2回目 (恋愛貧乏録)
それでも、王太子ダメンズの婚約者であるために、かろうじて私の身分は保たれていた。
だが、叔父一家の欲望は、私から家門を奪い取っただけでは充たされなかったらしい。
とりわけ娘のカンツーシャは、私が王太子妃に準じる身分であるがために、王家から引き続き侍女としての出仕を求められた事が気に食わなかったようだった。
だが、侍女として私の側に身を置いていれば、自然、王太子の目に触れる機会は多々生じる。
初めは、お茶を淹れる時のうっかり接触や、お辞儀でよろめいてもたれ掛かってしまったりという、ちょっとした出来事がやけに頻繁に起きていた。
王太子相手に自分の侍女がそんな失態を犯せば、私の立場上、当然叱責せねばならないワケだが、その度に声を震わせ、涙ぐみつつ、上目遣いにあざとく詫びる。
そんなカンツーシャの華やかかつ艶やかな美貌と、無教養ゆえのあどけない拙さ、無垢を装いつつも積極的で大胆な行動力……、宮廷育ちの箱入り息子であるダメンズが、そんな異質な魅力に抗えるはずはなかった。
いつしかダメンズは、公然とカンツーシャを庇うようになり、私の叱責を非難するようになった。
さらに、そこかしこで彼女を見かけては、慰め、散策に誘い、お茶の時間に招き、部屋に呼び……、いつの間にやら私以上にダメンズと二人で過ごす時間が増えていたのだ。
正直、部屋付きの専属侍女がそんなにしばしば、偶然一人で王太子と出くわす機会なんてないはずだった。
ちょっと考えれば、その不自然さがわからないはずはない。
私から見れば、どっちもどっちで、ただの姦通者である。
だが、恋は盲目。
私に虐げられ、可哀想で、か弱くて、しかし可憐な娘として脳味噌にインプットされたカンツーシャを疑うほどの知性の余力は、ダメンズにはなかった。
いつしか私は王太子の恋人をいじめる悪役令嬢のテンプレと化し、破滅街道まっしぐら。
そうしてついに、今日の婚約破棄と相成ったのだった。




