【便所百合】
【主人公】17歳・女性・高校生
〝キーンコーンカーンコーン〟
学校の休み時間、女子高生は友だちと一緒にトイレへ行く……。
不思議な習慣だと思われがちだが、昭和の時代から日常的に行われていることなので特に不思議だと思ったことはない。
この日……アタシはいつものように「トイレ付き合ってー!」と友だちを何の気なしに誘い、一緒にトイレへ向かった。
そして今、アタシの頭の中はとても混乱している。なぜなら普通こういう場合、誘った友だちとはトイレの入り口まで一緒……だと思うのだが……
「……うふっ♪ やっと二人きりだね」
――何でコイツは個室の中まで一緒に入ってきたんだ!?
※※※※※※※
アタシの名前は『笠部 蘭花』、女子高に通う二年生だ。
一方、強引に個室へ侵入してきたこの変な女は『狩野 小百合』、同じクラスの友人だ。アタシと小百合は一年生のときから友だち関係になった。
「おまっ、何で入ってきたんだよ!?」
コイツは一般常識のあるヤツだと思っていたがどうやら思い違いのようだ。そうでなければこんな狭い個室に入ってくるワケがない!
「だってぇ~、蘭花がトイレ付き合ってって言ったんじゃない……うふっ」
小百合はアタシの顔を見ながらニコッと微笑んでいる。アタシたちは向かい合った状態だ。個室に二人でいる時点でおかしいのに、向かい合っていたら恥ずかしい姿を見られちゃうじゃん! どういうつもりだ!?
「いや、オマエがいたら出るもんも出ないんだよ……早く出ていけ」
「え~、何で~!? 気にしないで出しちゃっていいのよ~」
出せるか!! 同性だろうが親友だろうがそれはムリ! 何考えているんだよコイツ……尿意は限界に近いし休み時間は短いんだから、早いとこトイレ済ませて教室に戻りたいんだけどなぁ……。
「オマエが目の前にいたら恥ずかしいだろうが!」
「何で? 好きな人の前なら平気でしょ?」
「好きな人の前ならって……どういう意味だよ!」
「だって、私も……蘭花のことが好きなのよ!」
〝ドキッ!〟
――はぁ? 何でいきなり告ってきた? っていうか……
「おい、私『も』って……アタシ、オマエに告ったっけ?」
「だって……さっき私に『付き合って』って言ったじゃない!」
それは「トイレに行く行為」に対して「付き合って」という意味に決まってんだろうが! どこの世界にトイレ行くとき交際を申し込むヤツがいるんだよ!?
「えっ、じゃあ蘭花は私のことが嫌いなの? 私のことが好きじゃないの?」
――う゛っ!?
そっ、それは……
メチャクチャ好きだよ!! しかも……
――『性的な意味』でだよっ!!
――アタシは……狩野 小百合のことが大好きだ。
※※※※※※※
アタシは見た目が男っぽく、女子高の中ではモテまくり……数えきれないほど告られてきた。でも初めのころはいわゆる【百合】とか【ガールズラブ】というモノには興味がなく、告白はすべて断っていた。
だが一年生のある日、別のクラスにいた狩野 小百合を見かけ、その美貌にアタシの中の性的な欲求が目覚めてしまった……一目惚れだ。
小百合は見た目が上品なお嬢さまといった感じで、モデルにでもなればいいと思えるくらいの美少女だ。アタシには無いモノを全て兼ね備えている。アタシは少しずつ小百合に接近して、彼女と友だちになった。
二年の春の修学旅行……小百合と同じクラスになったアタシは、旅館の大浴場で初めて彼女の裸を見てしまった。透き通るような白い肌、そして気品あるプロポーション……アタシは思わず「大浴場で大欲情」などとくだらないダジャレを考えて萌えた。だが尊すぎてそれ以上、小百合の裸体を直視することはできなかった。
もうすぐ夏休み。小百合にも「そういう気」があると他の女子から聞かされたアタシは、休み前に小百合に告白しようと考えた。
夏休みには彼女を家に誘い、冷房を効かせた私の部屋のベッドで……夏の暑さとは違う汗を一緒に掻こう! と秘かに計画をしていた。
そして今……小百合から突然の告白。アタシたちは両想いだったのだが……
――告る場所……ココじゃねぇだろ!?
確かにアタシはちょっとガサツなとこがあって、ムードというか雰囲気を醸し出す場所が苦手なタイプだが……さすがに「トイレで告白」は無いわ! もう少しまともなシチュエーションで告られたかったわ!
それに……
「いや、いくら好きだからってトイレの個室まで一緒っておかしくね?」
とアタシが聞くと小百合はとんでもないことを言いだした。
「えぇ~、だってぇ私……好きな女がおしっこするとこ見るのが趣味なのよ」
――シンプルに『ド変態』じゃねーか!!
コイツ、特殊性癖の持ち主だったのか!?
「だからねぇ私、蘭花がおしっこするところ見たいの! さぁ、いっぱい中に出しちゃっていいのよ。中出しオッケーよ!」
「便器の中に排尿する行為に対してそのような表現は使わん! てゆーか外に出したら大惨事だし」
「外に出すのも面白そう!」
「面白くねーよ! オマエがそこにいる間は絶対しねーからな」
「えぇ~、でも蘭花~」
小百合はニコッと微笑みながら
「そう言ってる割に準備万端じゃな~い!」
そう、このときアタシはパンツを下ろし洋式トイレの便座に腰掛けていた。一方の小百合はアタシの前方にしゃがみ込み、アタシの股間を凝視していたのだ。
「それはな……オマエに放尿姿を見られる恥ずかしさと、ここで耐えきれずスカートとパンツを濡らした姿をクラス全員に見られたときの恥ずかしさを比較して、リスクの小さい方を選んだんだよ」
だからといって小百合に放尿姿を見せたいワケじゃない。アタシは両膝をくっつけたままスカートで股間を隠していた。
「えっ、そのままおしっこするつもり? やめた方がいいわよ」
「だったらオマエが目隠しするかここから出ていけ」
「ムダよ~! だって私、蘭花のおしっこの音でもイケるもん!」
――うわっ! マジでやべーやつだぞコイツ!!
「それに脚閉じたまましちゃうと太ももにかかっちゃうわよ」
「えっ、マジか!?」
「でも大丈夫! そしたら私がキレイに拭いてあげる♪」
――全然大丈夫じゃねーよ!
「もぉ! 早く脚開いておしっこ見せて!」
ついに小百合はアタシの膝に手をかけて広げる実力行使に出てきた。アタシは必死に抵抗しながら
「見せるか! ってか、そんなに見たけりゃ自分の見ればいいだろーが! 同じ女なんだし……」
その言葉を聞いた小百合は手を止め真顔でこう言った。
「あらそれは違うわよ蘭花」
「えっ?」
「じゃあ聞くけど……女の子と手を繋ぎたいからって、あなたは自分の手を握れば納得するの? 女の子の髪を触りたいからってあなたは自分の髪を触るの? しないわよねぇ~!」
「……うう゛っ」
アタシは……謎の理論で小百合に論破されてしまった自分を情けなく感じた。
「さぁ! 時間もないし……それに蘭花だって我慢の限界じゃなくて?」
くっそぉ~確かに限界だ! 苦痛で顔が歪んでいくのがわかる。
「でも、おしっこ我慢している蘭花の顔も……ス・テ・キ!」
オマエーッ! 性的に好きだけど今はキ・ラ・イ!
「だんだん顔が汗ばんできたよぉ~そろそろガマ…………ひぃいいいいっ!!」
突然、小百合が後ずさりしてトイレのドアに背中をぶつけた。さっきまでドS感丸出しだった小百合の表情は恐怖に慄いて真っ青になっている。
「えっ? どうしたんだよ」
「いっいいい今、便器の側面をゴキ●リが這い上がってきて……便座のすき間からなっ……中に入った……」
「えぇええええっ!?」
驚いたアタシは便器の中にゴ●ブリがいないか、思わず脚を広げて確認しようとした。と、そのとき……
――あっ!
〝ジョボジョボジョボ……〟
一瞬、膀胱を抑える力が緩んでしまったアタシの股間から、溜まりに溜まっていた液体が一気に溢れ出してしまった。そして……
「はぁああああああああっ……んふっ」
まるでショーウィンドウから宝石を見るような表情で、小百合はアタシの股間を凝視していた。うわぁ、最悪だ!
「オッ、オマエまさか●キブリって……」
「もっちろぉ~ん……うっそ♪」
――やられたぁああああああああっ! 何たる屈辱!
「じゃあ今度は私が蘭花におしっこ見せる番ね! 時間ないから早く替わって!」
――えっ、なっ何言い出すんだコイツ!?
小百合はアタシを立たせると、今度は自分が便座に腰掛け見せつけるように放尿し始めた。小百合がパンツを下ろし下腹部を見せた瞬間ドキッとしたが……
――コレの何がおもしれーんだよっ!?
もはや小百合は理解不能だ……でも顔と身体は好みなんだよなぁ。
小百合が放尿を済ませた後、アタシは小百合に聞いた。
「なぁ、一応確認だが……アタシたち恋人ってことでいいんだよな?」
正直、一抹の不安を覚えるが。
「うん! あっ、そうだ蘭花! 今度デートしない?」
「えっ、まぁいいけど……どこへ?」
「和式デートよ!」
「和式? 日本庭園とかお茶会とかそういう所か?」
「ううん、和式トイレよ」
「はぁ? 意味わかんないんだけど……」
「だってぇ、学校のトイレって洋式しかないでしょ!? だからねぇ、和式トイレのある場所に行って二人でトイレに入るの! でねぇ、私の目の前でぇ~蘭花がお尻をぷるんって出してぇ~お股をくぱぁって開いてぇ~、でもっておしっこをちょろちょろって……」
「行かねぇし絶対しねぇよ!!」
――完全に頭おかしいわコイツ!
普通の精神ならもうコイツとは付き合わない方がいい……と考えるのが正解なのだろう。だが小百合はアタシ好みの美少女でスタイルもいい!
そして相思相愛だとわかった今……やっぱり一度くらい抱いてみたい! そうすればコイツの性的嗜好も変わるかも? アタシは小百合に聞いてみた。
「なぁ……恋人だったらさ……夏休み、家に泊まりに来ねーか? でさぁ、小百合と一緒にあっ……アレを……そっその……セッ……セック……」
「あっ、それはダメよ」
「……えっ?」
「私と蘭花の恋人関係はこのトイレの中だけよ! トイレから出たらあなたとは今まで通り友だちとしての付き合いなのよ」
さっきまで恍惚の表情だった小百合が急に真顔になり冷静に答えた。
「はぁああああっ!? 何で? さっき好きだって言ったじゃん!?」
「だって蘭花、私に言ったわよね? 『トイレ付き合ってー!』って。だから蘭花とは『トイレ限定でのお付き合い』をするのよ! トイレの中では恋人同士だからキスでも何でもするわ! でもトイレ以外ではそういうことは一切ナシよ!」
「…………」
トイレを済ませた小百合はタンクのレバーを回した。
アタシは小百合が好きだ。小百合もアタシのことが好きだ。だけど……
〝ジャアアアアッ!〟
コイツとの関係……一度水に流した方がいいかもしれない。
最後までお読みいただきありがとうございました。
よろしければ感想などお聞かせください……作品の内容が内容だけに書きにくいかと思われますが(笑)。