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花と君と  作者: ぷるめりあ
3/3

「今年一年、学級委員長を務めさせていただきます零です。まだこの学校に慣れていないので、皆さんご協力お願いします。では、早速ですが..」

学校も二日目。まだ、本格的な授業は始まらず各授業はレクリエーションのような形のみで終わった。

この学校では毎年、一年生のクラス同士の仲を深めるためにと五月の初めに中華街へと行く。

七限目の総合学習の時間は、その大まかな内容説明を行うことになっていた。

その指揮をとっていたのが、先日の委員長決めのときに自らいの一番に立候補した零。

僕の中学の同級生だが、こちらのことを覚えているかは不明。

なんたって彼女は成績優秀、衆目美麗..およそ思いつく限りの褒め言葉が彼女には当てはまる。

おまけに人望までも厚く中学では一,二年と学級委員長、三年では生徒会長を務めるほど。

かたやこちらは身長、容姿、性格どれも平凡と言っていいものでこれと言った特徴も無いごく普通の男子。

存在すら認識されていなくても致し方ないレベルだ。

「では、概要は以上です。先ほど言った班決めは再来週行います。」

と、話が終わると同時に授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。

さすが、ここらへんの時間の使い方はしっかりしている。HRが終わると同時、クラスの皆がめいめいに動き出す。部活動見学に行くもの、友達と遊びに行くもの、そのままクラス内で喋っているもの、一人でそそくさと帰るもの。

一人ひとりの行動はバラついているが、皆どこか浮き足だっているのは先の班決めが要因だろう。

今回のレクリエーション班の構成は六人。男子三人女子三人の班が六つ、男子四人女子二人の班が一つの計七班がつくられる。

男子だけのグループ、女子だけのグループがつくられどのグループが一緒になるのかはくじ引きで決められるそうだ。この運要素が彼らのテンションを高めている一因といってもいいかもしれない。自分から声を掛けるというリスクを侵すことなく、これはくじ引きで決まったことだからという大義名分を大いに振りかざして、教室から離れたいわゆる非日常の中を一緒に過ごすことができるのだ。体育祭や文化祭等の非日常を彩るイベントはいつもと異なる、特別なことをしているという満足感から異様なテンションを引き起こし、いつもなら起こりうるはずのない素敵な出会いを僕たちに提供してくれる。そこから生まれる恋愛や新たな友情の芽生えも決して少なくはないだろう。ただ現実とは残酷なもので、そんな非日常も一瞬で終わってしまう。遺伝よりも環境の方が育ちに影響を与えるとはよくいったもので、イベント中にはイカしていたあの子もイベントが終わればもとの姿に元通り。やっぱり…私たち方向性が違ったね、なんてまるで有名バンドグループが解散する時みたいにただ相手に飽きた自分を誤魔化す言い訳を並べ立てて結局破局なんてのもよく聞く話だ。なんならここまでがワンセット。…っけ、そんな一瞬で手に入るようなものすぐに失うに決まってるやろがなめとんのか。

閑話休題

自分はすでに中学からの友人とグループを作り終わったのであとはくじ引きを待つのみ。大方のクラスメイトもそれは同じだろう。

..となると

「おーい、お前は誰と一緒がいいんだよ?星野さんとか?」

今回僕と同じグループの健が身を乗りださんばかりの勢いで聞いてくる。

「静かなグループだったらどこでもいいよ」

「ちぇ、つまんねーの。ちなみに俺は日比野さんだな。ありゃ、相当可愛いぞ」

「お前、それ自分が言いたかっただけだろ」

「バレた?」

そんなくだらない会話を交わしながら僕は頭の中で考える。一緒の班になりたい女子か..

そんな事を話したところでくじ引きの結果は変わらないし、ましてまだ見知らぬ人が多い。そんな状況の中で一緒になりたい人もなにもないだろう。ま、どこと班になろうとも僕には関係はないかな..

諦観とも達観ともとれない気持ちをため息と共に吐き出し、教室の外の景色を見つめる。

いつもなら目に付かない、ふわふわと風に流されている雲に今日はなぜだか目を奪われた。

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