第6話「アルラウネの大森林」の調査
第6話「アルラウネの大森林」の調査
俺たちの住んでいる「フリデント王国」から東へ数キロ離れたところに「アルラウネの大森林」と呼ばれる森がある。
そこは多数のモンスターや植物が生息おり、冒険者やハンターもよく訪れる美しい森だった。
そう、つい最近までは...
「「アルラウネの大森林」で異常事態?」
俺はおやっさんの言葉に少し驚いた。
「あぁ、ここ数日「アルラウネの大森林」でモンスターの変死体が複数見つかっている。それも下級だけじゃなく上級までな」
「ハンターとかの仕業じゃないの?」
「俺も最初はそう思ったんだが、モンスターの死体を見て気づいたんだ。これは「常人」の仕業じゃないってな」
「...どういうこと?」
おやっさんは少し何かを考えた後、タバコを一度吸って答えてくれた。
「...死体はどれも胴体を切り離されており、おまけに眼球をほじくられていた」
俺はゾッとした。
まさか、そんな事をする奴がいるのか?いったいなんの目的で?
「あれは他のモンスターや霊魔に襲われた感じではなかった。紛れもなく「人間」の手で行われていた」
理由はわからないが、霊魔はモンスターを基本襲わない。
一応、ギルドの方で調査に乗り出してはいるみたいだが、なかなか犯人は見つからず、死体は増えていくばかりだとか。
「そこで俺たちの出番ってことだね」
マジか...今回は結構キツそうだな...
「すまない。本来なら若いお前たちを行かせるわけにはいかないんだが...」
この依頼が今までのとは違い、かなり危険なのは百も承知だ。
「アルラウネの大森林」はこの国と隣国の「ヘンリエッタ王国」との交易路にもなっているので、多くの人たちが行き交う場所にもなっている。
ここのままでは、いずれ犠牲者が現れてしまうに違いない。
「わかったよ。確かに少し危険だけど、俺たちに調査させて」
少しじゃない。だいぶ危険だけどね。
でも、不思議と嫌な気持ちは感じなかった。
「助かる。だが、もし危険を感じたら絶対に引いてくれ。それだけは約束だ」
俺は「わかったよ」とだけ答えた。
今回は流石に危険なので、ミーナには店番をお願いした。
「大丈夫なんですか?」
俺たちの心配をしてくれるのか...マジ天使だなこのバイトちゃん。
「大丈夫だって。やばかったらすぐ帰ってくるし、ミーナは安心して待ってて」
「全く、ミーナは心配性だな〜」
カンナは「お前は少し緊張感を持て」と、カイトにツッコミをくらっていた。
出発は明日の早朝。夜は暗いので明るいうちに調査に乗り込む。
そして、必ず犯人を捕まえてみせる。
〜次の日の朝〜
王国の門に、ギルドが手配してくれた馬車が停まっていた。
俺たちはその馬車に乗り、森へ向かう。
「必ず、無事に帰ってきてくださいね!」
ミーナは門まで見送りに来てくれた。何て良い子なんだ。
この依頼が終わったら多めに給料あげよう。
そうこう思っているうちに、馬車は「アルラウネの大森林」へと向けて出発した。
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「昨日、うちの街に来ていた隣国の商人達に話を聞いてまわったんだが、二件ほど気になる事があった」
カイトはあの後、外で情報を集めてくれていた。さすがです相棒。
「まず1つ、森の中で奇妙な仮面を被った子供の目撃情報がいくつかあった」
「子供?」
「その子供は、突然目の前に現れたかと思うと、草木の中へ消えていったらしい。商人は最初幻覚かと思ったが、こうも複数目撃情報があるとなると...」
幻覚ではないか。
なんで森の中に子供がいるんだ?商人達の前に現れたとなると、森で迷っているわけでもなさそうだ。
「それともうひとつ、森の入口で奇妙な女に話しかけられたらしい」
商人達の話によると、その女は少し若めで黒いドレスのような物を着ていたそうな。そして、通りすがりに「あなたは神の存在を信じますか?」と、話しかけてきたらしい。
新手の宗教勧誘なのか知らんが、なんだか不気味だな。
どちらかが例の犯人なのか?いや、疑うには情報が少なすぎる。真相がどうであれ、やはり確かめるしかないな。
「そういえばユウタ、調子はどうだ?ここ最近かなり魔力を消費したが」
カナンが心配そうにしていた。
俺の能力「闇喰」は、強力であるが故にリスクが大きい。
魔力が暴走を起こすのだ。
能力は基本、体内にある魔力を消費して使用できるのだが、その魔力が暴走を起こすと自我を失ってましう。
今は普通に制御できているが、子供の頃は本当に大変だった。
何も俺だけに限ったことじゃない。人間は無意識に体内の魔力を制御できているらしいのだが、子供の頃の俺に「闇喰」は強大すぎたため、何度も暴走を起こしては師匠に止められてたいた。
暴走は心に余裕が無くなったときに起きると言われている。おそらくカンナは、ここ最近俺が見るあの夢の事を気にしてくれているのだろう。
「...大丈夫だよ。心配症だな〜カンナちゃんは〜」
俺はカンナの頬を指で突いた。
「子供扱いするな!」と、彼女は怒った。一応、こう見えて俺より年上だもんな...
そんな会話をしているうちに、馬車は目的地である「アルラウネの大森林」の入り口にたどり着いた。
馭者には翌日の朝に迎えに来るようにお願いした。危険だが、森の中で野宿することにしたのだ。
「それじゃあみんな、気を引き締めて行きますか」
鞘に納められた黒刀を手に取り、いざ「アルラウネの大森林」調査を開始する。