クラスメイトのイザベラさん
「あのビンタの後実は…」
それは9月の後半、夏休みの宿題提出日のこと。
「夏休み前ぶりだなエリオット、宿題見せやがれ。」
「なんだよ、今年もやって来なかったのか。」
「当たり前だろ。」
なぜかアレックスは自慢げだった。
「アレックス、僕は夏休み前に言ったぞ。」
「えっ 何をだ。」
「今年は宿題見せない。自分でやれ、と。」
ガーン
あからさまに落ち込む。
「エリオット、俺たち親友だろ。」
「宿題しない親友に心当たりはない。」
ガーン
「終わった。俺の人生終わった。」
「とにかく僕は君に宿題を見せることはできない。」
アレックスの額から脂汗がポタポタ。
「やばい、怒られる。凄く怒られる。」
「そんなにマズいなら、誰かに見せてもらえばいいのではないか。」
「誰が宿題貸してくれると思う。この俺に。」
「あっ……。いないな。」
ガーン
「アレックスは毎日気球作ってる変な人で、皆からは【バルーンマン】って呼ばれてるくらいだもんね。」
「気球ぐらい作ってもいいじゃないか…それに比べて……」
アレックスは教室を見渡した。
「…?」
僕は首をかしげる。
「お前は気づいてないのか。」
僕も教室を見渡した。
「キャーッ!!今こっちをみたわ。」
「夏休みの間にとても凛々しくなられましたわ。」
「エリオットさま、今日も素敵ですわ」
「はぁ~~」
アレックスは大きなため息をつく。
「まったくもって不平等だな。お前も気球作ってるのに。」
「なんのことだいアレックス。」
「気づいてないのか。」
「だから何がだい」
「おい…エリオット、気づいてないふりだろ。」
「アレックスよ。この世界に平等など無いのだよ。」
「分かっていながら防ぎようのないから腹立つぜ。」
「サララァーン」
髪をなびかせる。
「キャーッ!!」
「イケメーン」
「エリオットさまぁ~」
「腹立つわぁ」
ガラガラ 教室の扉が開いた。
「みなさん、席に着いてください。」
ざわついていた教室が静かになる。
みな、各々の席に着いた。
「では始めに宿題を机の上に置いてください。」
生徒の全員が指示に従い宿題のワークをだした。
アレックスもだ。だが何も書いていないワークだ。
白紙のワークを開かれたらすぐにバレてしまうだろう。
「順番に回って点検します。」
先生が順番に生徒の机を回りだした。
エリオットの点検が終わった。
もちろん完璧であった。
アレックスの順番が近づく。
先生は目の前まで迫った。
「次は、アレックス。ワークを点検します。」
「ぐぬぬぅ~。」
アレックスは絶望的な状況に追い込まれた。
その時
カラカララン
先生の足の下で物音がした。
「何かしら。」
先生方しゃがんで拾う一瞬で、
近づき、アレックスの机の上に、ワークを置いて。アレックスにウインク。そして、
「先生、それは私のヘアピンです。落としちゃいました。」
「あらあら、はいどうぞ。無くさないようにね。」
ヘアピンを受け取り席に戻る。
見事な手さばきだった。
「ええーと、アレックス。ワークを開いて下さい。」
「あっ、はい。」
さきほど机に置いてったワークを開く。
「アレックスも完璧ね。」
おおーー
教室がざわめく。
「皆さん、静かに。次の人、ワークを開いて下さい。」
アレックスは宿題提出を乗り越えたのだった。
手にしたワークの裏を見る。
【イザベラ】
と書かれてある。
僕は聞いてみた。
「イザベラさんとは仲良かったのかい。」
「………」
アレックスはイザベラさんのことを見つめ、固まっていた。
「アレックス、おーい、アレックス。」
「………。 うちのクラスにあんな素敵な女性が居たんだな。」
「んっ えっ。」
僕も驚いて一瞬固まる。
「アレックス、ジョークにしては笑えないよ。 3年間同じクラスだったじゃないか。」
「完全に覚えていない。だけどもう忘れることはない。僕は気づいてしまったんだ。彼女の魅力に。」
「うわぁ~ 程々に応援するよ。」