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木の棒のエターナルノート  作者: 木の棒
第2エター 異世界で中途半端な魔族始めました
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第16話

 サキュバスとの新生活がスタートした。

 それは新婚生活といっても過言ではないだろう。


 北の丘の教会が新居である。

 本格的にここを拠点にすると決めたので、まずは掃除から始めた。

 外見は直さない。

 万が一、ポーメンの人が近くを通って外見が綺麗になっていたら驚くだろうから。

 ま、10年以上も放置している教会を見たところで、変化が分かる人なんていないのだろうけど、綺麗なのはおかしいと思ってしまうだろう。

 だから外見は廃れた感じのままがいい。


 そして1階も綺麗にしていない。

 それどころか、2階に続く階段を壊した。

 腐って朽ちたかのように階段を壊したことで、1階から2階に上がる手段がないように見せる。


 ではどうやって2階に上がるのか?

 もちろん……インキュバスになって空を飛びます。

 サキュバスから空の飛び方を教わったんだよね。


「羽に魔力を宿して空を飛びます。魔力の消費を抑えるために滅多に飛ばないので、実は私もあまり空を飛ぶのが上手くないんです。えへ」


 えへ、ですって。

 上手く空を飛べないことを照れ隠しするサキュバスは最高に可愛かったよ!


 サキュバスの指導を受けて、何とか空を飛べるようになった。

 まだサキュバスより下手だけど、それでも2階の窓から教会の中に入るぐらいは問題ない。


 次に食事の問題が劇的に改善された。

 なぜならサキュバスは料理上手だったのだ。


 なぜ料理上手なのか?

 サキュバスは人族や他の魔族のように食事を取ることはない。

 食べるのは精だけだ。

 それなのにサキュバスは料理上手である。

 理由を聞いてみた。


「実は……サキュバスの里では10を過ぎても魔体を授かれないものは、里を追い出されることを考えて、様々な生きる術を覚えようとします。

 その中でも、里を出た後に『人族の男性』の精を得ようとする者は、人族の男性が好む技術を覚えていきます。

 その中に料理がありました」


「え? 人族の男性って……どうして同じ魔族の男性じゃないの?」

「それは……魔族の男性から精を得るには、相手の子を産むことを条件に出されることが多いからです」

「子を?」

「はい。私達サキュバスは、どんな魔族の子でも宿すことが出来ます。しかも、宿した子に自らの魔力を与えることで、より強い子を産むことが出来るのです。そのため、魔体を授かったサキュバスは、上位の魔族の子を産もうと彼らに近づきます」

「へ~、そうなんだ」

「でも必ずしも、上位の魔族がサキュバスに子を産ませるわけではありません」

「え? どうして?」

「上位の魔族は数が少ないです。それは自分よりも強い存在を嫌うからです。サキュバスに産ませた子が、自分よりも強い存在なら、その子が自分のことを殺してしまうかもしれません」

「な、なるほど」

「ですが、下位の魔族はそんなことを考えられるような知能はありません。私達サキュバスが近付けば、喜び勇んで交じ合おうとするでしょう。

 ですが下位の魔族は絶対に嫌というサキュバスがほとんどです。特に最悪なのが、ガイア様が倒したオークです。オークは乱暴なことで有名ですし、それにお腹が空いたらサキュバスを食べてしまうことすらあるそうです」


 サキュバスは僕のことを『ガイア様』と呼ぶようになった。

 自然とこうなったのだ。

 ちょっとこそばゆいけど、何とか慣れた。


「それはひどいね。僕もオークは大嫌いだ。あいつらは本当に食べることしか頭にない」

「ガイア様の勇姿は何度思い出しても、身体が熱くなるほど素敵です」

「そ、そうかな」

「はい。素敵です」


 すぐに僕に甘えてくるサキュバス。

 言葉は丁寧な感じだけど、態度は甘えたがりだ。

 身体を密着させることが大好きで、仕事が無ければほとんど僕に密着している。

 綺麗に掃除した2階の床に広げた毛布の上で、密着しながら会話することが多い。


「上位魔族は魔体を授かった者が、下位魔族はお断り。となると中位魔族が残ります。魔体を持たないサキュバスはとても弱く、同じく魔体を持たない中位魔族には逆立ちしても勝てません。

 魔体を持つ下位魔族にすら勝てないのですから、当然です。

 それでも精を求めるとなれば、相手の要求を受け入れることになります。それが子を産むことです」

「中位魔族は、上位魔族のように、自分より強い子が生まれても問題ないの?」

「はい。ほとんどは問題ありません。中位魔族の多くは種族の繋がりを大事にします。ですから、自分より弱い親を殺してしまうような魔族はいません」

「なるほど」

「子を産み続けることを受け入れるなら、中位魔族から精を得るのが最も簡単です」

「子を産むのが嫌だったの?」

「嫌なわけではありませんが、中位魔族の元では私達サキュバスは子を産む道具でしかないのです。自由もなく、ただただ子を産み続けることだけを求められます。

 子を産んだ直後は、魔力が枯れる寸前になるので、逃げることも出来ません。

 魔族の男性を相手に選ぶならそれを覚悟しなさいと言われた時、私は人族の男性にしようと思ったんです」


 厳しい世界だ。

 生きていくとは厳しいことなのだ。

 はぐれサキュバスを受け入れる中位魔族の種族だって、自分達も生きていけなければならない。

 慈悲だけでサキュバスに精を与え続けるなど、出来るはずもない。


「人族の男性から精を得るには、魔族とは違った様々な問題があります。

 もちろん一番は種の違いです。

 人族と魔族は長らく争っていますし、特に先代の魔王様の頃は人族を滅ぼそうと激しく争っていました。

 私が里を出る時は、今の魔王様が人族と友好関係を結ぼうと尽力されていることもあって、人族の男性の精を求めに出ていった仲間も多かったです」


 魔族についても、少し聞いてみた。


「先代の魔王が倒されたのっていつ?」

「えっと、今から3年ほど前ですね」

「3年前か……先代の魔王ってどのくらい強かったんだろうな」

「私も噂しか知らないのですが……魔族の全ての術を操ることが出来る御方だったと聞いています」

「へ~すごい。まるでどこかの里の教授みたいだな」

「教授ですか?」

「あ、いや、何でもない。今の魔王も同じように全ての術を操ることが出来るの?」

「いえ、今の魔王様は違います。今の魔王様はオーガ族の方です。しかも女性なんですよ」

「え? 女性なんだ」

「はい。先代の魔王様の王妃様でした。先代の魔王様が亡くなられてからは、魔王様として魔族をまとめているんです」

「あ~王妃様だったんだ」


 オーガ族の女性で、先代の魔王の奥さん。

 なんかめちゃめちゃ強そうだな。


「ごめん、話がそれたね」

「いえ。それで人族の男性の精を求めると決めてから、料理の腕を磨きました。人族の男性は美味しい料理を作る女性に弱いと、サキュバスの里にある書物に書いてありました」


 サキュバスの里にはすごい書物があるんだな。

 男は料理上手な女に弱いことに間違いない。

 僕にとってもこの上ないほどありがたいことである。


 今日も僕が森で狩ってきた獣と、採ってきた果実と野菜を使って、サキュバスが美味しい料理を作ってくれた。

 食器なんかは、ハンマを使って近くの木を倒して、その木で作った。

 木を素手で倒したハンマを見て、僕に抱きついて「素敵です」と言ってくれるからまた可愛い。

 でもハンマが「僕がやったのに」という表情をしていたようにも見えた。



 ここ数日は、日中は森の中で狩りをしながら、ポーメン方面の偵察をしていた。

 困ったことに……聖騎士団がうろついていた。

 最初にその姿を見た時は、本当に心臓が口から飛び出すんじゃないかと思うぐらい焦った。


 姫騎士の姿は見えなかったけど、オークの残党狩りなのか、それとも警戒を解いていないのか、数人の女性騎士が森の中を巡回している。

 早くアリバラに戻ってくれることを願いながら、毎日偵察を続けている。


 さて、サキュバスの美味しいご飯を食べ終えたら、お楽しみタイムだ。

 サキュバスにとってはこれからご飯とも言える。


 食事の前に水浴びは終わらせてある。

 近くに流れる川を見つけて、そこで水浴びをしているのだ。

 準備は万端と言える。


 サキュバスは本当に嬉しそうな笑顔で、僕の身体を弄り始める。

 行為は日に日に激しくなっている。

 というのも、サキュバスの方から積極的にいろいろ聞いてきてくれるのだ。

 僕もついついサキュバスの言葉に乗って、ああして欲しいとか、こうして欲しいとか、自分の欲望を素直に言ってしまう。

 僕がこんなにも欲望に素直になるのは、きっとサキュバスの魅了のせいだ。

 だから僕がドスケベなわけじゃない。

 全ては魅了のせいなんです……魅了最高!


 今夜もサキュバスと激しく交じ合いながら、残された問題についてちょっと考える。

 問題とは……僕という存在だ。

 サキュバスには何も伝えていない。

 サキュバスもあれから何も聞いてこない。

 インキュバス以外の魔族化は見せていない。


 そしてサキュバスの人化の問題も棚上げ状態だ。

 どうして人化できるようになったのか、まったくもって分からない。


「ガイア様」


 僕が他のことを考えているから不安になったのか、サキュバスが熱いキスをせがんできた。

 いかんいかん。

 大事な行為の最中に他のことを考えるなんて。

 女性に失礼だったな。


 集中して行為に励んだ。

 それはもう真剣に、ねっとりとね。

 サキュバスと熱い夜を過ごす様になってから、もう10日ほど経つけど、この間にサキュバスに起きた変化がはっきりと分かる。


 成長している。

 顔は16歳相応だけど、身体つきがどんどん成長しているのだ。

 大人の女性の身体へと、僕の精を得て急激に成長している。

 中でも胸の成長は喜ばしい。

 最初はAとしか思えなかったのが、今ではCぐらいまで成長した。

 このままどこまで成長してくれるのか楽しみで仕方ない。


「ガイア様」


 Cを揉むとサキュバスが甘美な声で名前を呼んでくれる。

 こんなの体験しちゃったら、もう離れることなんて出来ないよね。


 サキュバスが喜んでくれるので、ちょっと激しく胸を揉んでみた。

 嫌がることなく、サキュバスはさらに妖艶な声を上げる。


 ああ、サキュバスの情報とか見れたらいいのにな。

 そしたら人化のこととか分かったり……え?


 本当に出てきた。

 カードだ。

 サキュバスの胸からカードが出てきたのだ。


「ガイア様、ガイア様」


 サキュバスは気付いていない。

 愛おしそうに僕の名前を呼んで、身体をくねらせている。

 僕はそっと、そのカードを見た。



名前:    年齢:16歳  性別:女  種族:サキュバス

魔体:

特殊技能

 半人化



 半人化に僕のようなリストはない。

 名前がないのは魔王から名前を授かっていないからか。

 そういえば名前が無いのって不便だよな。


 僕がつけちゃうか。

 別に魔王から授かる名前とは別に、僕が呼ぶ名前があってもいいのではないか。

 何がいいかな。

 サキュバスだと……リリスとか。

 うん、可愛らしい名前だ。

 リリスにしよう。


「ねぇ、いま思ったんだけど、名前がないのは不便だし、僕が名前をつけてもいいかな?」

「は、はい! ガイア様に名前をつけて頂けるなんて嬉しいです」

「本当? よかった。いま考えたんだけど、リリスって名前なんだ」

「リリス……私の名前はリリス……ああ、ガイア様!」

「え?」


 リリスの身体が震えた。

 ものすごい振動が、僕のものを包み込む。

 これはいつものとは違う。

 いつものも激しいけど、それとは違う種類のものだ。


「リ、リリス? 大丈夫!?」

「はぁはぁ……ああ、リリス。私の名前……ああ!!!!!!」


 や、やばい?

 いっちゃってる。別の世界にいっちゃってるぞ!?


 リリスは気絶してしまった。

 あまりの快感に? 違うだろうな。

 息はしている。

 ぐったりしているけど、肌艶は良いし、血色も悪くない。

 大丈夫だ、死ぬようなことはないだろう。


 僕の手にはリリスの胸から取り出したカードが握られている。

 そのカードに新たに記された情報を見て、また今夜いろいろ考えないといけないなと思った。



名前:リリス  年齢:16歳  性別:女  種族:サキュバス

魔体:ダークプリースト

特殊技能

 半人化

 魔石結晶化


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