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コンタクト

その集落には、広場があった。

大きめの洞窟を囲むように、組んだ棒に枝葉を積み重ねただけの簡素な小屋が建ち並び、もう少しで住居建造にたどり着けそうな雰囲気だ。

言葉は未発達だが、モノを表す単語や、名前、簡単な動詞くらいはある感じ。

ママたちの集落に近いので、それもまたあちらから伝わった文化なのかもしれない。

だとすればこちらへ移住した者もいるかもしれないと警戒はしていたが、幸い、ワタシを知る人はいないようで助かった。


広場では、集団で獲物の解体や収穫物の処理をしていた。

ワタシが近づいて行くと一斉にこちらを見やったが、部外者には慣れた様子で、敵意は感じられない。


ワタシはとりあえず土下座をキメた。

頭を下げる動作は、かつての世界でも本能的に万国共通であった。

さらに両手を前に投げ出す動作で、武器の放棄と害意の無さも伝わると見た。

土下座こそ最強のコミュニケーションツールと言えよう。

むろん、通じない場合もあるだろうけど……。

とりあえず、ここでは伝わったので、結果オーライだ。


まず、篭らしきものを編んでいた男が興味深げに近寄って来て、ワタシの荷物を指差した。

よし、釣れた。

ワタシは早速座り込み、背負っていた袋をひっくり返して見せた。


持ってきたのは、比較的素朴な袋類だ。

最初から飛ばすのはマズいと踏んで、やや粗い造りのドンゴロスの口元に紐をくぐらせただけの巾着だけにしておいたのだ。


人々が集まってきて、歓声を上げながら手にとり始めたのを見計らって、「フクロ」と言って指し示した。


「フクロ」


「オー! フクロ!」


なかなか好評のようだ。

かつての集落で、何度か交易の様子を見知っていたので、さほど不安はなかったが、思った以上に順調だ。

意図はすぐに伝わって、数人が、対価としたい品物を示して誰何してきた。


今回はお試し交易のつもりだったので特に目的の物はなかったのだが、せっかくなので、捌いたばかりの獣の肉と脂、見たことのない果実、それと大きな貝殻を引き換えにもらう事にした。

それに、最初から安売りしてしまうのは得策ではないし。


フクロを手にいれた者達は早速ためつすがめつし始めていた。

特に篭編み職人らしき男は熱心で、早速編み目を追究していた。

だが、ちょっとやそっとで解析はできまい。

何せ今のレベルはまだ、固い蔓草を編むのがせいぜいで、男手でぐいぐい引っ張る力業。

柔らかい撚紐を複雑に編み込む棒針編みを、そうそう真似できるはずはない。

きっと彼は早晩、編み目を確かめようとして……引っ張ると全部ほどけてしまという衝撃の事実を身をもって体験してしまうに違いない。


ただ、細い紐を撚ることと、撚紐を編んで形成するという概念はすぐに理解するだろう。

単純なドンゴロスくらいは、次に来る頃には自作しているかもしれない。



初交易は、なかなかの成功裏に終わった。

オマケとして毛皮を何枚かもらえたので、また色々と作ってみれそうだ。


人目につかない場所に隠しておいた靴を回収し、ワタシは意気揚々と別荘(?)に引き上げていった。


何せ、肉だ。

肉なんて、どれだけぶりだろう。



今夜は焼き肉だ!




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