記憶1
僕らが高校生のとき、
「私魔女なの」
と告白してきた幼馴染みが、最近になってぽろりと本音をこぼした
「魔女ってなんでもできそうに思われがちだけど、自分が魔女だってことを秘密にして生きていくのはしんどいんだよ」
俯いた彼女は僕の想像する魔女とは違って、普通の人間の女の子のようだった
[魔女はつよくない]
今この瞬間僕が世界中で一番幸せだと思ったし、僕の人生の中で一番のときだと思った
なんの疑いも持たずに
背後から少し大人びた彼女の声がした
「たくさんの思い出が君を待っているから」
目の前にいるの彼女はきょとんとした顔で僕を見た
人生で一番、を今決めてしまうのはもったいない気がした
[未来の言伝]
ただの幼馴染でそのへんに転がってる「女子」だと思ってた君が、初めて女に見えた
世話を焼いていてくれたことも一緒に笑ったことも、急に愛しくなった
気付いたきっかけが彼氏といるときの君の顔を見たから、だなんて自分でも笑えるよ
でも、なんでか君を離す気にもなれない自分が、一番笑えるんだ
[待ってろ]
僕は今日も自分の席に着く カラーボールの飛び交う教室の中で、そのいくつかは僕に直撃する 徐に傘を取り出して、防御するように差す ぶち当たるカラーボールの色が混ざって、傘の中は真っ黒だ きゃはは、と汚い笑い声も騒音となって降り注ぐ中、僕はじっと時が過ぎるのを待つ ああ、とんだ戦場だ
[虹色の戦争]
私のこと好き?、なんて
「野暮なこと聞いたわね」
気まずそうにするあなたが、何よりの答え
自分のコーヒー代を置いて帰ろうとする私の手を掴んだけど、ぱくぱくと口を動かすだけだなんて、呆れる
「言い訳ぐらいちゃんと用意しておいてよ」
その手を振り払うぐらいの勇気は、私は用意してたわよ
[コーヒーに沈んだ恋]
あなたと2人で校内を歩いた 隣のあなたの顔が見れなくて、景色とあなたの声しか記憶にない
このまま並んで歩けるなら、手と手を合わせることができなくてもいいと思った
近付こうとして壊れてしまうくらいなら
それでも強引に手を引いて抱きしめてほしいとか心の何処かで妄想していた、あれが本心
[散った花びらに隠したのは]
「生まれてくるときに、神様と約束をしたの 私が死んだときは世界に一番美しい虹を架けてくださいって」
幼い頃、君から聞いた話を思い出した
「私の約束はね、ちゃんと果たされたか自分ではわからないから知っておいてほしいの」
僕は今日まで忘れずにいた
天気雨の下 綺麗な虹が架かっているよ
[世界で一番美しい]




