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5.提案

 なんだ?まだ何かあるのか?申してみよ」


「はい。私に任せて頂ければ、今回の陛下暗殺事件の首謀者と、共犯者を見つけ出すことが出来ます」


「なんと...それは本当かっ!申してみよ」


 陛下は私の提案を受け入れてくれた。


「それはー」


 私が口を開いた、その時だった。ルドルフは机を叩いて猛抗議する。まったく、うるさい奴だ。


「貴様っ!ありもしない罪を仕立て上げて、私を失脚させるつもりではないだろうなっ!」


 ルドルフの発言に、ギュスターブは怒りを露わに声を荒げる。


「なんと!私の事も陥れるつもりではあるまいなぁっ!」


 ヴェロニカは手の平を合わせて、取り繕った笑みを私に向けてくる。


「エフィデル殿!先程は申し訳ありませんでしたわ!ギュスターブ殿から脅されただけで、私は最初からその様な事は思ってませんでしたわ!」


 ギュスターブはヴェロニカを睨みつけ、忌々しそうに呟いた。


「手の平を返しおって!このっ!」


 オリバーは俯いたまま何も言わない。


「.....」


 オリバー以外の筆頭貴族は喧嘩をし始めた。その様子を見た陛下は溜息をつくと、部屋から出て行こうとする。


 私は大きなため息を吐いた。


「私は一言も、私自身で見つける事が出来るとは言ってませんよ。私の事を疑うのなら、私の手足を封じて頂いて構いません」


 陛下は立ち止まった。どうやら、もう一度話を聞いて下さるようだ。


「面白い!エフィデルよ、申してみよ!」


「陛下っ!この者の話を信じるのですか!」


「何を申すかと思えば、獣の民との条約を違反した、お前なんぞよりは日頃から国に尽くしているエフィデルの方が十分と言って良い程の信用があるが?」


「うっ....」


 領地経営の上手くできぬルドルフは陛下からの信用がない。ましてや、今となっては法を犯したルドルフの話など信じる筈などない。


 獣の民と我ら人間は、仲が悪い種族同士なのだ。いつ戦争が起こってもおかしくはない。お互いの種族の奴隷を禁止するのは、戦争の口実を作る事をお互いに避ける為に、国家間で契約した不干渉条約なのだ。

 この条約を破ったのが、筆頭貴族でなければ極刑は間逃れぬ筈だ。この場で陛下を否定するなど、今すぐ処刑されても可笑しくない。はっきりと言えば、馬鹿を通り越して愚かだ。


 そんな事も分からないとは、呆れてしまった。同様にあれ程、彼を擁護していたギュスターブでさえも、怪訝な顔をしている。


「エフィデルよ。此度の件の、首謀者と共犯者を見つけ出す方法を申してみよ」


「はい。それは、[白い月の会議]を行うのです」


 その場にいる筆頭貴族4人と宰相と騎士団長、文官たちは驚愕に包まれていた。

 陛下は面白そうに悪戯っぽい笑みを浮かべた。


「ほほう。それはお伽話なのではないのか?」


「いいえ。教会が頑なに秘密にしていますが、これはかつて、この国で実際に行われました」


「ふむ。上級の司祭でもあるお主が言うのなら、一理あるかもしれぬな」


[白い月の会議]とは


 かつて帝国では[邪教徒狩り]が行われた。この世界には、主に三種類の宗教がある。

 1つ目は、この世界を創り出したとされる創造の女神を崇拝する[創世教]だ。種族は関係なく、殆どの民がこれに属している。

 2つ目は、この世界に破滅をもたらすとされる邪神を崇拝する[邪神教]だ。世界に破滅をもたらす為に、邪神復活を目論んでいる。彼らの多くは大きな戦争を行う事で、邪神を復活させる事が出来ると信じている。世界に戦乱を巻き起こす事が徳を積むと考える反社会勢力だ。

 3つ目は、東方の民が崇拝する「仏」と呼ばれる神を崇拝する宗教や、砂漠に住む先住民の[太陽の神]を崇拝する宗教や、その他の部族にも細々と伝えられる宗教がある。少数部族が崇拝する宗教だ。


 かつて、邪教徒達による暴動や革命が相次いだこの国では教会とテンプル騎士団によって、[邪教徒狩り]が行われた。しかし、それは思わぬ方向に進んでしまった。虚偽の通報による冤罪が出てしまったのだ。冤罪で処刑された家族は猛抗議したが、邪教徒に洗脳されたとされて、その家族もまた処刑された。

 疑心暗鬼と化した国民達は、殺されるくらいならと、確たる証拠も無く次々と邪教徒だと決めつけて、罪のない人々を処刑をしていった。

 その理由は様々だった。嫌いな者を殺す為、政治的に邪魔な者を殺す為、己の保身の為、邪教徒が国民を錯乱させる為....

 こうして、帝国は挽歌と国民達の血で満ちたという。



 かつて、大勢の国民の犠牲を憂いた皇帝が、心を読み取る力を持つというルーナの民に頼んで[白い月の会議]を開き、邪教徒達を見分けたという。


 この[白い月の会議]で邪教徒狩りは沈められたという歴史がある。しかし、血塗られた歴史を知られたくない教会は、その歴史をお伽話として広めた。

 ルーナの民は実際には平和を願う温厚な種族だが、教会は奇妙な呪術を使う種族だと国民に吹聴した。というのが、この国の教会の秘密だ。



 陛下は考えているようだ。顎に手を当てている。


「教会が事実を歪めたのなら、教会が黙っていないのではないか?」


「はい。その通りでございます。使者を送っても、きっと消されてしまう事でしょう。私に考えがあります」


「ほう。申してみよ」


 私は陛下に進言する。

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