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第二章12

 走って、走って、走り続けた。

 向かう場所なんてない。ありのままの春香を受け入れてくれる場所なんてどこにもない。

 春香に居場所なんてない。


 隠さなければ。黙っていなければ。我慢しなければ。

 感情を抑えなければ。背を向けなければ。諦めなければ。

 心を着飾らなければ。自分を殺さなければ。


 普通でいなければ居場所がなくなってしまう。

 すべてを失ってしまう。

 失うかもしれないと思うだけで心が引き裂けそうになる。

 だからずっと黙っていた。黙っていなければいけなかったのに。


 家族や親戚の顔を思い出す。あの嘆くような表情。

 小学校でのみんなの顔を思い出す。あの気味がるような表情。

 中学校での彼女の顔を思い出す。あの拒絶の表情。

 もう見たくないと思っていたのに。


 和哉の困惑した顔が思い浮かぶ。

 終わった、と思った。

 せっかく友だちになれたのに、仲良くしていけると思ったのに。理解してくれると思っていたのに。信じていたかったのに。


 やっぱりだめだった。

 和哉ですら理解なんてしてくれなかった。

 駆ける春香を、街は無視していた。


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