第一頁より
神々は如何にして、「庭」をつくったのであろう?
未だ「混沌」に在った頃の話。
神々は、自分達の住まう場所を作る為、「庭」を作ろうと考えた。
先ず、火の神ヴァントが、混沌の一部に衝撃を与えた。土の神タパが塵芥を集め、火をそれで包み込んだ。これが、「庭」の基盤である。
次に、光の神ベリケイと闇の女神ニヌスが、塵芥を捏ねて整形し、其処に起伏を作った。起伏の中で、特に深く凹みが生まれた場所には、水の女神ミシュアが水を流し込み、これを「海」と名付けた。そして起伏に添って、風の神シゼルティーネが数々の種を撒いた。これを「植物」と名付け、ミシュアの水の力を与えるとたちまち成長した。
次に、シゼルティーネが混沌の中に2枚絵を描いた。一つは青で、一つは黒で埋め尽くされた絵である。此処に、ミシュアは水と氷で作った白い浮遊物を、タパは先程の衝撃で生成された塵芥を、其々に散りばめた。そしてベリケイの提案で、光源となって照らしてくれるものを作ることになった。ベリケイは、ヴァントの炎と合わせた眩くも熱い球体を作り、それを青い絵に貼り付けた。ニヌスは、ミシュアの氷と合わせた美しくも冷たい球体を作り、それを黒い絵に貼り付けた。そしてニヌスによって、二つの絵が縫い合わせられた。これを、「庭」の周囲で回転させる事にした。これが、「昼」と「夜」の誕生であった。
さて「庭」が完成する直前。仕上げとして、数々の生き物が生まれた。タパが土を捏ねて形を作り、シゼルティーネが彩を与え、ベリケイが生き抜くための特殊能力を授けた。神々によって生物が生み出され、最後に自分達を信仰する存在を作る事になった。タパが土を捏ね、シゼルティーネが彩りを与えた。ヴァントとミシュアがこれに加護を与え、ベリケイとニヌスがこれに名前を付けた。「セヴィラ」と名付けられたそれは、楽園の中で幸せに暮らしていた。
――しかし、楽園の終焉はやって来る。
それは、ほんの少しの感情であった。
ニヌスという闇の女神は、ある日火の神ヴァントに一騎打ちを申し込んだ。互いに譲れない戦いとなっていたが、これ以上は続行させてはいけないと判断したベリケイが、ニヌスを止めた。しかし彼女は激情のあまりそれを振り切り、ヴァントに一直線に突撃した。ヴァントは一瞬の隙を突かれ、ニヌスの闇に捕らわれようとしていた。そこにミシュアが現れ、ヴァントとニヌスを引き離した。ベリケイはニヌスを封じようと、「昼」に浮かべた球体とは別の光源を生成した。シゼルティーネは烏の番人を、タパは熱や光で溶ける事の無い鎖を生成した。ニヌスをその光源に縛り付けた二神は、ヴァントとミシュアを顧みた。ヴァントは光源に、神をも溶かす熱を与えた。もがき苦しむニヌスを憐れんだミシュアは、せめてこれ以上熱で溶けない様にと彼女を深い海の闇に沈めた。
そして、ミシュアはタパに頼んでもう一体、最後に生物をつくりあげた。それはどの生物よりも硬い鱗と、巨大な身体と翼を持ち、美しい赤い瞳を持った生物。
『どうか貴方の瞳で、ニヌスを見張っていてください。その最期を看取る時まで、私の加護を与えた巫女を傍に置かせましょう。良いですね、■■■■■■■■■…』
【エヴィトール創世記】第一章・二頁より