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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

むかしばなしシリーズ

【ショートショート】世界のにっぽんふかし話2

作者: 佐崎 一路
掲載日:2022/01/31

【鶴の恩返し2】


 おじいさんが罠にかかった鶴を助けた夕刻、美しい娘がやってきて、

「道に迷って難渋しております。土間の隅で構いませんのでどうか一晩泊めてください」

 そう懇願されたおじいさんとおばあさんは、快く娘を家に泊めてあげた。

 翌朝になって、娘が行く当てもないと聞いたふたりは、それならずっと居るといいと言って、娘を家族として迎え入れたのだった。

 娘が家になじんだ頃、

「ぜひ恩返しをしたいので、奥の部屋にある(はた)織り機を使いたいのですが、私が機を織っている間、絶対に部屋を覗かないでください」

 そう告げられたふたりは、

「わかった絶対に覗かない」

 と、約束をしてその晩は囲炉裏のある居間にふたり揃って眠ることにした。

 奥の部屋にこもった娘は一晩中、ガタガタと機を織っていたいたようだが、おじいさんとおばあさんのふたりは約束通り部屋を覗かずに、いつしか寝入るのだった。


 そして翌朝――。

 目覚めたふたりが目にしたのは、金目の物や貴重品などがすっかり盗まれ、空っぽになった我が家と、いつの間にか姿を消した娘である。

 呆然としていたふたりだが、ハッと気が付いたおじいさんが地団太を踏んで言い放った。


「しまった、サギだったのかっ!!」


****************


【一寸法師2】


 針の刀で鬼を退治した一寸法師に向かって、姫は鬼が落としていった打ち出の小槌を振りました。

「大きくなあれ」

 その途端、一寸法師の体はどんどんと大きくなり、普通の人間と同じ背丈になったのです。

「大きくなあれ」

「大きくなあれ」

「大きくなあれ」

 さらに何度も打ち出の小槌を振るお姫様に、大きくなった勢いで服が破れて素っ裸になった一寸法師が、おずおずと声をかけました。

「あの、姫様……?」

 羞恥に赤くなっている一寸法師の呼びかけにも答えず、姫様は怪訝そうな表情で首を捻ります。

「おかしいわね、どうしてココのサイズだけ一寸法師のままなのかしら?」


****************


【飯食わぬ女房】


 あるところにケチな男がいました。

「結婚したら女房に飯を食わせなければならないなんてもったいない。どこかに飯を食わない女はいないもんか」

 もちろんそんな女などいるはずもなく、男のもとに嫁いで来ようという女はいませんでした。

 そんなある日。

「私ならご飯を食べませんから、ぜひ女房にしてください」

「本当か!? 本当に飯を食わんのだな? 食ったらその場で離縁するぞ!」

「ええ、構いません」

「よし、お前を女房にする!」

 トントン拍子に話は進んで、男は女を女房にしました。

 形ばかりの祝言をあげたところで、女房になった女はにこやかに男に告げます。


「私はご飯はいりませんが、筋肉を増量させるために朝食はゆで卵三個とブロッコリー一個、プロテインを一合枡でいただきます。それと昼食は鶏むね肉と牛乳――当然桝で――そして夕食は雑穀のおにぎりと……」

「ちょっと待て、ちょっと待て! 約束が違う!! お前とは離縁だ!!!」

 血相を変えた男の宣言に、女房は不思議そうに首を傾げました。

「??? 私は『ご飯は食べない』とキチンと言いましたよ。ああ、安心してください。訓練もかねて家の事はちゃんとやりますから」


 そう言って近くにあった大人の太腿ほどもある薪を、素手に二つに引きちぎり、

「ふん! ――やーっ!!」

 一抱えほどもある岩を軽々と掴んで、十間(約18m)ほど離れた藪の中と放り投げた。

 その途端、頭にコブを作った身の丈六丈(約1.8m)ほどもあるイノシシが、怒り狂いながら二人目掛けて藪の中から飛び出してくる。

「――フゴーーーッ!!」

「わわわっ、大イノシシだ!」


 泡を食って腰を抜かす旦那を無視して、ニヤリと獲物を前にした猛獣のような笑みを浮かべる女房。

「くくくく、肉の塊が向こうから来てくれたわ」

 そのまま真正面からイノシシの突進を受け止め、

「どっこいせーーっ! 往生せいやっ!!」

 一発で頸椎を捻って破壊し、即死させるのだった。


「あわわわわ……」

 腰を抜かしたままの旦那に向かって、汗一つかいていない女房が爽やかな笑みで問いかける。

「えーと、それで離縁――でしたっけ?」

「イイエ、聞キ違イデス。フツツカナ亭主デスケド、今後モ末永クヨロシクオ願イシマス」

 張子の虎のように、何度も何度も首を振る亭主。


(――鬼だ、鬼を女房にしてしまった……)

 そうしながら内心恐怖に戦慄(わなな)くのだった。


 その後、男は女房の尻に敷かれながらも、それなりに平和に暮らしたとさ。


****************


【こぶとり爺さん】


 あるところに隣り合ったふたりの爺さんがいました。

 片方の家のお爺さんはニコニコと柔和で、見た目も大黒様のような見た目で、もう片方の家のお爺さんは反対に意地悪でガリガリに痩せています。

 ある日、意地悪爺さんが家の垣根越しに隣のお爺さんに声をかけました。

「よう。相変わらず小太りだな」


****************


【シンデレラ】


 ガラスの靴がピッタリ合ったシンデレラは、その場で王子様に求婚され白馬が引く豪華な馬車に乗って、王子様と一緒にお城へと向かうのでした。


「夢みたい。私が王妃になれるなんて……」

 うっとりと呟くシンデレラ。

「…………は?」

 そこで怪訝な声を発したのは王子です。

 それからどこか唖然とした表情でシンデレラをまじまじと見つめ、おもむろに小さく首を横に振りました。

「――いや、なれるわけがないだろう王妃なんて」

「え? えーと、王子様はこの国のお世継ぎですよね……? それならばゆくゆくは国王様になれるのでは――あ、まだ時期尚早という意味ですか?」

 そう問い返すシンデレラ。


「いや、確かに私が次の国王である王太子であるが、なんで君が王妃になれると思うわけ?」

「え!? で、でも王子様、私にプロポーズなさいましたよね?」

「愛の告白はしたね。けど王妃にするとか、一言も言ってないはずだが?」

「え、ええ、ええええええええええっ!?!」


 呆然とするシンデレラに向かって、微妙に白けた視線を向けながらまくし立てる王子。

「そもそも君、王妃教育受けたことある? 最終学歴は? 何カ国語話せるの? 我が国と周辺国の歴史と地理は把握している? 貴族の後ろ盾はあるの? ダンスと古典と詩歌に精通している?」

「え、えーと……」

「何にもないだろう。そんなんで王妃どころか側室になることもできるわけないだろうに、常識的に考えて」


 好き勝手言われたシンデレラだが、必死に抗弁をする。

「で、でも王子様は私を見初めて国中を探し回られたのですよね。そ、そう、真実の愛のために!」

「真実の愛ねえ。まったく会ったこともない、玉の輿狙いでずらりと並んだ国中の若い娘の中から、見た目で選ばれた時点で人となりとか関係なく、外見重視だとわかると思うんだけど? だいたい私にはすでに正妻と側室が二人いるんだが。ちなみに正妻は隣国の王女で、側室は元公爵令嬢と宰相の娘である元侯爵令嬢。――つーか、自国の王子の結婚事情くらい普通知ってるだろうに、どんな環境で育ったわけ?」


 身も蓋もない王子のぶっちゃけに、絶句したシンデレラだが馬車が揺れたはずみに若干精彩を取り戻したらしく、真っ赤になって王子に詰め寄った。


「だ、だったら、私の存在ってなんなんですか!?!」

 それに対する王子の答えは簡潔にして明瞭だった。

「妾」

「………………。はァ……?!」

「だから妾。いや~、実は妻たちが同時に身ごもってね。それでまあ夜の相手ができないということで、この際だからあと腐れのない、どーでもいい庶民の娘を妾に迎えるということになったわけなんだ。いや~、奥さんたちを説得するのに苦労したよ。私もまだ若いし、何カ月もそういう我慢をするのも辛いし、かといって下手な貴族の娘や、まして商売女なんかに手を出せるわけもないだろう。そういうことでパーティを開催したわけなんだが、なんで王妃を選ぶパーティなんて阿呆な誤解するわけ? 全員そのあたりの事情は斟酌(しんしゃく)して参加していると思っていたけど」


 最後だけ真顔で尋ねられて、シンデレラは馬車の床にストンと腰砕けになって座り込んだ。

「ひ、ひどい。そうと知っていれば王子様の手を取ることなんてなかったのに……」

「心外だな~。でもここまで大々的に世間に周知された以上、いまさら辞めたとかはできないから。ま、世継ぎの問題もあるので、子供はできないように薬は使うけど、万が一の時は堕胎してね」


 まったく悪びれることなく言いたいことだけ喋りまくって、欲しがっていた玩具(おもちゃ)が手に入った少年のように、鼻歌を歌う王子。

 それに合わせるかのように、シンデレラの嗚咽の声と涙が馬車に染み渡るのだった。


****************


【ジャックと豆の木】


・殺人罪……死刑または無期もしくは5年以上の有期懲役に処する。

・強盗致死傷罪……死亡させたときは死刑または無期懲役に処する。


「――被告人ジャックは、被害者である大男の住居に無断侵入をし、彼の飼っていた金の卵を産む鶏を強奪。さらにはそれに飽き足らず、数日後には再び被害者の住居へ盗み目的で足を踏み入れ、被害者が寝ている間に魔法の竪琴を盗み、気が付いた被害者が取り押さえようとしたところ逃走をはかり、あまつさえ斧をふるって豆の木を切り倒し、数千メートルの高さから被害者を滑落死させたものです」

『ええ、ひどいんです。勝手に私をご主人様のもとから盗み出して……けど、ああ、私が「助けて~、ご主人様!」って騒いだせいで結果的にご主人様が殺されたかと思うと……』

 証言台に立った魔法の竪琴が、さめざめと哀しみの音色を響かせながら涙ながらに訴える。

「ジャックの殺意は明白。また再三の犯行には情状酌量の余地はありません。我々検察側はジャックに死刑を、また殺人ほう助と教唆の罪で斧を手渡した母親に――」


 こうしてジャックは死刑になりましたとさ。

『渇しても盗泉の水を飲まず』。みんなも悪いことをしてはだめだぞ(・ω<)☆

2/1 【ジャックと豆の木】追加しました。

  それにしてもジャックって、フリークライミングで数千メートルを上り切り、斧一丁で推定直径十メートル以上ある豆の木を切り倒すとか、どんだけ化け物なんでしょう。

裁判長「被告人に死刑を求刑する! 今の気持ちは?」

ジャック「敗北を知りたい」

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― 新着の感想 ―
[良い点] シンデレラ、超納得。 確かに王妃教育考えたら、妾ですよね。
[一言] 本当は生臭い昔話ですな~
[一言] 哀れ「ハイかぶり姫」こんなシンデレラさんでも城から逃げ出して・・外の男を見つけるなんて思考はないんでしょうね~ 哀れ「一寸法師さんのあ・そ・こ」・・・ノーコメントで!(本人談) 弦の恩返…
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