ほたるびと
僕は泣いていた。 君は泣いていた。
君は僕に笑いかける。 君に笑いかける。
”また、来年にね…”
その日は、青い花が咲いた日だった。 世界が真っ青に染まって、見ているだけで世界に支配されている感覚に落ちる。まるで体に鎖を繋がれているような、そんな感覚。ここからは抜け出せ無いような、支配感。こんな世界に僕は、生きているのだろう。
そんな日が来る前、君は青い花を買って来て言った、
「青い花の意味は、『精神と愛、無限へのあこがれの象徴 』なんだって」
「ふーん」
花言葉では無く、”意味”だなんて…
「じゃあ、その花の花言葉は?」
「…………さあ?」
君は遠くの何かを見ている
「その花の名前は?」
「いろいろ、青い花がたくさんだよ。」
君は曖昧に答えた。それじゃあ、わからないのだけど、
「ふーん」
そんな会話が続く。 青い花は嫌いではない、でも青は見ていると吸い込まれるような恐怖を感じる。どちらかと言えば嫌いな方だろう。でも、君が買って来た青い花たちは綺麗だった。そこにある物として。名前も知らない花たちは、蕾を開き、花を咲かし、枯れていった。
「もうほとんど枯れちゃったね」
君は寂しそうに言った
「そうだね、でもまだ蕾なのもあるよ」
君のそんな顔を見たくなかったから、僕は明るく振る舞う。
「ふふ…そうだね」
君が笑顔になる。
「いつに咲くかな?明日かな?」
君は冗談のように、無邪気に笑う。僕は、何よりもこの顔が好きだった。
「ねえ、明日蛍を見に行かないか?」
その日は、青い花が咲いた日だった。 世界が真っ青に染まって、見ているだけで世界に支配されている感覚に落ちる。まるで体に鎖を繋がれているような、そんな感覚。ここからは抜け出せ無いような、支配感。 その中に”君”という、蛍のような、暖かい光のような存在がいるだけで。夜空に星が満ちていくように、この世界は満ちていく。こんな世界に僕は、生きているのだろう。
僕は泣いている、君も泣いている。君は僕に笑いかける。
「また、来年にね…」
君は、たぶん。本物の蛍なのだろう、僕は青い花の中に消える君を、見た気がした。




