第6章 休憩のついでに勉強
第6章です!楽しんで下さい!
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2017/11/25 23:44改稿完了
「じゃーん!ここがこの街の大図書館!らしい!」
と、指を刺す。風情のある木造。それ以外はマジでデカイだけ。
「早速行きましょう。夜またお花畑に行くんでしょ?それまでに終わらせよう」
「ま、ミオに賛成だ。行くぞー」
『おー』
***
「んで、どう調べる?」
「もう聞けばいいんじゃないかな」
ユイの言葉に皆頷く。1対4か、悲しいがこの世の中多い方が勝つんだよなあ。
「そうだな。聞いてくる」
「…なんか拗ねてない?」
「ないです」
「そ、そっか」
…ユイにバレたがもういいんだ。俺は諦めカウンターらしき場所に立っている人に話しかける。
「すいません。文字の早見表みたいなのあります?」
と、聞くと一瞬戸惑う表情になったがすぐに戻った。
「こちらでよろしいですか?」
と、渡されたものをペラリとめくる。うん知ってた分かんねえ。
「50音順みたいなのあります?」
「…?発音順はいろは順です」
「ありがとうございます」
良かった。なんとか伝わったか。
「ミオ、分かったぞ。ほいこれ」
俺は机に本を置く。そして表紙をめくり1ページ目を開いた。
「順番はいろは順だそうだ」
「いろは順?」
ユイが首を傾げなにそれっていう表情をしていた。仕方ない、ここは教えてあげんとな。
「いろはにほへとちりぬおくやまって奴だよ」
「ハルさん途中がっぽり抜けているのと何で最後まで言わないんですか」
「え、マジ?途中抜けてる?」
「ええ…いろはにほへと、ちりぬるを、わかよたれそ、つねならむ、うゐのおくやま、けふこえて、あさきゆめみし、ゑひもせす、よ」
ふぁ!?そんなんだったっけ?
「おお、流石学年2位」
「ハルさん1位でしょ…」
「理解しなきゃいけねー科目は真面目にやってるけど暗記でいけるやつは多少の理解で行けるんだよ。つまり暗記科目はテスト終わったら記憶から消してる」
「1番自分の為にならないじゃない」
「………そうだよ」
だっ、だって俺脳の容量少ないだもん!詰め込んだ分吐き出さなきゃ次のテストの内容なんざちっとも分からなくなるんだよ!
「とっ、とりあえずもう分かったも同然だ!暗記あるのみ!とりま俺はいろは順から覚える」
「私は一足先に覚え始めるわ」
「…私たちは?」
「ユイたちも覚えたいのなら覚えたらいいと思うぞ」
俺がそう言うとユイとトオルは首を横に振る。俺はそれを見て笑みを作り、そうかとだけ言って暗記に入った。
***
「いろはにほへと、ちりぬるを、わかよたれそ、つねならむ、うゐのおくやま、けふこえて、あさひゆめみし、ゑひもせす……あれ?「ひ」が2回出てね?あ、「あさき」か」
よっしゃ、これは覚えたも同然だな!あとは発音と文字を一致させればおけ。
方法はズバリ!書いて発音するに限る。
だが俺は気づく。そう、紙とペンがないのだ!不便過ぎる。
え?どうしよ。まじで俺書かなきゃ覚えらんないんだけど?仕方ねえ今までで要らない記憶全消去して頭にぶち込んでやらぁ!
…………………。
………………。
……………。
あ、覚えたぁ〜。
「完璧」
「ハル覚えたの?」
「おう。ばっちしだぜカナたん」
俺はグッと親指を立て、ウインクをする。俺がカナを見たらすぐに目が合うとかカナたんさてはずっと見てたな?全く、好きすぎるだろ!そんなカナたん大好き!恥ずかしくて言えないけど!
「くっ、何故かしら、負けた感じがするわ…」
「ふっ、これが差だよ」
「ムカつく」
怖いから睨まないで欲しいなあ。
「まあ焦るな。俺はただ要らない記憶端っこに追いやって詰め込んだだけだし」
「その脳が欲しいわ…」
うーん、これはこれで不便なんだよなぁ。
「ふう、半分覚えたわ。もう半分は明日にする。それまでに今覚えた半分を完璧にする」
「それが一番効率いいよな。やろうと思ってもやれずに一夜漬けになっちゃうんだけど」
「ハルの話はいいから飯食いに行こうぜ、アタシもユイも腹減った」
「そうだな、行くか」
俺はトオルの意見に賛成し、席を立つ。すると他のみんなも席を立った。
「何食うの?」
「…名物でも聞くか」
「そうね。それが一番だと思うわ」
そうして、俺たちはこの街の名物の食べ物を聞いて回った。そして辿り着いた。
「…まさか、異世界に来てジンギスカンみたいなのを食えるとは思ってなかったな」
「この街は羊の放牧をしているそうよ」
「へぇ、だからか」
俺は試しにパクリと一口食べる。本場の味は知らないが、醤油に似ている味にニンニクらしき香ばしさがプラスされており、めちゃうま。
ってか放牧て、魔物がいる世界だから大変そうだなあ。
「ふぅ、食った食ったー」
「食った食ったー」
俺の真似をしたカナたん可愛い。それにしても金に余裕があるってやっぱりいいな。美味いもんが食える。
「それじゃ、お花畑!」
そう言ってガタリと立ち上がったユイをミオが止める。
「その前にお風呂に入りましょう。お肉の匂いが染みついているし」
その意見について全員一致し、宿に一旦戻って風呂に入ることになった。残念ながら男湯の隣に女湯はない。だからものすごい静かな時間を過ごしていた。
功績により貸切。だからマジで一人。
ふと、両親を思い出した。そのせいか涙が出そうになる。ダメだ、一人だと全く演技も我慢もできん。
皆と仲良くなるのは怖い。失ってしまった時のダメージが、大きくなってしまうから。だから若干の距離を置いている。
失いたくないなら守ればいいと、言えない。守ろうという想いがあればいい訳じゃない。守れるだけの力と知恵がいる。
今の俺には、全くないものばかりだ。
「ああ、クソ。情けねーな」
俺は思いっきり水面に拳を振り下ろす。派手に水音をたててくれれば良かったものの、トプンと虚しく沈むだけだった。そしてその音は、俺の心の中で静かに響き続けた。
***
あれから数分。俺は部屋に戻った。女子の方は女子の希望により同じ部屋だが、俺は追い出され一人。はぁ、また一人か…
仕方ない。今後について考えておくか。俺は地図を広げ現在地と目的地を丸で囲んだ。パッと見た感じでは通過する街は9か。
うーん、少ないか多いか分かんないけど、パッと済む旅にはならないだろう。魔王倒せの時点で楽じゃないのは確定だったけどさ。
「とりあえず次はクライドゥン。服飾の街だって言ってたな」
妥当だな。服の調達をしたいと思ってたし。馬車出してくれるらしいし。
「………まあ、結局なるようになれって感じだけど」
とにかく最前線に立たなければ始まらない気がする。
「とりあえず寝よう」
俺は床にバタリと適当に倒れた。
***
早朝。俺は何故かパチリと目が覚め上体を起こした。
「超久しぶりの快眠だったな」
これまで何かと悪夢にうなされていたので少々驚いている。
さて驚くのはこのくらいにしてっと、確か今日の昼出発だったよな。
「花畑行くか」
まだ日が昇っていないからきっといい景色が見えるかもしれない。高台があったはずだからそこに行こう。俺は音を立てずに外に出る。
「さて、着いたのはいいが早すぎたなこりゃ」
予想だが後10分は日が見えないだろう。でも吹き向ける風が心地よく、待つのは苦ではないと思った。
「ハル」
「ん?カナ?着いてきてたのか?」
「ベランダから入ったけどいなかったから」
「そっか」
「ハルはここに何しにきたの?」
俺がいつまでも正面を向いているのが耐えられなかったと言わんばかりにぐいっと俺の袖を引っ張る。その表情は少し膨れていた。
俺は苦笑いをこぼしながら答える。
「日の出を見ようと思ってな。花畑と日の出のコラボだ。もう少しだろうから」
「うん」
俺とカナは静かに日が出るのを待つ。その時間が、なんかとても心地よい。
「出た」
その一言でカナを見ていた俺は我に帰り正面を向く。
「ほんとだな」
日が程よく花たちを照らし、幻想的な世界に感じた。その次の瞬間、手に程よく冷たい感覚を覚える。カナが手を握っていた。
「どーした?」
「うんん。何も」
「…そっか」
それきり会話はなかった。ただただ、日が少しづつ登るのを見ていた。日は俺たちの旅を応援してくれているような気がした。
「行こうか」
日が昇り終えた頃合いを見てカナの手を引く。
「ん」
と短く答え、俺に手を引かれるがままについてきた。それがとても、微笑ましい。
次回は「大魔術師降臨!」新キャラくるよ!
お楽しみに!