第7話 〜避難〜
残酷な描写が入ります。
苦手な方はご注意ください。
彩花は涼香との電話を切り、両親と弟とともに避難を始めた。車を使いたかったが異形に気付かれる可能性が高く徒歩での避難を余儀なくされた。家を出て20分程経つが異形から隠れながら進んでいるため、なかなか目的地にたどり着かない。普段通りに進めばそろそろ目的地である避難所となっている小学校が見えてきてもおかしくない。だが異形を確認する度に迂回をしており、思うように進めていない。異形により電線が切られ付近は停電して真っ暗である。暗い中、異形に気付かれないようライトも使えず、月明かりを頼りに無言で進む。
「痛った」彩花は何かに躓き転ぶ。大丈夫?、聞きながらと彩花の母が近づく。「ヒッ」と母が息を呑む。不審に思った彩花は母の方を見る。母は地面にある彩花が躓いたものにめを向け固まっている。彩花は地面に視線を向け自分が躓いたものが何かを確認する。「見ちゃだめ!」と母が言うが遅かった。彩花は自分が何に躓いたのかを悟る。
死体だ。肩から上がない死体が転がっていた。おそらく服装からして警察官であろう。市民を逃がすための任務にあたっていたと思われる。「イヤーーー!!」彩花は思わず悲鳴を上げる。「ひっ、人が!人が!」彩花は息を荒げパニックに陥った。彩花の母は彩花の肩を抱き大丈夫だから、と声をかける。父親が「母さん、彩花!急いでここを離れるぞ!」と焦った様子で声をかける。弟の陸も静かに泣いている。家族はパニックに陥りながらも先程の悲鳴で異形に気付かれた可能性を考え、すぐにその場を離れた。
死体を見つけてから10分程たった。まだ避難所にはたどり着けていなかった。「お父さん俺ら助かるのかな」と弟の陸が聞く。陸はまだ小学6年生であり子供だ。こんな夜中に怪物から逃げ回るなんて恐怖と不安で一杯だろう。だか彼は涙を流しつつも父や母の言うことを素直に聞き大人しく避難を続けている。父は「ああ、もう少しで学校に着くからな。だからもう少し頑張れ」と励ます。「彩花も母さんももう少しの辛抱だからな」と二人に対しても声をかける。その声は緊張の色が隠せていなかったが、父が家族を守ろうと頑張っている姿を見て少しだけ安心した。それから数分進んでいると、急にドカンとすぐ近くの民家が壊れた。中から猿の形をした異形が姿を表す。その手には一人の女性足を捕まれが引きずられていた。女性がこちらに気付くと「おでがい!だすげて!おね、、た」と手を伸ばしながら叫んでいた。それをつまらなそうに見た猿の異形は女性をその巨大で鋭い牙がたくさん生えた口に持っていき足から喰い付いた。「いやー、いだいっいたい!じにだくないだでか、誰がたす」女性が断末魔を上げながら喰われていく。足先から腰、腹とどんどん飲み込まれていく。彩花達一家は断末魔を背に一気に走り出した。
後ろを振り向くと、やはり猿型の異形はこちらを追いかけているその速度は見た目の大きさの割にかなり早い。追いつかれるのも時間の問題だ。T字路に差し掛かった時父が「お前らはあっちに行けこのまま真っ直ぐ行って左に曲がれば学校に着くからな!俺はあの化け物の気を引く!」と3人に言った。「お父さん!やだよ、一緒に逃げようと」彩花は叫ぶ。父は首を振り「彩花、陸のことしっかり面倒見てやれよ」と優しく声をかけた。そして母の方に向き直り「母さん、二人を頼むぞ」そう言い小学校とは反対側にかけていく。彩花は父を止めようとしたが母に腕を引っ張られ父とは反対側に連れて行かれた。父は大声で「こっちだバケモノ!追いつけるものなら追いついてみろ!」と叫んでいた。その声につられ猿型の異形は彩花の父の方へと走っていく。彩花は父の姿がみえなくなり諦めて小学校の方へ泣きじゃくりながらと走っていく。
遠くで父の悲鳴が聞こえた