片道切符
エリオットとアレックスを乗せた気球は
雲にも到達しそうなほどまでの高度まで上がった。
「ちゃんと飛んで、安心したら腹減って来たぜ」
アレックスは、そう言うとポケットから
クッキーを取り出した。
「ほらよ お前にも分けてやるよ」
アレックスは僕にクッキーを渡すと、その場に座り込んだ。
その向かい側に僕も座った。
「少し寒いね。」
僕がそう言うとアレックスは少し微笑んだ。
どのくらいたったのだろうか。
太陽はちょうど南のてっぺんまで上がった。
「エリオット、どこまで飛んできたんだ」
アレックスが聞いてきたので僕は立てって
ゴンドラから地上を見下ろした。
草原が広がるのどかな自然のなか、
ぽつりぽつりと白いヤギが見える。
「南に山が見える。おそらくあれはアイガー山だと思うのだけど、もし仮にあれがアイガー山なら
ここは(スイス)だ。」
それを聞いたアレックスは跳ね上がった。
「スイスだと。」
アイガー山を見た彼はしばらく口が開きっぱなしになった。
「今すぐ引き返そう。」
彼は完全にパニックだ。
「どうやって引き返すんだ」
僕たちは気球に乗って飛ぶことはできるが、操作することはできない。やったことないからだ。
「アレックスが乗れば勝手に飛ぶっていったから乗ったのに、勝手に飛びすぎてるよ。」
「とりあえず地上に降りよう。」
「どうやって降りるんだい。アレックスは気球での着陸の仕方は分かるのかい」
「エリオットはどうなんだ。着陸できるのか」
気球に興味がないただの中学生が出来るわけがない。
「アレックスどうする」
「そうだなぁ……」
アレックスが何か言おうとした瞬間
ギィィ ギィィ ギィィ
気球が大きく揺れる。
「な なにがお……」
アレックスは地上を見て真っ青になった。
地上がみるみるうちに早く滑っていく様に見える。
気球が加速したのだ。
「風に乗ってる……」
自然は偉大でありそれはそれは(無慈悲)であった。