産用の小規模な工場も作り上げた。

 家具の設置や担当部署の割り振り、規則や規約の作成は機動部隊に任せてヴェルサスはメンバー総出で施設の完成を目指したのである。

 二人だった頃とは違い、今やメンバーは五人。製作速度は段違いだ。


 会社の上部には居住スペースも設けてある。既に別の住居がある者を除き、三百人は住める部屋は一人暮らしをする分には問題がない広さだ。

 これは寮暮らしの者への救済措置であり、同時にヴェルサスのメンバー達が住める環境を作る一石二鳥の手である。

 彩斗達の家は広いが、かといって五人全員が満足に暮らせる空間かと言われると難しい。

 澪の専用の機材も多数が入り、部屋の二つは既に布団も敷けない狭さだ。

 このまま増えれば倉庫を別に用意する必要がある。――つまるところ、色々と容量限界に達しようとしていた訳だ。


「でもさ、皆かなり驚いてたよ。 なんでヴェルサスが助けてくれるのかって」


「まぁな。 普段は肩入れしない組織だ。 助けてくれるなんて誰も思わないだろうさ。 赤の他人だったら見捨てていたし、それは今も変わらない。 今回は此方にもメリットがあるし、それに謝罪も含まれているから」


「そこで僕を見るのは止めてくれよぅ。 解ってるって、もう過度に追い詰めるような真似はしませんよー」


「いまいち信用性が無いな。 まぁ、そこがお前なんだけどな」


 環境を取り敢えず用意したことで彩斗邸の生活スペースへの浸食は止まった。

 本当に重要な物は此処で作り、重要度が低い物は会社で作る。そして、澪が生み出した玩具で世のあらゆる製品を凌駕して一気に大会社に化けさせる予定だ。

 善人が生き辛い世の中を認める訳にはいかない。

 彩斗の裏の想いを、澪は十分に理解している。

 軽い調子での謝罪も彼女なりに真剣なもので、それを彩斗は知っているから軽い言葉でも呆れるだけに留めた。


 こうなる予定は無い。だが、予定の無いことなど幾らでも起きた。

 これから先もアドリブで行動することになるのだろう。そんな未来に、彩斗は憂鬱よりも静かな興奮を抱いていた。

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