ヒトケモノ
世の中は不思議なこともある。
僕たちと同じように二本の足で立つ。
僕たちと同じように言葉を話す。
楽しいことに笑って、理不尽さに怒って、悲しいことに泣いて。
そんな彼等は僕たちに良く似た獣なんだと言う。
人モドキ、人獣なんだそうだ。
人に化けて人を殺す恐ろしい動物なんだそうだ。
だから、街の中に入ってこれないようにしてるんだって。
街を囲う壁の外は魔獣っていう人を食べる怪物がいるらしい。
でも、魔獣は馬鹿だから人獣と人の区別がつかないんだとか。
人獣は魔獣に食べられちゃうのかな。
可哀想だと思う。
僕が偶然、本当に偶々出会った人獣と呼ばれる女の子は僕と何処が違うのか分からなかった。
怖い人に何処かに連れていかれたあの子がどうなったのか気になるからお父さんとお母さんに聞いてみた。
「人獣が街に居たの?! まあ怖い! 噛まれたりしなかった!?」
「全く! 畜生風情が人様の真似なんかしやがって!! 俺の可愛い息子が病気にでもなったらどうしてくれる!」
「政府はどうして人モドキを駆逐しないのかしら……!」
「お前があった人獣はきっと殺処分されているはずだから大丈夫だ」
お母さんに心配されて、お父さんはあの子を、泣いて「死にたくない」と叫んだあの子がもうとっくに死んでるんだって笑っていった。
不思議だなと思う。
僕たちと同じ姿をしてる人なのに。
死にたくないって叫んでたのに。
お父さんもお母さんもそれを心配するどころかもっとやれなんて言うんだ。
それが気持ち悪くて、お父さんとお母さんがなんだか変な生き物に見えた。
そうしたら、周りの人もどんどん気持ち悪く見えた。
僕は笑っている。
醜い化物の群れの中で。
化物が敬う天使像達を遠目に眺めながら想起する。
あの日、あの時見た少女だけが今でも人としての姿を保っている。
「そりゃ神様が応えないわけだ」
そら、神様だって化物の願いなんて聞きたくないだろうから。




