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木の棒のエターナルノート  作者: 木の棒
第2エター 異世界で中途半端な魔族始めました
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第23話

「よし! これで残りは強いゴブリンだけだね」

「はい。あの体の大きなゴブリンですね。確かに強そうです」


 里の中にいたゴブリンを倒し終えた。

 里から森に出してしまえば、里に戻ることなく森の中にいることが偶然分かり、それを利用して里の中にいるゴブリンを森の中におびき寄せて倒したのだ。

 一度に全てのゴブリンが里から出てきていたわけではなかったので、何回かおびき寄せる必要があった。

 丸1日かけて、里の中のゴブリンを全て森の中におびき寄せて倒していったのだ。


 しかし、ゴブリンリーダーである3体は動かない。

 森に出てくることはないし、そもそもゴブリンの叫び声に反応して追ってくることもなかった。

 里の中でゴブリンリーダーと戦ったら、どんな反応を示してくるのか。


「行ってみよう」

「はい!」



 迷宮の中のゴブリンの里には、ゴブリンリーダー3体だけが残っている。

 族長であろう魔28のゴブリンリーダーは族長の小屋に入ったり出てきたり。

 友好派リーダーであろう魔25のゴブリンリーダーは、自分の小屋の前にずっと座っている。

 そして強硬派リーダーであろう魔20のゴブリンリーダーは、里の中をあちこちうろうろしている。


 まずは魔20のゴブリンリーダーからだ。

 こいつに攻撃を仕掛けた時、他の2体が動くのか動かないのか。

 もし動いたら、いったん迷宮の出口まで逃げる。

 森まで追ってきてくれて、ゴブリンと同じくその後に森の中をうろうろしてくれたら最高だ。


 この3体の魔物は、ゴブリン化して倒そうと思っている。

 ゴブリンの魔体の加護は17。

 これだけ加護の高い魔物を倒したら、加護20になれるかもしれない。


 ゴブリンの魔体を加護20にしたい。

 なぜなら、19と20で違いがあると推測しているからだ。

 ゴブリンとゴブリンリーダーの違いである。


 今まで見てきた中で、加護20になると『~リーダー』とリーダーがつくようになっていた。

 それはゴブリンもオークも同じだ。

 僕の魔体も加護20でゴブリンリーダーになれるのか検証だ。


 里の中をうろうろしている魔20のゴブリンリーダーの動きを見て、他の2体とかなり離れた時、魔体を向かわせた。


「ゴブォォォォォ!」


 大きな叫び声。

 すぐに残り2体の方を見た。

 しかし、この叫び声に反応することは無さそうだ。

 動かない。

 よし、いけるぞ。


 魔20のゴブリンは大きな棍棒を持っていた。

 腕で防いでも、一撃でかなりのダメージをもらう。

 でもリリスがいれば大丈夫。

 ダークヒールの回復があるから、持久戦では負けないのだよ!


 ゴブリンリーダーの棍棒を受けながらも、僕の魔体のゴブリンは果敢に攻めていく。

 今までにない長期戦を制したのは、もちろん僕だ。

 本当にリリスのダークヒールはありがたい。


「よし!」


 魔20のゴブリンは砕け散って消えていった。

 1つの魔石を残して。



武装魔石:棍棒



 きたああああ! 初の武装魔石!

 レアドロップだね! いいね! いいね!


「これは棍棒の武装魔石だ」

「すごい! 初めての武装魔石ですね!」


 さっそくゴブリンの魔体に棍棒の武装魔石を与えた。

 10秒ほどで吸収する。

 すると、光の粒子が集まりゴブリンの右手に大きな棍棒が現れた。


「おお~、なんか格好良いな!」

「はい。素敵です!」


 棍棒を持った

 それだけで僕の魔体のゴブリンは、何倍にも強く見えた。

 ゲームなら最弱武器である棍棒。

 でもそんなの関係ない! この棍棒は素晴らしい物だ!


「よし、早速この棍棒の威力を確かめてみよう!」

「はい!」


 ちらりと残り2体の魔物のゴブリンを見る。

 魔28の族長もどきと、魔25の友好派リーダーもどき。

 順番通りにいくなら、魔25からだ。

 でも何となく友好派リーダーである魔25の方を最後に残したかった。


 魔28の族長もどきに狙いをつける。

 族長の小屋から出たり入ったり。里の中をうろつくこともある。

 族長の小屋と、友好派リーダーの小屋は近い。

 さっきは念のための離れた場所で強硬派リーダーと戦ったけど、これだけ近いとさすがに反応してくるかな?


 不安に思いながらも、魔28のゴブリンに魔体を向かわせた。

 小屋から出てきて里の中央に向かったところを狙った。


「ゴブブォォォォォオオオオオ!」


 すんげ~叫び声。

 さすがは族長だ。


 しかしその叫び声にも魔25のゴブリンは反応しない。

 自分の小屋の前にずっと座っている。


 族長もどきとの戦いが始まった。

 加護の差は大きい。

 さっき魔20のゴブリンを倒して、僕のゴブリンは加護18になっている。

 それでも加護は10も違う。

 能力的には相手が上だろう。


 族長もどきの武器は大剣だ。

 まるでオークリーダーが持っていたような大剣だった。

 棍棒で大剣に立ち向かうなんて普通なら無謀だけど、これは魔体と魔物の戦い。

 激しい斬り合い打ち合いが始まった。


「ダークヒール!」


 ほぼノーガードでお互い攻撃している。

 大剣の直撃を喰らうと生命力が一気に30も減った。

 生命力の高いゴブリンの魔体で良かった。

 オークだと耐えられなかったな。


「ダークヒール!」


 リリスも休みなくダークヒールを唱える。

 後ろから聞こえてくるダークプリーストの歌声に励まされているようだ。


「ゴブブブォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオ!」


 その美しい歌声をかき消すかのような咆哮が響く。

 同時に族長もどきの体に変化が見えた。

 逞しい肉体がさらに逞しく。

 まるで鋼鉄のように硬くなったように見える。


「なんだ、あれは!?」


 これは危険な気がするぞ。

 一気に攻撃力アップとか?

 これ以上ダメージの幅が大きくなったら、ダークヒールが追い付かなくなる。


「ダークヒール!」


 ん?

 攻撃力に……変化はないようだ。

 今のところ減っていく生命力は、咆哮の前と同じペースだ。

 何が変わったんだ?


「ダークヒール!」


 防御力か?

 あの鋼鉄のような肉体は、防御力をアップしているのではないか。

 きっとそうだ。

 棍棒で叩かれてもあまりダメージが通らにようになったんだな。


「ダークヒール!」


 僅かでもダメージは蓄積されていく。

 僕のようにリリスのダークヒールがあるわけじゃない。

 回復魔法って本当に偉大だな。

 そういえば魔体の生命力を回復する魔法って一般的なのかな?

 リリスは素晴らしい能力だって言っていたけど、もしかしたらレアな能力なのかもしれない。

 あまり人前で見せないようにしよう。


「ダークヒール! あっ」

「よし!」


 族長もどきの魔28のゴブリンはついに砕け散った。

 そして連続で武装魔石が残されました。



武装魔石:大剣



 大剣きたー!


「大剣の武装魔石だね」

「素晴らしいです!」

「ああ、どんどん装備が充実していくね。それとお疲れ様。リリスのおかげで勝てたよ」

「そんな……私の力はガイア様から授かったものです。ガイア様のためにお役に立てることが私の幸せですから」

「ありがとう。本当に助かっているよ。ところで、ダークヒールのように魔体の傷を癒してくれる能力って他にも聞いたことある?」

「どうでしょう……申し訳ありません。私では知識不足です」

「あ、いいんだ。ただ、もしかしたらリリスの能力は本当に特別かもしれないから、あまり人前で見せることはしないようにしよう」

「はい」


 この大剣は……ゴブリンか。

 棍棒を外してゴブリンに大剣を持たせようかな。

 以前はもし大剣を手に入れたらオークに持たせようと思っていたけど、生命力の高いゴブリンの方が魔族化して格上と戦う時は安定するから、少しでも強い武器はゴブリンがいいかもしれない。

 オークには棍棒を……あれ? 待てよ。武装魔石って外せるのか?


「リリス、一度与えた武装魔石って外せるのかな?」

「ど、どうでしょう?」


 僕と同じく魔体の知識を持たないリリスに聞いても仕方のないことだ。

 安易にリリスに聞くのはやめよう。

 リリスを傷つけることになってしまう。


 ゴブリンの魔体にさっき与えた棍棒の武装魔石を出すように念じてみる。

 でも出てこない。

 だめか。それとも他に方法があるのかもしれない。

 エドヴァルドさんに聞きに行くか?

 また近くに寄ったので~、と言うにはまだ日が浅すぎる。

 どんだけポーメンの近くをうろうろしているんだよ、と思われたら嫌だな。

 いくら村の命の恩人とはいえ、たびたび訪れては物資を要求されると思われたら、その内嫌われてしまうだろうから。


 とりあえず、今回はオークに大剣を与えておこう。

 オークが強くなることは悪いことじゃない。

 オーク化してオークの魔体を出すと、大剣の武装魔石を与えた。

 オークの右手に握られた大剣はちょっと大きすぎるか? 体格に合っていない感じだ。

 加護が上がると体格も大きくなっていく。

 オークリーダーになれば、この大剣も似合う様になるだろう。


 大剣を与え終えると、ゴブリン化した。


「さて、これで最後の1体だね」

「はい。あのゴブリンはずっと動きませんね」

「ああ、とっても心優しいゴブリンだったんだよ」

「え?」

「あ~本当のゴブリンの里での話ね。この迷宮はゴブリン達の想いで造られたのか、あの里を忠実に再現しているだろ? ゴブリンの魔物は実際とはちょっと違っていたけど、いま倒した2体と最後に残ったこのゴブリンは、本当のゴブリンの里にもいたんだ」

「ガイア様がお世話になったというゴブリンですね」

「うん。このゴブリンはオークと手を結ぶことに反対していた。人族と手を結んでオークを倒そうとしていたんだ。でも里の判断はオークと手を結ぶことだった。どうにかして助けられないかと頑張ったんだけどね……」

「ガイア様……」


 むぎゅっとリリスの柔らかいものが腕に押し当てられる。

 ちょっと元気をなくした僕を慰めようと、柔らかいものをすりすりと……。

 ごめんよリリス。実はそこまで落ち込んでいるわけじゃないんだ。

 でも気持ち良いからそういうことにしておこう。


 ゴブリンがオークに喰われてしまったことは残念だ。

 でもそれは、弱肉強食の世界では当たり前に起こることなのだろう。

 ちっぽけな僕がどうこう出来る問題じゃない。

 僕だって、この先どんな強者と遭遇するか分からない。

 一瞬で殺されてしまうかもしれないのだから。


 リリスの柔らかいものを堪能しながら、ゴブリンの情報を見る。

 さすがは魔28のゴブリンだ。

 経験値も多かったのだろう。一気にレベルが上がっている。

 これで加護は19になった。


 最後の友好派リーダーもどきを倒したら、加護は20になるかもしれない。

 ゴブリンがゴブリンリーダーに進化するのかどうか分かるぞ。

 倒すのは何となく心が痛むけど、でも僕の糧となってくれ!


「よし、いこうか。あ、魔力は大丈夫?」


 2連戦でダークプリーストの魔力は40ほど減っている。

 20回もダークヒールを唱えてくれたのか。

 ま~格上相手だから仕方ない。


 ダークプリーストの魔力は補正値込みで120。

 まだ80あるから余裕だと分かっているけど、一応聞いてみた。

 気遣いが出来る男だとアピールです。


「そ、そうですね。ちょ、ちょっと疲れているかもしれません」


 ありゃ、リリスが甘えてきてしまった。

 僕が魔力の残りを数値化で見えていると知らないからな。

 もじもじしながら顔を少し赤らめて、ますます女性として成長していく柔らかい身体を絡めてくる。

 まったく可愛い奴め! 仕方ない! ここはリリスの言葉に乗っていこう!


「2連戦で疲れたよね。今度は僕がリリスを癒してあげるね」

「ガイア様!」


 すまんゴブリン。ちょっと待っていてくれ。


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