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白雪姫外伝~毒リンゴ爆誕の章~

作者: 三葉倫太郎

登場人物


ナレーター

母「鏡よ鏡、この世で最も美しい者はだあれ?」


鏡「それは白雪姫でございます」


母「……ん? 鏡よ鏡、もう一度聞くわね、この世で最も美しい者は誰かしら?」


鏡「白雪姫でございま」


母「鏡よ鏡ファイナルアンサーよ!この世で最も美しい者は」


鏡「白雪姫でございます!」


母「クソガキャァ!!ブッ殺してやるわああああ!!」


ナ「この物語は、誰しもが知る白雪姫の物語…の、ちょっとした裏側を描いた、お妃様の頑張り物語です」


ゴソゴソ


鏡「あの、お妃様…突然何を始められたのですか」


母「あ゛? 決まっとるやろ、調子こいたガキこれからシメたんねん。大人舐めたらどうなるかその身でよーくお勉強させなアカンわな……ねえ、鏡よ鏡、あなたもそう思うわよねぇ?(圧)」


鏡「え、まあ…あなたの鏡なんで止めませんけど…え、拳で行くつもりですか?」


母「当り前じゃない、なに悪い?ブン殴って顔面崩して死んでもらわなきゃ気が済まないわ」


鏡「あ、それは止めます、おやめくださいお妃様。そんなことしたらすぐ城の騎士達にバレますって、一旦冷静になってください」


母「じゃかあしい!!牢屋にブチ込まれるだけで世界一の美女になれるなら安いもんよ。とにかく自分でやらなきゃ気が済まないわ、有象無象のフナムシ共に任せられるもんじゃないのよ!」


鏡「いや、女の子を撲殺なんて死刑ですよ多分。世界一になった瞬間に死んでも嫌でしょう?お妃様、お願いですから両手にはめたメリケン置いてくださいよぉ」


母「チッ…じゃあ何よ、アンタなら完全犯罪の方法まで教えてくれるとでも言うの?」


鏡「もちろんでございます」


母「はい!? 何アンタそんなことまで知ってんの!? んもう、それならそうと早く言いなさいよ! 鏡よ鏡答えちゃって! ほら、完全犯罪の方法って何よ、何なの!?」


鏡「白雪姫に毒を盛りましょう。…いや何ですかその不服そうな顔は。溜息やめてください、しょうがないでしょう、こういう物語なんですから。少なくとも殴るより遥にマシですって」


母「チッ…まあでも正論ね、パッとしないけどそれが一番バレにくいか。で、毒どこにあんのよ?」


鏡「私をこの城の薬品庫に繋げました。さ、鏡の中に手をお入れください。ドラ○もんみたいに道具出せますから」


母「何これ超便利じゃない!アンタ何でこんな能力ある事言わなかったのよ!!」


鏡「まあまあそこは置いといて。で、そう、それとそれ出してもらって。はいOKです。今出したやつ使って作っていきましょう」


母「え、作るの? 私が? 出来てるやつないの?」


鏡「普通ないですよそんなもん。ほら、作り方教えますから。えー、まずはその緑の液体を小さじ2と赤い錠剤を4粒潰して混ぜてしっかり攪拌して…」


母「えーと、あー、これをこうし、ちょ、説明早いわ。で、何だっけえー…これがこう……ねえ、これ私がやらなきゃダメ?私これでも超エライ人なんですけど」


鏡「こんなこと誰に任せるんですか。完全犯罪が準備の段階でバレますよ。ほら、口じゃなくて手動かしてください」


母「んー、いやもうこれでいいんじゃないかしら?見た目結構毒々しいわよ?味だってほら、ペロッと(咀嚼音)うんうんこれは…青酸カリ!」バタッ


鏡「何やってんですかアンタ!!」


母「うげえええ…ゲホゲホッ…し、しまった、1回やってみたくて…ウプッ」


鏡「バカ!実験中にふざけるのは絶対ダメだって理科で習わなかったんですか!お妃様のバカ!アホ!低学歴!」


母「鏡よ(ガシッ)、アンタをトイレに繋げなさ…オロロロロロ!!」


鏡「ぎええええええええやめてくれえええええええ!!!!」


母「ハア…ハア…うっぷ、あ゛ーしんど」


鏡「ほんま最悪ですわ。白雪姫がいなくても今のあなたが世界一になることはありませんよ」


母「じゃかあしい! 私の鏡ならゲロまみれでも世界一美しいって言いなさい。あーもう!これも全部白雪姫のせいだわ!そうよ、アイツさえ消せば全部解決なのよ!」


鏡「……」


母「文句あんの?」


鏡「いえ…続きやりましょ。次そこの試験管に入った薬品使いましょう」


母「うえぇ何この変な色、てかクサッ!この距離からでも臭うわ!こんなんこっそり盛ろうなんて食べる前にバレるわよ」


鏡「気を付けてくださいね、薬品には刺激臭を発するものもありますので、どんな薬品であっても直接鼻を近付けて嗅ぐのはダメですからね。絶対ですよ?これも理科で習ってるはずですからね」


母「何よそれ、臭いだけで害があるってこと?いくら何でもそれは大袈裟だわ。確かに臭いけどにおいごときに負ける体じゃ…スンスン(においをかぐ)エンッ!!!」


鏡「アンタって人は!!」


母「ハア…ハア…大丈夫、鼻血が出ただけよ…鏡よ鏡、ティッシュ出して」


鏡「そこの化粧台にあるでしょう。まったくあなた説明書読まないタイプですね?」


母「口うるさい鏡だねえ。そりゃそうよ、身の回りのことなんて全部誰かがやってくれるんですもの。説明書が必要になることなんて今までなかったわ」


鏡「お妃様…確かにやったことのないことをやるというのは大変です。疲れもするし、上手くいかずにイライラすることもあります」


母「何よ、鏡の分際で私に説教垂れる気?」


鏡「そのつもりはありません。ですがわかっていただきたいのです。私はあなたの味方だ、あなたの望みが叶うことを私も望んでおります。だからこそ一緒に、あなたと成し遂げたいのです。まあ、とても褒められた内容ではございませんが…ここらで一度、何かを頑張ったという経験をしてみるのも、良いと思いませんか?」


母「な、何よ…鏡のくせに」


鏡「何かに打ち込む姿というものは誰でも美しいものです。それこそ、白雪姫よりもね。なので今だけは、僭越ながら私の指示に従っていただけないでしょうか?」


母「…し、しょうがないわね、わかったわよ。次はちゃんと聞くから、その…もう1回教えて」


鏡「仰せのままに。ではそこの白い薬と黄色い粉末を混ぜて、それから、それとこれと―――」


(楽しく料理)


母「えーと、ここはこうかしら?簡単そうで意外と難しいわね」


鏡「お上手です。そのままお鍋に入れてください」


母「薬を盛るとしたら自然な方法がいいわね…今が旬のリンゴに混ぜちゃうなんてどうかしら?」


鏡「すばらしいお考えです、流石はお妃様」


母「見て!薬が透明になったわ!これならもうバレないんじゃない?」


鏡「もう少しです。後はにおいさえ消してしまえば完成ですよ」


母「うふふ、自分で何かをするのって…こんなに楽しかったのね。あなたのおかげで、大事なことを気付かせてもらえたわ」


鏡「お妃様…」


母「ね、ねえ…あんた言ったわよね?何かに打ち込む姿っていうのは、誰でも美しいって。…鏡よ鏡、今の私は…本当に白雪姫よりも美しいかしら…?」


鏡「お妃様……はい、今のあなたは本当にお美しゅうございます…白雪姫よりも」


母「そ、そう?そうぉ~?あはは…当然わかりきったことだけど、そう改まって言われると何だか恥ずかしいわね!…えへへ、次は毒じゃなくて、ちゃんとお料理とか始めてみようかしら」


鏡「おお、それは素晴らしい!私は魔法の鏡。どんなレシピだろうと何でもお答えできますよ」


母「うふふ…そうね、頼りにさせてもらうわ。さて、そうと決まれば毒リンゴごとき、ちゃちゃっと片付けるわよ!」


ナ「そうして、途中何度か失敗を挟みつつも、遂にお妃様は毒リンゴを完成させるのでした」


母「できたわ!どこからどう見ても普通のリンゴ!すなわちパーフェクト毒リンゴよ!!」


鏡「おめでとうございます、流石はお妃様です。後は、それを白雪姫に…」


母「あ…そ、そうね…これで白雪姫を始末するんだったわね…楽しくなりすぎてつい忘れてたわ」


鏡「お妃様…本当にやるのですか?」


母「…ねえ、さっき言ってくれたわよね?私のこと、白雪姫よりも美しいって」


鏡「はい、一生懸命に努力されるあなたのお姿は、白雪姫よりも美しく、どんな宝石よりも輝いて映りました」


母「そうね…そうよ、私はもう十分美しいわけだわ……つまり」


鏡「つまり?」


母「これで白雪姫が消えればまさに完全無欠!!誰も私に並ぶことはない!私は完璧で究極の王妃様として愚民共の頂点に君臨し続けるのよおおお!!オーッホッホッホッホッホ!!!」


鏡「あーもうダメだこりゃ。そうだ、この人こういう人だったわ。一瞬でも期待した自分がバカだった」


母「ぐふふふふ…白雪姫ぇ、ションベン臭えガキの分際でしゃしゃりおってからに…私が直々に最後の晩餐をプレゼントしてやるわぁ…首を洗って、いや、お口を洗って待ってなさぁい。私お手製の毒リンゴをねぇ…(リンゴを齧る音) あ、やべ…ヴォォエ、ウプッ、オロロロロロ!!」


鏡「だから何で食うんですかアンタ!!」


ナ「こうして、お妃様は毒リンゴを作り直した後、今度こそ白雪姫の元に向かい、皆さん知っての通りの結末を迎えるのでした」

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