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小さな珈琲店の悪魔  作者: 悠
日常編その2
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第10話「パープルミラー」

第10話「パープルミラー」


先日の「アルラウネの大森林」の調査から3日が経った。


あの後王国に戻った俺らはそのままギルドに調査報告をしに行った。


おやっさんはボロボロになって帰ってきた俺らを見て驚いていた。まぁ、無理もない。

俺なんか腹を刺されまくったしな。マジで痛かった...


レムリアの件については、ギルド側には何も情報は無かった。


ひとつだけ、あったとしたら「神の一族」についてだった。


「俺も詳しい事はわからんが、それは神に仕えている部下みたいなもんだ。レムリアって女はおそらく、その「神の部下の部下」って事になるな。お前ら、いつしか「神」に目つけられるんじゃねーのか?」


聞きたくない情報だった...

絡んできたのは向こうからなのに...

俺はショックを隠しきれずに、その場に崩れた。


「まあそれはともかく、無事に帰ってきてくれたよかった。本当にありがとうな」


そう言うとおやっさんは肩をポンと叩いた。



その後は「Bonds」に戻り


ミーナ号泣...(汗)


「みなざん、無事で...良かっだぁ...グスッ」


どうやら俺らがいない間、心配で夜も眠れなかったみたいだ。


お腹を滅多刺しにされた事は言わなかった。多分もっと泣くからだ。


そして


「今日から一緒に働くことになったシュウです。よろしくお願いします」


シュウは少し緊張していた。


反対にミーナは嬉しそうだった。

まぁ、泣き止んでくれて良かったよ。


「よろしくね!シュウくん!」

ミーナがシュウの手を握る。


「何照れてんだガキんちょ」

照れているシュウにカンナがからかい始めた。


「ハァ!?照れてーから!てか、ガキはお前もだろ!このロリ悪魔!!」


「んなぁ!?ロリじゃねーし!たまたまロリの姿してあって実年齢はオメーの倍以上あんだぞ!!」


賑やかになったな...


お店での基本的な事は全て俺から教えたが、シュウには最初は皿洗いをお願いした。注文を運ぶのはその後だ。


最近は簡単な料理を出す余裕もあるので、洗い物は日に日に増えている。

洗い物担当が増えて、カイトは心なしか嬉しそうだ。


シュウは熱心に働いてくれた。最初は嫌々だったが、なんだかんだ真面目なのだ。

カンナとはよく喧嘩するが、喧嘩するほど何とやらと言うので良しとしてる。


近いうちに学校にも通わせてみるか。あの年なら、友達とか欲しいだろうな。



そんなこんなで3日が経ったときだった。




「最近、うちの学校で噂になってて...」


「う、うん...」


「夜中の4時44分に、魔導学校の別館4階の廊下に飾ってある紫色の鏡の前に立つと...」


「...」


「鏡の中に吸い込まれてしまうらしいのぉぉぉぉぉ!!」


「アァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」

カンナとシュウの叫び声が、閉店後の店内に響き渡った。


「って言う、噂話なんだけどね。最近学校で話題になってるのこれ」

ミーナの顔は満足そうだった。


「う、噂かよ...良かったぁ」

シュウは意外とビビりなんだな。


「ままま、まあ、私は最初から知っていたけどね」

お前結構ビビってたよな。


ここ最近、お店が閉まった後3人でいろんな話をしている。どうやら今日は怖い話だそうだ。


最初は緊張していたシュウも、ミーナに心を開き始めて良かった。カンナとはたまに喧嘩しているが、良しとしている(2回目)


「その紫の鏡って、まだ置いてあるの?」

カウンターで聞いてた俺から質問してみる。


「うん。今でもまだ置いてあるよ。人は吸い込まれるってのは作り話だけど、夜になったら鏡の中から女の子の声が聞こえたりするんだって。怖いよねぇ」


「ふ〜ん」


紫の鏡ねぇ...


「それじゃあ私はそろそろ帰るね。お疲れ様でした!」

そう言ってミーナは帰っていった。


カウンターでお皿の整理をしていると、シュウが不安そうな顔で近づいてきた。


「どうした?」


「ユウタ...今日、ユウタの部屋で寝ても良いかな?」

へ?こいつ、さっきの怖い話を聞いて...


俺は思わず笑いそうになったが、ここはシュウの名誉のため我慢しよう。


「あ〜?さっきのやつか?大丈夫気にすんな気にすんな!霊魔はいても幽霊なんかいねーから。どっちも変わんねーか」


「なんだガキんちょ〜やっぱり子供には怖かったか〜??」

カンナが煽り始める。


「ち、ちげーよ!てか、オメーもビビってただろうがこのロリ悪魔!」


また喧嘩が始まった...


「お前には『風の女神フレイヤ』が付いてるから大丈夫だろ。男なら幽霊が出たらぶっ飛ばしてやれ!それでもダメだったら俺かカイトを起こしに来ていいから」


「...わかった」


少し不安そうたが、まあ大丈夫だろう。

まったくミーナめ、余計な話をしおって。


「よし。それじゃあ、2階の風呂掃除お願いしても良いか?」


「うん。わかった!」

自身を取り戻したのか、シュウは2階に駆け上がって行った。


うちの店は2階建で、1階は基本珈琲店として営業し、2階は従業員の部屋が数部屋と、お風呂と、トイレがある。

2階に部屋がある理由は、元のオーナーがそう言う作りにしたからだ。


思えば昔、夜眠れないときは姉ちゃんと一緒に寝てたな...

そう思うとシュウの事は笑えない。


そんな事を考えていると、2階からシュウの叫び声が聞こえてきた。


「ウワァァァァァ!!!」


今度は何事だ?


悲鳴を聞きつけた俺たちは2階の風呂場に向かう。


「おい、今度はなした!?」


そこには風呂場の鏡の前で腰を抜かしているシュウの姿があった。


「か、かか...鏡...」

鏡に向かって指をさし、何かを言っている。


「鏡ぃ?」

鏡の方へ目をやる。その違和感には俺もすぐに気がついた。


「あれ、うちの鏡...こんな色だったか...?」


そこにあった鏡は明らかに、鏡面まで紫色に染まっていた。



第10話 完

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