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4.会議

 会議が開かれる。陛下と五人の筆頭貴族、宰相、騎士団長が円卓を囲む。その後ろには文官長と文官数人が書記として控えている。


 最初に陛下が話し出した。


「エフィデルよ。此度の件はご苦労であった」


「勿体ないお言葉です。陛下の暗殺は未遂に終わりましたが、まだ油断は禁物です」


「私の身を案じてくれてありがとう。エルディンよ。会議の進行はお主に頼んだ」



 陛下は会議の進行を宰相に頼むと、宰相が話し始めた。


「では、今回の陛下の暗殺未遂事件での件ですが、私が進行を務めます。今後の対策について何か案はありませんか?」


 宰相の言葉に騎士団長が手を挙げ、口を開く。


「僭越ながら、今後、この様な事が起きない様に陛下の警護を強化する事と、国内に出入りする者の審査を強化し、警戒を怠らない事が対策として最善ではないでしょうか」


「なるほど。今後の対策はひとまず、それで良いでしょう。何か他に意見がある方はいませんか?」


 筆頭貴族の一人であるヴェロニカが宰相の言葉に手を挙げた。


「はい。ヴェロニカ様、何か意見がおありですか?」


「私は、今後の対策についてはそれで良いと思っています。次に陛下暗殺を企てた犯人は誰かを探るべきだと思います。私はエフィデル殿が怪しいかと」


 私を犯人だとヴェロニカが発言する。宰相は困った様に私と陛下を見て新しい質問を投げかける。


「他にも何か意見はおありでしょうか?」


「私もエフィデル殿が怪しいと思います。エフィデル殿が陛下暗殺を企て自身で陛下を救い英雄になるための自作自演だと思います」


「同じく私も」


 ヴェロニカに追従する形でルドルフとギュスターブが私を犯人だと述べる。もう一人の筆頭貴族であるオリバーは黙っている。


「ふむ。それは憶測でしかありませんね。エフィデル様、意見はありますか?」


「犯人はまだ、分かりかねます。しかし、私がその様なことをしても、何の得もありません」



 私はあえて犯人を伏せる。ルドルフは分かり易く安堵の表情を浮かべる。ヴェロニカは顔に出ていないが、まだ彼女が共犯である可能性は否定できない。私からも攻撃をしておこう。



「私の事よりも、ヴェロニカ殿、貴女が国から与えられた国防費を私欲の為に使っていると知人から聞きましたが、何か他にも隠してる事がおありで私を犯人だと言ったのでは?」


「なっ!ギュスターブ殿!話が違うではないかっ!」


「私は何も知らんっ!」


 ヴェロニカは獣の民の国の近くに位置する南の領地経営を任されている。昔から仲の悪い獣の民との小競り合いの続く南の領地には、国防費として莫大な援助金が国庫から捻出されている。その国防費をヴェロニカは宝石や賭博に使っている。それを知っていたギュスターブが揺すりをかけて、私を犯人だと述べるように言っていたのだろう。


 貴族とはお互いが足を引っ張り合う者だ。私の発言にヴェロニカと他がどう出るか気になる所だ。


 宰相は疑惑の眼差しで二人に問いかける。


「ヴェロニカ様!ギュスターブ様!これは一体どう言うことか、ご説明頂きたいっ!」


 ヴェロニカは慌てて弁明する。


「ちっ、違うのです。私は、決して陛下を裏切る様なことはしていません。ギュスターブ殿に脅されたのです」


 慌てたギュスターブは円卓をバンッと叩きつけ、負けずと反撃する。


「なっ!何を申すかっ!貴様が国防費を私欲の為に使っているのは真の事ではないかっ!」


 ギュスターブにルドルフが援護する。


「ヴェロニカ殿、陛下を謀り、国防費を使うなど見損ないましたぞ」


 負けじとヴェロニカも反撃する。


「なっ、それならオリバー殿とルドルフ殿が獣の民を奴隷として扱っております!それは陛下を謀る行為ではありませぬか!」


 今まで黙っていたオリバーは動揺する。


「なっ何を申すかっ!」


 その時だった。爆音と共に、円卓の中心に雷が落ちた。


「良い加減にせぬかっ!」


 陛下は怒りを露わに声を荒げた。


「そなたら筆頭貴族達が、醜い争いをしていてこの国を任せる事など出来ぬっ!もう良いっ!会議は終いだ!騎士団長よっ!筆頭貴族の五人が怪しい事をせぬ様に、監視をつけるのだっ!以上で解散だっ!」


 私以外の筆頭貴族は、顔を青くしている。敵はとても浅はかな事が分かった。陛下の前で争い、己の罪を露呈するなど愚の骨頂だというのに、それすら分からないとは呆れて何も言えない。



 陛下は怒りを露わにし、部屋を出て行こうとしている。


 上手くいった。私以外の筆頭貴族の罪を陛下の前で暴く事が出来た。日頃から信用のある、私の意見だけが陛下に通り易くなるだろう。


 私は手を挙げて進言する。


「お待ち下さいっ!陛下、私に考えがあります。少しだけ宜しいでしょうか?」


「なんだ?まだ何かあるのか?申してみよ」


「はい。私はー」

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