第7章 服を買う
ごめんなさい!新キャラ第8章にきます!替えの服買うの忘れてたんで!
「それじゃ、出発進行!」
「おー!」
俺の掛け声にカナだけが答えてくれる。なんとも優しいことか。
現在、馬車に乗り次の町に向かっている途中。道がガッタガタで少々尻が痛いが贅沢は言えないだろう。カナは俺の膝の上に座ってるから痛くないはずだ。
「ハル君、次はどこ目指してるの?」
「服の調達がしたいからな、服職業が盛んと言われている街、クライドゥンに行く。あ、いまここら辺でクライドゥンはここな」
そう言って地図を指差しながら説明する。
「服かぁ、確かにずっとこれだもんね」
ユイが自分の服を摘みながら少し苦笑いで言う。女子にとって同じ服を着続けるのはストレスだろう。正直言って俺もストレス。
「金もまあまああるしここらで新調しとこうってな、昨日思った」
「ま、妥当なとこね」
ユイとミオが同意。つまりトオルも同意ってことに等しい。いきなり反感食らうの嫌だったから良かった。
カナに関しては任せられているので良き。てかもう寝ちゃってるし。
「ぐっすり眠っちゃって」
「いいなあカナちゃん。お尻痛くなさそう」
「ミオかトオルの膝に座ればいいじゃん」
「絶対嫌って言うもん」
「当たり前よ。子供じゃないのだから、我慢しなさい」
母親かよ。と、ミオに対して思いつつ、俺はカナの頭を撫でた。
そしてふと手を止めた時、トオルが口を開く。
「ハル。どうした?」
「え?なんで?」
「腑に落ちないって顔してる」
「まじか」
こいつ、色々気づいてそうでこえーな。
まあ確かに腑に落ちないと感じていた。カナのことで。
「俺は、カナのことが好きなんだと思う」
「いきなりどうした」
「最後まで聞けって。それでさ、カナが俺に好意を寄せてくれてるのは嬉しい。でも、好意を寄せくる理由が分からないんだ」
「現実世界で実は会ってた!とか?」
ユイが人差し指を立て名推理と言わんばかりの顔をしていた。うんそれ普通はそう思うもんだよ。
「…やっぱどっかで会ってんのかねぇ」
「いつか思い出せるだろ」
「それもそっか」
いつか、思い出せる。きっと。そういう結論が出たため気を抜いたその瞬間、接近する気配に気づいた。
しかしもう既に遅い。その気配の間合いに入っている。避けられないと確信した。その刹那、俺の頭が鷲掴みされ、バサッバサッという音が響き、時々稲妻が走る音も聞こえた。
なんのこっちゃと目を白黒させていると、馬の手綱を引いていた人が覗き込んでゲタゲタと笑った。
「お客さん、随分とサンダーイーグルに好かれとりますなぁ!」
「さ、サンダーイーグル?」
「はいぃ、体内に蓄電機能と放電機能が備わってる鷲のとこでっせ。人に寄り付くことがないらしいっすけど、お客さんに惚れたんとちゃうかなぁ!そいつ、メスやし」
そう言って正面に向き直って、馬の手綱を握り直した。
危害を加える気は感じられない。俺は人差し指で足をトントンと、軽く叩いてみた。するとサンダーイーグルは俺の腕に飛び乗った。
「…大人しいな」
「だね」
腕を揺らしても上下左右に振っても動じず、かっちょいい眼差しを俺に向けてくる。
「ふっ、よろしくなわー子」
「ネーミングセンスなさすぎだし」
俺がかっこよく挨拶&命名すると、3人が同時にため息をついた。
まあ、そんなこんなで、目的の街クライドゥンに到着した。どこを見ても色鮮やかに装飾された建築物がある。
「家を布でカラフルにしてるな」
「絵とかじゃなくて布なんだ、私目悪いからよく見えないや」
「ん?視力もって、そうか。ユイは身体能力に関して等倍率なんだっけ」
「そうだよ。0.6くらいだったかな」
「もうメガネかけろよ」
雑談を交え俺たちは街を歩く。そして服飾の技術に圧倒された。服飾に関しては現実世界より発展している。よく手作りでここまで繊細にできるものだ。服飾のことなんも知らんから正しい評価の仕方が分からんのだけどな。
「まあいいか。よし、みんな服の調達だ!お金配るぞ」
俺はぴったし五等分したお金を一人一人に渡す。
「んで、自由行動にして集合場所決める?みんなで行動する?」
「配る前に言うべきことじゃない?それ。みんなででいいんじゃないかな」
「まあ、それもそうか」
「それじゃ、まずあそこから!」
ユイが指を指し、皆が賛同し、店に向かって行く。それに俺はただひたすらに着いて行く。カナが着せ替え人形状態になったり、オトルがフリフリのとびっきり可愛いやつを着せられてたり、ミオがゴスロリ風の服を着たり、ユイがサイコーにカッコよく決めてたり。心和む光景を、今俺と相棒のわー子は二人占めしている。あ、ちなみにわー子は肩にいます。
「んなことしてる場合じゃねえ、俺も服調達せんと」
自分らしさを大切に。自分らしさ………ってなんなんだろう。雷は黄色…でも俺の雷は黒雷だし、黒か?いや、真っ黒って訳じゃないからな。中央が淡い青に見えるからな。
うん。黒メインにしようか。紺色のTシャツ、黒と紫を混ぜたようなジーンズ、銀と黒のベルト、そして白衣の黒バージョン。これでバサァッができる。指抜きグローブもばっちし。これで3540バルト。余裕過ぎたのでローテーション分にもう2セット買った。あとはパジャマ用を買って、下着買えばおけ!完璧だ。5人で割って1人3万バルト。まだ買える。と、ここで気づく。俺1人だ。
「…どうしよ、マジで。この街まあまあデケーからってうおおおおっ!?サンダーイーグルパジャマ!?買お!」
突然脱線したが、買ったから大丈夫。さて、探しますか。
…このオーラ、これが《巫女》のオーラ。わっかりやす。とりあえず追跡しようとした瞬間、耳元でキィッと鳴き声が聞こえた。わー子がいきなり飛び立ったのだ。
「…分かったぜわー子。お前を信じるぞ!」
俺は全力でわー子を追った。
***
「おーい、カナ、ユイ、ミオ、トオル!」
「あ、ハル君いた!」
街の中心部に存在する大きな芝生の広場で、わー子がカナたちを発見した。
「迷子になっちゃダメだよハル君。カナちゃんも心配してたし」
「ああ、そっか。人数的に俺が迷子か。ごめん」
「心配した」
カナが膨れている。可愛い。いや今はそうじゃない。
「マジでごめん。何でもするから」
「本当?」
「俺にできることならっていう条件付きだけどな」
「考えとく」
一瞬、悪い顔に見えたが、気のせいだと自分に言い聞かせ、みんなと行動を共にする。そして買い物及び散策を終え、宿に向かった。女子と男子に分かれ部屋を借りる。まあつまり俺1人。だと思ったか!わー子がいるんだよ!ってわー子メスじゃん!ま、まあ、ペット枠ということで。
とりあえずわー子と風呂に入る。水だした瞬間逃げちゃったけど。わー子は水が苦手と。仕方ないのでしっかり絞った濡れタオルで体を拭いてやった。そんなこんなで日付が変わった。寝られる気がしない。物音のひとつも無い中、ぼーっとし続ける。わー子も多分寝てる。
1人だとやはり思い出してしまう。ベッドに横たわる両親の姿が。ただ寝ているようにしか見えなかった姿が。今思い返せば、肌が異常に白かった。寝ているだけだと信じていたから寝てるだけだと思ったのかもしれない。あの頃は、すぐに受け入れる程、大人にはなれなかった。
俺が何をしたって言うんだ。何でこんな仕打ちを俺が食らうんだ?
怒りが湧いてくる。でも何かに八つ当たりする程の力は入らなかった。
その時、コンコンとノックされる。こんな時間に、誰だ?
「誰?」
「ッ…か、カナだよ」
少し語気が強かったようだった。俺はすぐにドアを開け詫びを入れる。
「す、すまん!カナだと思わなくて、つい」
「うんん、大丈夫だよ」
「ありがとう。んでどうしたんだ?」
「一緒に寝よ」
「ああもちろ……は?」
俺はカナの言ったことが信じられず、呆然とする。
「だって、何でもするって言ったじゃん。だから、一緒に寝よ。勿論変なことしたら殴るけど」
「うん。分かってるよ。カナが嫌がることはしてないつもりだし、しないつもりだから」
そう答えるとカナはニコリと微笑み、ベッドから布団を椅子まで引っ張ってくる。
「ん」
「はいはい」
俺が座るとカナは布団を引っ張りながらお互いが向かい合うように座って、俺の胸に体を預けてきた。俺は布団をもう少し上にあげ、カナが寒くないように、隙間を埋めるようにかけた。温かいぬくもりが、俺を包む。
俺はカナに救われるばかりかもしれないな。なんだかんだで寄り添ってくれて。空っぽの心を満たしてくれて。
いつか、お返ししなきゃだなぁ。
いつの間にか俺は寝てしまっていた。カナと一緒に寝ると、不思議と悪夢を見ない。恐ろしい程快眠できた。
次こそ!次こそは新キャラ!今になって男にするか女にするか迷いだしてるけど…頑張ります!