天城月野でした。
「という訳で、君達の財布は貰っていくね。後上着もブランド物も全部。とりあえずこれで許してあげるから、これからはあんま調子のってかつあげとかダメだよ。俺みたいな怖いのが、後ろから襲い掛かってくるからね。」
月野はそう言いながら、新春の夜のアスファルトに身を横たえ呻き声をあげる四人のDQNから、財布や指輪やピアス、ベルトに上着を剥いでいった。
四人は中学生からの悪友であり、工業系高校を退学したり、コンビニや鳶や土方のバイトで日銭を稼ぎながら遊び歩いているDQN達だった。その中の一人が電子系に強かった事から、コンビニから一晩で何万円分万引きできるかや、四人で見た目が弱そうなサラリーマンをぼこぼこに殴ったり、人通りの少ない路地で帰宅途中の女性を襲い、服も下着も持ち物も全て奪う行為を『一分全裸』などと名付けて行い、それを撮影してネット上にUPしていた。無許可営業のネットカフェから投稿し、盗んだ携帯から閲覧数を確認したりと少しばかり狡猾に立ち回っており、警察もこのDQN達の逮捕には未だ至らなかった。そこに出てきたのが“自称”正義の味方、天城月野だった。テレビでこの事件を耳にした月野は、懐が寒いこともあり、早速被害者を探しだし接触した。広い仙台の街の中と言っても、少し頭を使えばすぐに被害者を見つけられる。犯罪現場はワイドショーが教えてくれる。『どちらの方角から』『何時頃』『帰宅途中の』等々、情報の断片を紡ぎ会わせ、被害者の勤め先から住んでいる団地まで、見付けるまで二日かからなかった。被害者を見付けると、簡単な身辺調査をする。そして一人に目をつけた。被害者は女性で、去年地元の短大を出たばかりの実家住まい。ありふれた犯罪の被害者ではあるが、月野が目をつけたのは、クズの思考ではあるが家が裕福そうだったからだ。月野は父親に接触した。
「犯人を見つけ出して、復讐を代行しますが、如何ですか?」
正常な思考、判断ができれば勿論こんな話しは聞き入れられないが、娘を襲われた父親は自分の怒りが犯人達には当然届かない事はわかっており、悩む。そこで月野は自分の上半身を晒す。傷だらけの身体を父親に見せ、自分も以前『そちら側』だった事ある事件から『こちら側』に立つようになったことを聞かせた。