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小さな珈琲店の悪魔  作者: 悠
風の女神編
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第8話「深淵を司る者」

第8話「深淵を司る者」


体が動かない。「蛇に睨まれた蛙」とはこのことか。

って、そんな悠長なこと考えてる場合か!


女がこちらに近づいてくる。


体が痺れたように動かない...

動け。動け!動け!!


「ユウタに近づくなぁ!『暗黒波ダークネス・セル』!」

カンナの攻撃で爆風が起きる。


その衝撃で体が動いた。


「大丈夫かユウタ!?」


「ちょっとヤバかったかも」

正直言うと、本気でヤバかったかもしれない。

奴と目があった瞬間、体が痺れる用な感覚に陥った。


目に光を感じなかった。あれは、普通の人間じゃない。


「あらら...残念ですわ」

カンナの攻撃を受けて、奴は無傷だった。


「わたくし、嫌われたのでしょうか?」

女は不気味な笑顔を浮かべながら立ち上がった。


寒気が止まらない。鳥肌が治らない。それほど奴の異常さが、空気を伝ってビリビリ感じる。


「お前は何者だ?」

こっちから攻撃をしかけておいて名を名乗れなんて失礼すぎるが、コイツにはそんな事を気にしている場合じゃない。まずは情報だ。


「わたくしは「レムリア・ヴァレンタイン」と申します。神の一族に仕える使用人でございます」


「神の一族?」

どこかで聞いたことある。そう言えば、この前師匠が「神が復活した」とか言ってたな。


「貴方様のお名前を伺っても?」

レムリアは俺の名も聞いてきた。答えるのは嫌だったが。


「...ユウタだ」


「「ユウタ」素晴らしいお名前...」

思ってもないくせに...


「レムリア、お前は何故森のモンスター達を殺しているんだ?目的はなんだ」


「目的...楽しむためです」


「は?」

俺は耳を疑った。

楽しむため?何を言っているんだコイツは。モンスターを虐殺することが、コイツにとっての快楽になっているとでも言うのか?


「わたくし、興奮すると見境なく「殺し」をしたくなるんですの。ここに来たのはたまたまであって、対象はモンスターじゃなくて人間でも構わないのですよ」

レムリアは笑顔でそう答えた。


ダメだ。コイツはこのままにしてはいけない。俺の本能がそう悟った。


「そんな簡単に命を奪って、何も感じないのか!?」


説得や説教は無理だとわかっている。でも、奴に人間としての心があるか確かめたかった。

だが...


「快楽を得ていますよ」


ダメか...

カンナが「とんだクズだな」と暴言を吐いた。


「ユウタ様、わたくしと少し遊んでくださいます?」

レムリアは懐からもう一本のナイフを取り出した。


「貴方の魔力に惹かれて、まだ興奮が治らなくて...」


カイト達に連絡を取る暇がない...

クソ、やはり戦うしかないか!


「ねぇ、貴方の魔力を...見せてぇ!!」

レムリアがこちらに走ってくる。


「ハァァ!!」

素早いナイフ捌きで俺の首を狙ってきた。


黒刀で防ぐが、もう一本のナイフが迫る。


「『暗黒槍ダークネス・ランス』!」

カンナが横から防いでくれた。


ナイス!

殺すまではいかないが、コイツは戦闘不能にさせるつもりで挑むしかない!


「『闇刀ヤミガタナ!』」


女だからって容赦はしない。手加減無用だ!


「それが貴方の能力エレメントですのね...」

レムリアは、また不気味に笑った。


「素敵ですねぇ!」


「オラァ!!」

俺は奴の声を無視して斬り込んだが、レムリアはナイフで受けながす。

そこにカンナが攻撃をしかけた。


「くらいなぁ!...え?」

あいつ、カンナの『暗黒槍ダークネス・ランス』を素手で止めやがった!?


「邪魔をしないでくださいます?」

レミリアはカンナに手のひらを向け、スキルを放った。


「『深淵眠アビス・ソンノ』」

カンナはその場に倒れ込み眠ってしまった。


相手を眠らせる能力エレメントなのか?


「さぁ、続きといきましょう」

レムリアはすかさず、俺に攻撃をしかけてきた。


クソ。このままじゃ俺の魔力が持たない!

何とか、カイトたちに知らせないと。


「あら、よそ見はいけませんわね」

レムリアのナイフが、俺の右足を切り裂いた。


「イッ!?」

足に攻撃を受けてしまった!これじゃあまともに...?

あれ...足に力が入らない。何でだ!?


「『深淵麻痺アビス・バラージ』わたくしのナイフで切られた箇所は重度の麻痺を起こして、1日は動かせません」


麻痺!?あいつの能力は眠らせるだけじゃないのか...


「やっと大人しくしてくれましたね」

彼女はそう言い、動きを完全に封じるためか、ナイフを俺の両腕に投げ刺した。


「アァッ!」

奴の能力で腕が動かない...刀を持つ力もない...本気でマズイぞ...


レムリアは仰向けに倒れた俺に馬乗りになる。


何をするつもりだ...


「貴方は何本で逝きますか?」

彼女はスカートに隠していた大量のナイフを見せてきた。ナイフは手持ちの2本だけじゃなく、隠し持っていたのか。


「それじゃあまず1本目...」

レムリアのナイフが俺の腹に刺さる。


「ウグッ!アァァァァ!!」

大量の血が出てきた。

刺さったナイフを抜きたいが、手足が痺れて動かない。唯一動く左足だけが踠き狂う。


「2本目...」

2本目のナイフが1本目の近くに刺さる。


「アガッ!!や、ヤメろぉぉぉ!!」

本気で死ぬ。ダメだ!ここで死ぬわけにはいかないんだ!!

動け!俺の体ぁぁぁ!!


「3本目...」

レムリアは子供のようなに楽しんでいた。

まるで、オモチャで遊ぶ無邪気な子供のように...


クソ...だめ...か...


「4本目...」

俺の意識は少しずつ薄れていった。

刺されたところが血で温かい...でも、体は寒い...視界が暗くなってい...く...




何かが割れる音がした...




ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


...ハッ!?


眠っていたのか?そうだ...あのレムリアとか言う女の能力で眠らされていたんだった。


カンナは倒れていた体を起こしたと同時に、ある異変に気付いた。


ユウタの魔力か?なにかおかしい...


カンナは辺りを見回した。最初に目に入った光景は、倒れたユウタに馬乗りになってナイフを刺しているレムリアの姿だった。




第8話 完


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