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【夏のホラー2020】伝聞:I君の体験

 まあ……多分、夢かなんかだったとは思うんだけどさ。


 大学2年の頃の話。バイトが終わって……5時くらいだったんじゃないかな? 真冬の夕方で、家に帰るために駅で電車待ってたんだよ。


 疲れてぼ~っとしてたんだけどさ。そしたら何か、駅のアナウンスが変なこと言ってんのよ。


 低い声で、ボソボソ何か言ってて……何言ってんだ? ってその声を集中して聞いてみたわけ。


 したら何か……わけわかんないんだけど、「ありがとう」っていってんのよ。


 宮本○○君ありがとう、田中○○君ありがとう、藤田○○君ありがとう……ってさ。抑揚のない感じで、ずーっと。


 なんだこれ? って思ってさ。あー、なんかサプライズ的なやつ? フラッシュモブみたいなああゆうやつ? ってちょっと笑っちゃったんだけどさ。


 ……でも違うんだよ。おかしいんだよ、そいつ。


「ありがとう。ありがとう。勇敢な君達の意思と情熱はこの国を支える礎となるでしょう。体は死んでも心は死なず。勝利の報せは海を渡り故郷へ届く。家族のために。故郷のために。お国のために。ありがとう。ありがとう。ありがとう……」


 は? 何言ってんの? そう思ったよ。


 そしたらどんどんおかしい事言い始めてさ。


「ありがとう。ありがとう。感謝を胸に命を捨てよう。ありがとうありがとう。育ててくれた親のために。お国のために。いまこそその体を返す時。ありがとうありがとうありがとう。敵兵を殺し感謝を叫ぼう。ありがとうありがとうありがとう。死んでお国へご奉公できることを感謝しよう。ありがとうありがとうありがとうありがとうありがとう。ありがとうありがとうありがとうありがとうありがとうありがとうありがとうありがとうありがとう」


 なんだよこれ、冗談にしてもやりすぎだろ……ってドン引きしたよ。


 したらいきなり――


 ウウゥゥゥーーーーーー!!


 ってサイレンみたいな音がして……よく聞いたらそれ、あれなんだよ……空襲を知らせる時に鳴らした、警報の音なんだよ。


 声の方もどんどんおかしくなってさ……


「ありがとうありがとうありがとう。君達の犠牲のおかげでこの国は救われる。死んでくれてありがとう。児島君、見事な特攻をありがとう。鈴木君、敵兵もろとも自爆した君の勇士は忘れない! ありがとうありがとうありがとう!! 殺してくれてありがとう!! 死んでくれてありがとう!!」


 ウウゥゥゥーーーーーー!


 サイレンの音がどんどん大きくなって……耳を押さえててもどんどんデカくなってさ。マジで鼓膜が破れるかと思うくらいに……もうホント頭おかしくなりそうだった。


「ありがとうありがとうありがとうありがとうありがとうありがとう!!」

 ウウゥゥゥーーーーーー!

「ありがとうありがとうありがとうありがとうありがとうありがとう!!」

 ウウゥゥゥーーーーーー!


「ありがとう……この国は敗ける!!」

 ウウウウゥゥゥゥゥーーーーーーーーーー!!


 やめろ!!


 ……って叫びかけた時、なんか周り、一気にもう、シーン……としててさ。


 目の前には電車が来てて、みんな普通に乗り込んでて……耳から手を離したら、もう普通の、いつもの電車のアナウンスに戻ってるのよ。


 なんかもう……ボーゼンとしたまま、電車に乗って……普通に帰ったんだよ。そういう話。





 ……やっぱ夢だと思うよな?


 でもさあ、う~ん……1つ引っかかることがあってさ。


 その出来事があったの、3月なんだよ。


 ……3月10日。


 できすぎてるよなあ……夢だとしても、うん……


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