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初夜に白い結婚を宣言された転生者は、テンプレを楽しみます

作者: 田舎娘
掲載日:2026/05/21

テンプレいっぱいのお話しです。

 私、本日、初夜です。


 旦那様は、伯爵家ご当主様ですよー。そして、真実の愛の実行者ですよー。真実のお相手は、男爵家の庶子ですよー。

 テンプレよね。


 私は、一応子爵家令嬢。生れは公爵家三女です。それも側室や愛人の子ではなく、ちゃんと正室の子です。三女なのでおばあ様の実家に跡取り娘として、養子に出されたの。そしたら、子爵家のお母様ったら、嫡男を産みやがったのよ。私は、跡取りから脱落よ。生家に戻るって話も有ったんだけど、それを子爵家が拒否よ。私は、そのまま子爵家令嬢として育って、今は、伯爵夫人な訳よ。調べればすぐ判ることなんだけど、知らなかったみたいよね。誰がしらない?誰って、私の旦那様よ。


 さっき、初夜の儀式の間にいらっしゃって、のたまうのよ。

「私には、真実の愛を誓った女性がいる。」ってね。

 続きもあるわよ。

「だから、お前とは白い結婚になる。」

 もっとあるわよ。

「子爵家ごときが、どういう手段を使ったのか知らないが、身の程を弁えろ。」

 テンプレよね。はひふへほーだわ。


 旦那様は、散々喚いて初夜の間から出て行ったわ。やっと、静かになったわ。耳が痛かったのよ。

「子爵家ごときって、あんたの愛人は男爵家の庶子ごときだろー。」

 とは言わないよ。だって、

「天は、人の上に人をつくらず。人の下に人をつくらず。」だからねー。


 わかったでしょ。私、転生者で~す。

 物心ついた時に、前世の記憶が絵本みたいに頭に入ってきて、今世と混じることが無かったから良かったのよ。養女だって、公爵家より子爵家の方が楽かなあなんてね。浅はかだったわ。生れは公爵家よ。みんな知ってる。

 だから~。わかるでしょ。子爵家でも、私だけ公爵家基準よ。特別扱いは良くないと思いま~す。


 まあ、前世の記憶で四人の父母と、二人の実姉、一人の実兄、一人の義弟を上手く転がして、この世を謳歌してきたつもりなんだけど、転がされていたのは、私ね。だって、考えてみて、旦那様の事情なんて私でも、調べられたのよ。公爵家が知らないはずないじゃない。つまり、うまくいかない結婚を私にさせて、なんか、狙ってるってこった。何だろう。こんな時、おばあ様が居れば泣きついたんだけど、あいにく年には勝てずご昇天ずみなのよね~。


 さ~て、どうしましょう。きっと、このまま実家に逃げ込んでもOKなんだろうけど、ちょっと癪にさわるのよ~。あの狸おやじめ。はじっめから教えろよ。ああ、実家って公爵家ね。子爵家は公爵家に逆らえないから、元凶は公爵家よ。お兄様たちも、知ってるわよね。事が終わったら、絞めないとだわ。


 う~ん。しばらく様子見でもしようかな。この結婚で離婚しても私は全然気にしないし、かえって、好都合かも。

「自由を手に入れよー。おー。」だわ。


 あの狸おやじの狙いも気になるし。それにね、明日から楽しみなんだー。私への使用人たちの虐めよ。だって、伯爵に望まれない夫人よ。

 テンプレよね。わくわくするわー。


 明日に備えて寝るか。動くのめんどくさいし、ここでいいや。

 さて、何がでてくるかなあー。


 チュ、チュ、チュ、

 あー、今日も元気だ。小鳥がかわいい。

 良く寝たわ。


 ガチャ。勝手にドアが開いた。このドアは自動ドア、のはずが無いわよ。ノックもなくあけたわよね。次は、どうでるんだろー。

 寝たふりしよかなー。


「あら、誰かいるわよ。」

「まさか。ここは伯爵夫妻のお部屋よ。」

「昨夜は、初夜よね。」

「じゃあ、奥様?」

「奥様って言ってもねえ。」

「旦那様は、昨夜も、ねえ・・・。」


「おはよう」

 ・・・・。

「お おはようございます。」

「で、私の専属のメイドは、どなた?」

「あ あの、存じません。」

「そう、ならメイド長を連れてきて。」

「ェ・・・。」

「早くして。」

「はい。」


 やってきましたよ、メイド長。

「お呼びでしょうか。忙しいので、手短にお願い致します。」

「私の専属メイドは、どなた?」

「居りません。」

「なら、交代制なのね。今日はどなた?」

「居りません。」

 私でも言葉がでないわ。すっごいテンプレ。

「御用が無いようなので失礼致します。」

 さっさと出て行ったわよ。あれで、長なの。そんじゃあ、

「執事を呼んできて。」

「ェ・・・。」

「早くして。」

「はい。」

 以下同文

 こいつもか~。まともなのはいないの。

 因みに、メイド長は家政婦長とも言うのよ。まあ、どっちでもいいってことよ。要は、女性使用人のトップね。執事と家令も以下同文。


「貴方たちの一人、ついてきて。」

 三人で押し付けあってるわ。それ見てるのも楽しいけど、埒が明かない。

 私は、待たずに自室と言われてる部屋へ。客室だわね。私は、お客?お客様扱いしてくれたら御の字よね。


 それにしても、メイドがこないわ。そういう事よね。あとで、全員丸っとお仕置きよ。たのしみ~。

 だから、一人で着替えよ。気やすいドレスを用意しといてよかったわー。嫁入り前に、テンプレに対応するため準備したのよ。えらいわ、私。


 朝食の迎えも無いから自ら出向いてやったわよ。そしたら、なんと、なんと。私の席に座ってる女がいたの。例の男爵家の庶子よ。私を見て、余裕の微笑みってやつ、勝ち誇ったように、汚い目で見てきたわ。無視よ。無視。

「おはようございます。」

 だ~れも返事しないし、あっちは無視してきてる。負けないけど。

「私のお食事を持ってきてくださる。」

 素直にもってきたわよ。パンとスープだけね。まともなだけマシかしら。

 だから、いただきましたよ。味は薄かったけど。

「ご馳走様。調理長に、長としての責任で料理を作ってね。って伝えて。では、旦那様、お先に失礼致します。」


 さて、これからの予定は、・・・。

 まず、持参金の保護ね。あの女に使われていそうだもの。しっかり釘を刺しとかないと。でも、狸おやじは、それが狙い?イイエ、確保しとかないと私の責任にされそう。なら、さっそく。


 コンコンコン。

 ここは、旦那様の執務室。返事なんて待たないわよ。

「返事も待てないのか。これだから子爵家は・・・。」

 ハイハイハイ。でもね、

「こちらのメイドはノックもなしに部屋へはいってきましたので、それが当家のしきたりかと思いましたの。でも、違いましたのね。その者たちは、厳重に教育しなおしますね。」

「ゥ・・・。」

「それより、私の持参金の確認に来ました。」

「嫁いですぐにお金のことか。卑しいな。」

「卑しくて結構です。あと、婚姻契約書を確認したいので、それもお願いいたします。」


 しぶしぶだしてきました。持参金のは入ってるはずの、私の通帳。0が一つだけ。早いこって。

「旦那様、これは?」

「何か、不都合があるか。」

「不都合ではなく。なぜ、金額の表示がないのですか?」

「無いからだろう。」

「使用目的をお聞きしています。」

「持参金は、基本的に我が家の物となっている。伯爵家の資金として、移した。」

「分かりました。では、使用詳細をご提出ください、」

「いちいち、お前に提出する義務はない。」

「私にではありません。実家にです。そういう契約ですね。」


 私は、婚姻契約書をヒラヒラ見せます。子爵家なんぞいくらでも黙らせられると思ってそうね。実家って、公爵家よ。

 目びりしないといいなあ。私の持参金。


「ねえ、大金が入ったんでしょ。新しいドレスに宝石も欲しいわ。」

 ノックの代わりに大声を上げて入ってきたのは例の男爵家の庶子で~す。旦那様の顔が見ものだったわ。噴出さなかった私、エライ。


「旦那様、この方の役職は?」

「わ…私の身の周りの世話をする専用の侍女だ。」

 いま、考えましたね。では、逆襲をば、しましょうかね。

「そこの侍女。入室からやり直しなさい。」

「はあ、なによ。偉そうに。」

 あなたより、ずーと偉いんです。この女も声高らかに騒ぐのね、似た者カップルね。あー、ドアが開けっぱ。


「何を騒いでいるんです。」

 今度は、執事登場。どうなるかな~。

「おじさま~。ひどいんでん。」

 なるほど。血縁か。

「旦那様、ご隠居様が領地へお帰りの挨拶にお見えです。今、妻が、応接間にご案内いたしました。」

 なるへそ。夫婦でこいつの親族。う~ん、どうしようか?


 旦那様が立ち上がったので、私もご挨拶にと立ち上がれば、

「どうして、あんたも行くのよ。」

「私、妻ですから、お義父様とお義母様にご挨拶しないと。妻の仕事です。」

 悔しそう。ドタバタとはしたなく退場。


 応接間を開けると、下座に座る全伯爵夫妻。私を見るなり、立ち上がって挨拶しそうよ。私への忖度みたいね。

「お義父様、お義母様。こちらにお座りください。」

 上座にと思ったけど、あの男がさっさと上座に座っとるわ。なら、

「お義母様。私がお隣にいてもいいですか。」

 いい嫁ぶって、作戦開始。要約すると、

「私の専属メイドもいない。ノックなしに部屋に入ってくるメイド。使用人が少ないようで質問しようにも、お仕事の邪魔はしたくない。そこで、私の教育係兼専属メイドの派遣要請。」だ。もちろん快諾。あと、もう一押し、

「私の持参金が伯爵家の資産の中に組み込まれましたが。こちらでは。そういう扱いですか?」

 我が国では、持参金は、あくまでも持参した者の財産だ。これは、離婚した時とか、子がいないうちに夫に死なれた時の為にだ。嫁入りした後も、夫が手を付けることは違法だ。


 私の質問に答えたのは、まさかの前伯爵様だ。

「そんなことは無い。妻の持参金もきちんと妻が管理している。もし、息子がそんなことをしたのなら、きっと、鉱山に投資するためだろう。」

「鉱山?」

 鉱山があるなんて聞いてないぞ。

「ごく最近に、金鉱山が見つかったんだよ。でも、我が家は、ノウハウがなくてね。それをお願いしたら公爵様が色よいお返事でね。息子も結婚できたし、言うことなしだよ。隠居したのも、鉱山の管理に専念したいからなんだよ。だから、持参金も鉱山に出資してもいいと思ったんだろう。」

 これだ!!!!!あの狸おやじ、金鉱山を狙ってるな。狸おやじが狙ってるのなら、確実にもうかるかも。よし。

「そんな事情なら、もちろん了解しました。私の名で出資いたしますわ。お手続きよろしくお願いいたしますね。」

 これで、持参金は安泰と。よきかな。よきかな。


 ランチで~す。

 メニューは、何か食べられそうにないステーキ。素敵だわ。サラダにパンでした。パンとサラダを頂いてご馳走様。ダイエットには丁度いいわ。

「あら、おいしいステーキよ食べないの。」

「お代わりにどうぞ。」

「要らないわよ。そんなもの食べないわよ。」

 そんなもの、ね、なら。

「手は付けていませんわ。旦那様はいかがです。」

「私も、結構だ。」

 残念。誰も食べてくれない。まあ、食べないわよね。テンプレよねー。


 まだ、嫁入りして二日目よ。飽きちゃった。狸おやじの狙いもわかったし。どうするかな~。


「おい。この招待状はなんだ。」

 相変わらず、ノックなし。この家は当主からしてマナー違反ね。

 旦那様の手にあるのは、王家の封筒。

 確か、結婚前に届いていたアレね。結婚したから、改めてきたんだわ。

「王家主催のパーティーの招待状ですね。」

「この宛名だ。なんで、伯爵夫人並びに伯爵なんだ。」

「このパーティーは、結婚前に私宛に招待状が届いておりましたの。結婚したので、改めて夫婦での招待状を送っていただいたのでは。」

「違う。なんで、お前ごときに招待状が届くんだ。」

 うるさいわー。耳が痛い。

 そうだ。このパーティーで終わりにしてやる。決定~。

「では、欠席でお返事致しますね。」

「馬鹿を言うな。こんな名誉を断れるわけがない。これだから、子爵家ごときは困るんだ。常識が、まるで分っていない。」

 ハイハイハイ。あっ、ハイは一つね。

「明日は、出かけるぞ。そのつもりでな。」

「ハイ。」


 喉が渇いたわ。お茶にしましょう。気分をかえて、お庭のテラスでいただきましょう。

「お茶をいただきたいわ。庭のテラスに用意して・・・・。」

 誰もいないわ。そうだった、私付きっていないんだったわ。それならと厨房に顔を出し、

「テラスでお茶をいただくわ。用意してちょうだい。」

 返事は、待ちませ~ん。テラスでお茶を、暫しではなく、大層待ちました。

 待った甲斐があり、お茶がきましたー。メイド長とその他大勢と一緒に。何が起こるんだー。でも、仕事しろよ。そんなに要らんだろー。

「忙しいのですから、急なことには対応しかねます。」

 ハイハイハイ。あっ、ハイは一つね。

 さて、お待ちかねのお茶を……。このお茶は飲めないわー。何か、はいってるー。


「メイド長、あなたもご一緒にいかが。お聞きしたいこともあるし。」

「えっ、わ、わ、私は結構です。」

「でも、一人だと寂しいわ。そうだ。あなたの姪御さんをお呼びしましょう。」

「私が、どうしたの。」

 グッドタイミング。

「あー。勝手にお茶をのんでるー。私ものみたいー。」

 グッドタイミング。おぬし、なかなかやるのー。

「どうぞ。メイド長がいれてくれたの、きっとおいしいわ。」

「叔母様のお茶はおいしいのよー。」

 メイド長、顔が青いわよ。周りのメイドはオロオロするし。な~にが、入ってるのかなー。でも、お前ら、仕事しろよ。

「やめなさい。」

 飲む気満々なのにとめてるよ。

「あとで、ゆっくりいれてあげます。それは、奥様のお茶です。」

 こんな時だけ奥様なんだ。姪っ子が驚いてんぞ。

「もう、お茶は結構よ。」

 さっさと退場しました。とさ。


 実は、私って、王族の教育も受けてんのよ。なんせ、公爵家のお母様。私の実母ね。元王女なのよ。アッ、元はつかないわ。まだ、王位継承権も持ってるし、未だ王女様なのよ。この国では、公爵夫人なんだけど、王女が先にくるのよね。必然的に私にもあるのよ。第何位だったかしら。現王が、母の弟。二人姉弟で、現王は息子が二人ね。うちが兄と私だから、母を混ぜると五位ね。姉二人は、父の側室の子ね。だから、さっさと嫁にいったわ。

 仲は良いわよ。一緒に父親をけちょんけちょんにこけ落とすのは楽しいわよ。


 第五位なんてすごいでしょ。だから、毒のこととか言語とか、公爵家どころの教育じゃあなかったわよ。みんな、知ってることなのに、なんで知らないんでしょう。誰がって、旦那様と例の男爵家の庶子よ。それにこの家の使用人ね。


 だいたい、王位継承権第五位の私が、なんで、地雷物件と結婚するのよ。それが、すっごく不思議。王家が許すはず・・・。まさか・・・。王家もグル!そしたら、金鉱山って、それほどすごいの。

 もうちょっと調べてみよー。暇つぶしができそー。

 王室のパーティーは一か月後だからねー。


 晩餐でーす。

 私のメニューは、相変わらずでーす。食べられないものが、はいってま~す。昼は食べられないステーキ。夜はスープみたいよ。だって、例の男爵家の庶子がニタニタして、私を見るのよ。スープに手を出そうとすると嬉しそう。スープを避けると面白くなさそうな顔よ。そんなに、顔にだしたら台無しでしょ。何が台無しになるのかしらねー。笑いが止まらないわ。我慢したけど。


 コンコンコン。

 久しぶりにノックの音を聞いたわ。この家にもノックができる人がいたのね。

「困ります。急にいらっしゃられても・・・。」

「私は、客ではありません。奥様の教育係兼専属メイドです。前伯爵夫人に依頼をうけました。」

 お義母様に頼んでいた人だ。どうやら皆と顔見知りのようね。誰だろ。


 あろうことか、私をチラッと見て、例の男爵家の庶子に挨拶してるよ。例の男爵家の庶子はすっごく得意顔よ。でもね。

「どなたか存じ上げませんが、伯爵夫人は私です。」

「では、伯爵夫人の席にいるこの女性は?」

「さあ?そうそう、執事夫妻の姪御さんと伺ってます。」

「なんと……。……。おぼちゃま。」

「ご馳走様。私は、仕事があるから失礼する。」

 真実の愛のお相手を置いて、一人で逃げやがりましたよ。なんて男だ。


「奥様、失礼いたしました。私は、前伯爵夫人に依頼されて奥様の教育係とメイドを兼任致します。前メイド長です。」

 これは、これは、面白くなってまいりました。

「ところで、そのスープらしき物はなんですか?」

「私の夕食のスープらしいわ。」

「何てこと。料理長を呼びなさい。」

 きました。料理長。前メイド長を見てうろたえてます。

「なんで、ここに・・・。」

「理由は良いのです。これが奥様にお出しする料理ですか。」

 おホホホ。やられてるよ。ざま~。

「イヤ。その~。」

「ご自分で飲んでみなさい。」

「イヤ。その~。」

 準王族の私より怖いみたいね。ここは、彼女にまかせましょ。

「私は部屋に戻ります。後は、よしなに。それと、あらためてまして。私は子爵家から嫁いできた嫁です。教育係等、よろしくお願いしますね。」

 これで、通じるよね。私の身分を黙ってろ。の命令。


 コンコンコン。

 ノックの音だ。これよ。これが普通なのよ。なんだかホッとするわ。

「どうぞ。」

 入ってきたのは、元メイド長。手にトレイを持ってる。

「奥様。きちんとしたお食事をお持ちいたしました。」

 トレイを置いて、姿勢を正して、

「あらためまして、前伯爵夫人より遣わされました。前メイド長をしておりました者です。よろしくお願い致します。」

 先ずは、この人のことを把握しないと。前メイド長なら、この家のことは詳しいだろうし、もってこいの人よね。

「こちらこそ、よろしく。」


 あれこれ。これは?それは?いっぱい質問で~す。食べながらね。嫁に来て、初めてのまともな食事だわ。

 彼女は、母親も伯爵家で働いていたそうな。でも、ただの使用人っぽくないんだよね。時々、使用人らしからぬ言葉が・・・。もしかして、

「あなたは、この伯爵家にかかわる人ね。私の義理の叔母様かしら?」

「えっ。なぜ、おわかりに。」

「ナイショ。私の頼みでここに来たってことは、伯爵家に愛着を持っているのね。」

「いいえ。どこまでご存じなのかわかりませんが、一ミリも愛着など持ち合わせておりません。」

「では、身内の方にかしら。」

「むしろ、マイナスです。」

 ほ~。もってこいだわ。


「私の身分のことは?」

「言っておりません。あんな馬鹿だったとは思いませんでした。この国の王族のことを知らないなどあり得ません。前伯爵も、教える義務があります。奥様だって・・・。」

「奥様だって・・・。」

「あの方は、全て受け身なのです。指示されなければ何もしない、できないと言う方です。嫁に来た時も、すでに私が家の差配をしておりましたので、これ幸いと丸投げされました。」

「今までずっと?」

「そうです。おかげで、婚期を逃がしました。ですが、領地に引っ込む時は、私は不要だったようです。それなのに、急に呼び出され、私の都合も考えなしに、『行ってね』の一言です。」

「迷惑をかけたみたいね。申し訳ないわ。」

「いいえ。奥様にお会いして、楽しみになりました。」

「あら、どうして。」

「奥様は、何かお考えがあって、身分を隠しておいでなのでしょ。それは、私には大変興味深いことです。」


 ここに、名ばかりの伯爵夫人と前メイド長の共闘が成立しましたよ。お互い、誰と戦うのやら。


 協力者がいるってらくだわね~。食事もまともなのがでるし、太りそう。

 それに、使用人の再教育も頼んだのよ。長くいるつもりのない家の為に手を掛けるなんて、無駄でしょ。まあ、丸投げよ。

 前も、引継ぎはしたらしいけど・・・。

「私の教育が悪うございました。心して務めさせていただきます。」

 ニヤリと素晴らしい笑顔で張り切ってます。


 さて、伯爵家の財産は、金鉱山以外、めぼしいものはなし。でも、金鉱山が曲者だっだわ。

 伯爵領の三分の一は山なんだとさ。それで、その山のすべてで金がとれるらしい。採っても、採っても採り尽すのに何年かかるのか。いや、何百年単位らしいわ。王家も狙うはずよ。これで、私の持参金は安泰だ~。ヨシヨシ。

 誰、情報?もちろん前メイド長で~す。彼女、鉱山の準備を手伝ってたんだって。確実よ。


 でも、おかしいのよねー。例の男爵家の庶子が何もしてこないのよ。現メイド長もよ。ついでに、執事もね。


 初めて旦那様と出かけた時、例の男爵家の庶子もついてきたのよ。私は、前メイド長を連れてったけど。お互い世話をする専用の侍女ですからー。

 あの日は、パーティー用のお洋服を夫婦での依頼だったから、採寸やデザインを決めたのよ。緊急依頼だからその時にすべてを終わらせたの。時間がかかったんだけど、な~んにも文句言わずに待ってたのよ。おかしいわよね。まあ、自分のドレスもちゃっかり作ってたけど、地味なのよ。絶対、何かたくらんでるー。


 前メイド長と意見交換よ。ドレスで何かすんだろうと意見の一致がありました。ならと、お店に確認すると、とんでも無いことになってましたー。

「奥様のドレスを自分用にサイズのお直しをしています。で、自分用を奥様に送りつけるようです。」

 へー、面白いじゃん。パーティーには、例の男爵家の庶子は出席できないんだけどねー。どこに着ていくんだろー。ご期待に応えて、出席できるようにしましょうかねー。


「旦那様、実家から連絡がございまして、」

「子爵家ごときが当家になんの用だ。金の無心ならお断りだ。」

「実は、今度の夜会では、私のパートナーは公爵家のご嫡男様でした。こちらに嫁いでまいりましたので、ご辞退しなくともパートナーは自然解消と思っておりました。しかし、嫡男様は、それを失念していたらしいのです。現在、パートナー不在の為、約束通りパートナーになって欲しいとの申し出がありました。」

「だが、私はどうなる。」

「公爵家の要望ですし、ここは、あちらを立てましょう。旦那様は、真実の愛のお相手をパートナーになさったらいかがでしょうか。」

「しかし・・・。」

 少しは、貴族の常識があるようね。

「公爵家に問い合わせ致しましたら、手配は任せろと仰っていただきました。余程パートナーにお困りのようです。」


 ここで、例の男爵家の庶子が、ドアをバーン。ノックはありません。

「私、行きたい。いくー。」

「しかし、今からでは、ドレスが・・・。」

「大丈夫。間に合わせます。」

 ニタリ。笑ったよ。あの時の私のドレスを着ていくつもりだろうな。私もニタリだわ。

「当日は、公爵家にて準備するよう申し賜っております。なので、前日から公爵家に参ります。ドレスは、公爵家に届けるよう手配いたします。」

「公爵家の要望なら、それで大丈夫だろう。」

「やったー。王家主催のパーティーだ~。初めてー。うれしー。」

 バックは、ネックレスは、髪飾りは。一人で興奮のルツボ化してるよ。


 そうそう、私の装飾品は、公爵家にあるのよ。子爵家ごときが持つ品じゃあないからね。でも、一つだけ王家ゆかりの髪飾りを持ってきてるの。結婚祝いに第二王子にもらったやつ。それは、今回は、お留守番。この客間を守ってもらいま~す。たのしみ~。なにが?って、わかるでしょ。

 ニタニタ笑ってたみたいで、

「奥様、悪だくみの笑みです。控えてください。」

 注意されてしまった。


 やってきました夜会当日で~す。

 私は、前日から公爵家ではなく、王宮の私のお部屋にいま~す。

「奥様は、とんでもないご身分の方ですね。」

 前メイド長に驚かれました。想像はできても、実際を見ると違うんだろうね。で、私は王家のメイドさんたちに、ピッカピッカにみがかれ、in dress。

「エッ。」「はッ。」「ハァー。」「エー。」「まさか。」

 誰かが飛び出していったけど、どこいったのかなー。


 やってきました。公爵家のお母様。ついでに、お父様とお兄様までいるわ。姉二人はいないよ。王族じゃあないからね。

「何なんだ、このドレスは。」

 お父様、激おこですー。他の二人もだけど。お母様なんて、怒りで声も出せないみたい。

「でも~。婚家から送られてきたドレスです。嫁いだからには従がわないと……。」

 悲しそうに、うつむいてニタリ。私の意図を理解したのか

「だが、こんなドレスでは……。」

 ニタリ、ニタリ。みんな悪い顔です。

「こんなドレス、私が許しません。」

 お母様の鶴の一声です。一同、

「はい。マム。」

 焦ることなく、事前に用意したドレスに収まりました。


 エスコート役の兄がつぶやくのです。

「彼奴が、お前のエスコートをしたいってさ。」

 彼奴って隣国の第二王子よ。実は、結婚を承諾したのって、彼奴からの求婚から逃げるためでもあったので~す。

 我が国の王太子、私の従兄ね。彼が、隣国の王女と結婚するのよ。だから、うちからもお嫁さんをってなったらしいけど、王家に連なる若い女性って、私しかいないのよ。でも、私は、彼奴のこと、大っ嫌いな。逃げて、今よ。

 今夜は王女のお披露目の夜会なんだ。あいつは、王女の付き添い。兄だからね。

「お兄様、私は夫ある身です。お断りしてください。」

 あー。どうして、私の周りには真面な男がいないのよー。

 声に出していたらしい。

「お前が、真面じゃないからだろう。」

 隣で、私を貶める男がいるー。


 はい。パーティー会場で~す。

 貴族の皆様は全員入場済みです。後は、王族のみ。様子見をお願いしたら、旦那様は白い目で見られていて、誰も声もかけないそうです。私の正体バレはまだです。例の男爵家の庶子は浮かれてすぎて、旦那様も抑えるのに苦労しているらしいです。そして、例の男爵家の庶子の頭には、王家ゆかりの髪飾りが鎮座しているそうです。

 ある程度の貴族なら、王家ゆかりの品とわかるはずなんだけどねー。だから、例の男爵家の庶子の髪飾りを見て、ドン引きのご様子。それでも気が付かない二人。馬鹿よねー。


 さて、私たちのご入場よ。まず、お母様。

『王女様のおな~り。続いて、ご子息様~、ご令嬢さま~。並びに王女様のご夫君様~。ご入場です~。』

 結婚しても、王位継承権があり、王族を離れられないお母様を筆頭にお兄様、私よ。お父様は、公爵だけど、王族ではないし、一番最後なの。でも、お父様は、何も思ってないみたい。懐が広いわ。どっかの旦那様と違ってね。


 私の入場に二人して固まってるー。おもしろいー。地蔵みたいにピクリとも動かないわー。

 面白がってたら、国王一家も入場してたわ。


 国王陛下のスピーチです。

「今夜は、嬉しい報告がある。王太子と隣国の王女との婚姻が正式に決定した。王女は準備のため、居を我が国に移した。皆も喜んでくれ。」

 ワ~。パチパチ。ワ~。パチパチ。

「おめでとうございます。」

 ワ~。パチパチ。ワ~。パチパチ。

「それともう一つ、報告がある。余の唯一の姪である伯爵夫人が、本日、めでたく離婚が成立した。皆も喜んでくれ。」

 このご挨拶、おかしくね。離婚を喜べって?喜ばしいことだけどさぁ。で、離婚された元旦那様は、事情が全くわからず惚けてるよ。そりゃそうだ。私は壇上だし、国王の姪とは寝耳に水だろうし、頭が、真っ白より、こんがらかってんだろうな~。アッ、誰かが肩をたたいてる。やっと、目覚めたみたいだわー。


「お待ちください。私は離婚など承知しておりません。」

 勇気だしてんだろう~な。声が震えてんぞー。ガンバレ!!あっ、頑張ってくれたらだめなんだ。アハハハ。


 元旦那様。壇上に迫ってます。例の男爵家の庶子も後に続きます。

「そこの女。なぜ、私が従妹殿に結婚祝いに下賜した髪飾りをしている。それは王家ゆかりの物。それを、王家主催の夜会にしてくるなど、自分は、王家の者とたばかっているにと同意ぞ。」

 第二王子の怒号を合図に、ドタバタと兵に連行される例の男爵家の庶子。例の男爵家の庶子は、ただただ、引きずられて退場。

 元旦那様もかばえない状態です。だって、王族に質問されてるのよ。


「伯爵よ。そなたは誰をめとったかわかっているのか。なぜに妻をないがしろにした。未だに白い結婚らしいな。」

 おホホホ。こうなったら、私の出番はありませーん。皆さんにおまかせ~。

「伯爵には、真実の愛のお相手がいるそうだな。」

「しかし、離婚など……。」

「従妹殿がな。泣いていたぞ。靴底みたいなステーキや毒らしきもののはいったお茶。専属のメイドはいない。ドレスを作れば、真実の愛人に取られる。あげくは、王家ゆかりの髪飾りまでとられた。とな。」

「ひどい……。」「準王族に何てこと。」「ひどいわ。」「よく耐えたわ。」

 み~んな、私のみかたで~す。

「そなたから、贈られたドレスを見た。今日の為のドレスだ。とんでもない品物だった。前伯爵に請われて娘を嫁がせたが、大変な苦労を掛けてしまったようだ。離婚は、本日をもって受け入れられた。前伯爵には、早馬にて知らせてある。心しておけ。」

 ハイハイ。ご愁傷様ですねー。私は……。ここに居たら爆笑しそう。

 おい、どこぞの前メイド長、胸を貸せ。ハンカチを握りしめ、前メイド長にエスコートされ、バックヤードへGO。早く、お部屋に・・・


「ハア、ハア、ハア。」

 苦しかった。もう少しで、笑いだすところだったわ。大丈夫だったかなー。」

「大丈夫でございます。笑いが少し漏れてましたが、嗚咽にきこえたようです。『えー、あの方が、お泣きになるなんて。』と、おっしゃっていました。」

 へえー、あの方が。へえー。まあ、いいわ。これで私の役割は終わり。後は、年寄りに任せましょ。あぁ、若いのもいたわ。王太子、第二王子、お兄様よ。ガンバレー。旗ふって、応援しましょ。


 で、現在、私は馬車のなかでーす。どこぞの前メイド長も一緒に揺られています。あと、一人いるのよ。

「アハハハ。痛快だったな。白々しい劇。」

 私の嫌いな、彼奴です。いつの間にか、私の婚約者になりやがってた。

 我が親族ながら、悪だくみが巧みなようで、フン。


 白々しい劇は、もちろん夜会のことね。前日に親族一同に詰め寄り白状させました。私は、自分で導き出した答えの正解に満足して大喜びよ。半分だけの正解なんて。だ~れも教えてくれなかった。あんまりだー。


「そう、むくれるな。うちで作ろうや、日本街。」

「ハアーーー。」

「そういうことだ。」

 と、言うことは、私は猫の被り物を被んなくてOK。

「OKだぞ。」

 声に出てた。

「ねえ、あんたさー。王位は絶対に継がないよね。」

「やなこった。あんなメンドイもん。我が婚約者殿もだろ。」

 もちろん、me tooです。


「でも、でも納得でけん。」

「アハハハ。あの金鉱山か。」

 結局、私への慰謝料やら賠償金やらで、鉱山は全て私名義。しかし、私は隣国へ嫁入り、管理などできない。なのでー、国の管理下の元、公爵家が差配をすることに。そして、私が生きている間は、利益の一部が私へ還元。一部だよ、一部。私が死んだら国の物になちゃうんだよ。りふじんだー。

 私の持参金はー。全て、鉱山へと消えていきました。ガックリだよ。別の持参金はもらったけどさー。


 私の結婚は、ダミー。離婚なんてしていません。だって、結婚自体がないんだから。

 王家、公爵家の自作自演。こんなこと、公表できません。だからさ。私は、さっさと嫁に行け。と追い出されたわけだ。

 私の人生だー。相談くらいしろー。叫んでも叫んでも相手にされず、公爵家のお母様でさえ、

「あなただったら、どんな状況でも対応できるでしょう。それに、あなたと隣国の王子は、同じ匂いがするわよ。」

 誰か、慰めろー。


 伯爵領は、鉱山は無くなったけど、元々無かったものだから収支に影響なし。でも、責任を取って、子爵家に降格。

 元じゃあなくて、架空の旦那様は、例の男爵家の庶子と共に平民落ちで国外追放。王家をたばかったわりに処分が軽いのは、私の慶事の恩赦なんだって。あの二人、国を出た途端・・・。ブルル。寒気がしたわ。そんなことにならないと信じてるわ。誰を?誰かなあ……。

 次代は、なんと決まってました。親戚に優秀なのがいたから、前々から粉かけて教育してたんだとか。

 それにね。前伯爵はグルではなかったんだけど、『王家と公爵家がなんかたくらんでる~』計画に便乗して、前伯爵の思うとおりに事を運ぼうとしたらしいわ。だから、息子たちに私の素性を教えなかったんだと。


 あの鉱山は、伯爵家には規模が大きすぎて荷がすぎる。けど、欲にくらんだ息子が暴走するのは必至。ここは、静観して、息子の自爆を待って、自分は、領地でスローライフを目指したんだと。


 ただ、王家に献上すればいいことだったのにー。


「王家も公爵家も伯爵家も、色々思惑があるんだよ。お前のように、単純にいかないのさ。」

 誰よ。私を単純呼ばわりしたの。でてこいやー。


 どいつもこいつも、狸と狐よ。狸と狐の化かし合いに割を食ったのは私だけ。

 姉二人なんて、完全に他人事よ。

「王家の血を引いてるなんて大変ねー。」

「私たち、お父様の側室の子で良かったわー。」

 だとよ。仲は良いよ。その時、散々、狸と狐のおやじたちの愚痴を言いまくったからね。ちょっと、スッキリしたんだ。


 許せないのは、従兄二人とお兄様よ。今では従兄改めお義兄様ね。嫁に行くから王様の養女になったんだってさ。一体何回敬称がかわるのかなー。中身はかわんないのにねー。その三人の言よ。

「大変だったな。でも、面白かっただろう。楽しんだか。」

 完全に性格を把握されてました。さらに、さらに、さらによ。

「お前といい勝負するのは隣国の王子だ。白い結婚でなくとも、お前が良いらしいぞ。」

「アハハハ。楽に生きたいだろう。彼奴なら素が出せるぞ。」

 三人三様の花向けの言葉をいただきました。余計なお世話だー。


 私の嫌いな男が隣に座っている。白い結婚じゃあなくても日本の転生者なら許せるだろうよ。でも、早くたすけろよ。貞操の危機はなかったけどさ。

その男が、

「末永くよろしくな。」

 すでに、肝は座っているわよ。これからは、遠慮なんてしないよーだ。

「私の後始末、よろしくー。」

















読んで頂いてありがとうございます。

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