ー街が目覚めるー
早朝、街がまだ微睡む頃、
埃っぽい、かびくさい部屋の中、若い男の声が響く。
「スクープ!!今日初めて異人見たよ!!先月は横浜、二週間前は秩父だったよね!!私が見たのはコスモスの花みたいな頭だったけど、他の人見るとみんな宇宙飛行士のヘルメット被ってたっぽい・・・・異人って何人もいるのかなーー?また新しいの見つけたら誰か教えてねーwwwwだってよ、ヴァンプ。」
紳士手袋をした手が、スマホをスリープ状態にする。
「いやー、俺らも随分有名になったよねぇ、俺でさえ目撃されちゃうほどにさ、いやーかなり気をつけてたのに、どっかの不用心なヴァンプとは違って。」
紳士手袋が両手でピストルの形を作る。ハハハ、という笑いをかき消すように
ヴァンプ、とよ
「うるっさいなもう!!wwwwまで読むんじゃない!!大体アンタだって半分はわざと見つかったようなもんだろうが!!」
長く細い指が紳士手袋のピストルをはたき落とす。痛ってー、とわざとらしい声がした。
と、
「そーいや、ジャックは?朝から仕事があるなんていってたよな?」
若い男の声が答える
「寝てる。アイツは六時までは起きてこないっしょ。夜は目障りなヤツが多い。何て言ってさ。キザだよねー。」
「仕方ないだろ、アイツの『異能』的に。」
空が紅く染まる。街が動き出す。そして『彼ら』も―――
「ジャックが起きる頃だね。さて、今日は何が来る?隕石?それとも火事親父?」
若い男の声が、楽しそうに揺れていた。
新作に手を出す愚かものな千住です。現代の話を書いてみようと思いました。テーマは街の闇、子供のころに見た夜の怖いながらに好奇心をくすぐられる感じを大事にしていきたいです。でも、ホラーではないのでご安心ください!!