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白鴉は幻想に飛ぶ  作者: 自重します
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:プロローグ

初めまして、東方の二次創作を書くことに初挑戦しました。

文才など存在してませんが、お目汚し、別にかまわん、という優しい方も優しくない方も今後ともよろしくお願いします

「この幻想郷は現状は妖怪と人間との共存ができてはいるのだが。無論、それに至るまで多大な犠牲と時間がかかったことは言うまでもない」


教卓の前に立ち、小さい子供たちに教鞭を振るうは上白沢慧音。幻想郷の人里に門を構えるこの寺子屋で教師を務めている。教卓に置かれた教本であろう歴史書を持ち上げ、慧音は数枚ページを捲った。目的のページであろう場所を見つけ、そこを生徒達の前に向ける。


「知っている者も何人かはいるんじゃないか?この人里に昔から伝わる伝説だ。

スペルカードルールが適用されるより、博麗の巫女が生まれるよりもずっと昔―――――」


***


その頃はまだ人里の人間を襲ってはならない、という決まりは無く、腹の空いた妖怪の餌場の様な形になっていた。

毎日の様に訪れる人間を食べに来る妖怪に怯えながら人里の住民は毎日を静かに暮らしていた。

ある日の事。何時ものように腹を空かした妖怪が人里を訪れた。普段なら深夜に訪れるはずの妖怪もいい加減学んだのだろう。人がある程度外を出歩く昼間に食事にやってきたのだ。

しかも狙ったのは腰を抜かし、恐怖と涙に顔が醜く歪む幼い子供。周りの大人はそれに気づかず、自らの身を守るために無意識にその子供を置いて逃げ出した。


「助けて」、と叫ぶ間も無く子供は妖怪の腹に消える――――はずだった。

子供を庇うように白と黒の翼を生やした鴉天狗が妖怪を片腕で押さえつけているではないか。


「餓鬼、さっさと逃げろ」


この言葉に子供は我を取り戻し、一目散に自宅へと逃げることが出来た。

子供の姿が見えなくなった頃、妖怪の体はグシャリ、という音を立て、あの大きな体が握り潰され、天狗の手に肉片だけが残っていた。

その天狗は以来人里に妖怪が攻め入ると、まるで人間を守るように人里に現れ、あっという間に妖怪を撃退し、颯爽と姿を消してしまうが故、当時の人里の住民たちも天狗について何も知らず、「守り神」として後数百年間天狗を崇め続けていた。


―――――が、今から約150年前、この幻想郷には博麗大結界が設置され人を守り、結界を管理する役割の博麗の巫女が登場して以来、その天狗の姿を見たものはいないという。

そのころには人里の人間を襲ってはならないという八雲紫の定めたルールがあったため天狗の仕事も減っていたと取れるが。


守り神と称され、数百年間人里を守り続けた天狗をその美しく神秘な見た目から「白鴉(はくあ)」と呼ばれていたようだ。


***


「―――――と、まあこんな話だ。みんなにはこの平和な日常がどうやって成り立ったのか、それを深く考えてもらいたい・・・、と言いたい所だが、その顔を見るところまだ全然ってところか」


教本から目を離し、生徒の顔を一瞥した慧音は御伽噺を聞かされた様に目を輝かせる子供たちに小さく溜息をついた。そもそもこのような話をしたところで生徒たちの年齢には理解が乏しいことぐらいは容易に予想がつく。それでもこの話をした理由は歴代の「博麗の巫女」直々のお願いだったからだ。


「私達の先輩としてこの幻想郷を守り続けていた白鴉様をどうか伝説として、でもいいですから人里の人間の記憶から消さないようにしてください」


と。無論、現在の博麗の巫女からのお願いでもある。

半妖として生を受け、もはや百年は当に生きた慧音でも博麗の巫女に頼まれたことはこれ以外にまともなことはないだろう。

それほどまでにこの守り神の存在は偉大なんだと、その存在を直に目にしたことがない慧音ですら安易に予想がつく。

壁にかかる河童特性の時計に目をくれ、慧音はその教本を教卓の上に置き、口を開いた。


「よし、今日の授業はここまでだ、みんな気をつけて家に帰るように。先生は仕事が残ってるから別の部屋に行くからなー」

「はーい、慧音先生さよならー」

「さよならー」

「橙ちゃんー、外であそぼー!!」


机に数時間つかまっていた子供たちは終わりの合図とともに教室の外へと飛び出し、遊びに行くものや家に帰るもの、いずれも見た目相応の楽しさを醸し出し、教鞭を振るっている者としてはつい笑みがこぼれる様な光景だろう。

慧音も例外ではなく、先ほどまでのような真面目な面構えは無く、優しい笑みを浮かべ、子供たちの元気な声を尻目に待ち人のいる部屋へと向かった。


「お待たせて申し訳ありません、今日は一体どういう御了見ですか八雲藍さん?」

「今日は白鴉の話をする日だった、というから橙の様子が気になりましてね」

「いつも通り、チルノやルーミアであったりと友達たちと楽しそうにしていましたが。橙がどうかしたんですか?」


その問に藍は慧音の持つ本の表紙を指差した。そこには墨で描かれた白鴉の絵が描かれていた。不思議そうに首をかしげる慧音に藍は口を開いた。


「橙や私達、八雲の名を継ぐものは全員必ずとも数回は会っているはずですからね」

「・・・まだその天狗は幻想郷にいると?」

「ええ、しかも貴方達人里に住まう者のすぐ近くに。齢は当に数千を超えたというにも拘らず青年のような姿をした彼は貴方達を静かに見守っているようですよ?」

不定期更新です

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