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来たりし春の都街  作者: 橘樹 啓人
第一章 葵の契約
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プロローグ①

 京都駅構内は、複雑怪奇な構造をしている。いたるところから、無機質な鉛色のエスカレーターが長い舌のように垂れ下がり、訪れる沢山の人々を、一時に吸い上げているようだ。一度食われてしまうと、容易には抜け出せないような気さえする。


 JR中央改札口を抜けて外に出ると、正面には京都タワーが聳え立っている。まるで巨大な蝋燭が建物から突き出ているようで、初めて訪れた多くの観光客が、目を見張るだろう。


 広々としたエントランスの、正面ゲートに向かって両側にエスカレーターがある。左側は、近鉄線や新幹線の乗り場へ移動する際によく利用される。そして右側のそれに乗ると、京都駅ビルの天井の骨組みがゆっくりと近づいてくる。二階、三階……と過ぎていくと、思い出したように、四階の広場で降りる。


 ライトアップされた巨大な階段が、色とりどりの絵を描き、その真下を行き交う数多の観光客によって賑わしている。


 ――通称、「大階段」と呼ばれる場所である。


 毎年、クリスマスの季節になると、大階段の中央に巨大なクリスマスツリーが顕現する。そこでは、恋人同士が手を取り合い、子供が広場を無邪気に駆け回り、家族の仲睦まじい様子を観察したりできる。


 誰もが、様々な手段で、多種多様な形象の幸せを構築していく。私は、それを見るのが毎年の楽しみである。学生時代、カラフルな色彩に染まった大階段に足を運び、クリスマスツリーの下に立った時、そんな情景を目にして、とても微笑ましく感じたものだ。


 実は、この場所を是非とも自分の作品の中に登場させたいという、かねてよりの願望があった。単純に、京都という広大無辺の土地において、とりわけお気に入りの場所だったからだ。他にこれといった理由もない。これまでにも書こうと思えば書けたものの、どうにも今日までその機会を失っていたように思う。


 けれど、今回、思い切って書き出そうと考えた次第である。これは、そのための作品だと言っても過言ではない。


 京都が好きで、京都という地名やそこに関聯かんれんする事柄を作品に落とし込むためなら、現地に赴くのが定石である。取材に対する労力をも惜しまないつもりだ。


 私の、「京都への愛」をこの作品から感じ取ってみてほしい、と願ってやまないのである。

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