雪山の夜
「しかし困ったな」
アレックスは気球を見る。
着陸の衝撃でゴンドラがゆがんでいる。
「ガスがあっても飛ぶかどうか怪しいな。」
「それにまた着陸しなきゃ行けないでしょ。」
僕はアレックスの言葉に付け加えるように言った。
僕は辺りを見渡す。
氷と雪しかない。
そして山。
雪山で遭難した状態にあった。
「はぁ、とりあえず来た方向に戻ろうぜ。」
アレックスがため息をつきながら言った。
「いやダメだ、危険すぎるよ。」
「エリオット何言ってんだ、どうするんだよ。」
僕は太陽の位置から東を推測し、指さした。
「あっちに行こう。」
「あっちって、来た方向の真逆じゃないか。」
僕はうなずく。
「助けを待っていてもそれまで僕たちが生きているのは多分無理だと思う。食料、水、暖、どれか一つでも無くなれば死ぬ。でもあっちには道がある。その道はミラノに続いている。」
「ミラノ、イタリアか。」
「ミラノに行けば助かる。」
僕はゆっくりと立ち上がる。
腰が痛むが、たいしたことはなかった。
アレックスも立ち上がろうとするが、足首が痛むようで、険しい顔をしていた。
「アレックス、足が痛むのか。」
「これぐらいなら平気さ。」
にっこりと強がって笑っているが、ミラノまでは歩ける足ではないだろう。
「仕方がない、今日は野宿だ。」
「マジかよ。」
僕は気球の骨組みをバラバラにして、
テントの形に組み立て、その上から切った気球のバルーンを被せて、簡易テントを作った。
湖の回りは岩ばかりで、資材の確保が大変だった。何とか一晩過ごせるだけの薪になるような木の枝を集めて燃やしてみたが、
雪を被った木の枝はうまく燃えず、
結局バルーンを少しずつちぎって、枝に巻きつけてから燃やすことにした。
日も落ちきり、辺りは暗く、星がとても綺麗に見えた。輝く星々を見ていると、本当に助かるのか不安になった。
でも、僕の隣にアレックスが居たから勇気が湧いた。僕たちならミラノまで行けると強く信じた。