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小さな珈琲店の悪魔  作者: 悠
はじまり
1/14

第1話「小さな珈琲屋さん」

この世界に神様はいるのだろうか。


『嫌だ!母さん!死ぬなぁ!』


いるのなら...


『ユウタ...お姉ちゃんのことお願いね...』


この世界は、なんて残酷なのだろうか。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


この世界は神様が創造した。っと、言う話は、私たちが生まれる遥か昔から語られていた。

神が空地海を作り、生物を作り、我々に知識、感情、意思を与えた。

私たち生物は、そこから生きることを、次第に愛を学んだ。


と、魔導学校の教科書に色々難しい事が書いてあるが、私はそのような偉大な存在がこの世界にいると思ったことがない。

理由は簡単だ。まず、「神」と言う存在を誰も見たことがない。私の友達、先生、親、祖父母、今は亡き曾祖父母もだ。見たことのない存在を教科書越しに語られて「すごい!」なんて、少しひねくれた性格の私は言えない。思っても「そんな人がいるんだ」程度だ。そんな凄いことができるのなら、今すぐ私の前に現れてみろ!...ほらね。だから多分、私は歴史が向いていない。


そして次に、なぜ我々の争いを止めてくれないのか。

「神」は生物を作った。なら、私たちの親であろう。子供が喧嘩をしたら、親は仲裁に入り、互いの話を聞き、叱ってくれる。ときには慰めてくれる。でも、「神」は何もしない。自分が作り出した生き物が戦争や悪事を行なっていても、何も言わない。ただ見ているだけなのか?

「信じれば救われる」と、協会の神父が言っていたが、神を信じ続け、戦争で死んでいった人もいる。そうやって死んでいった者達は、人生の終着点で何を思ったのだろうか。信じられた側は、何を考えていたのだろう。「生物の寿命は、生れながら決まっている」とでも言うのだろうか。


次第に私は思う。「そもそも神なんていない」と。まあ、信じていようがいまいが、私の生活に支障はないので「そんなすごい人がいた」程度で覚えおくことにしていた。でも、もし「神」がいるのなら、聞いてみたい事がる。


「神」よ、あなたはなぜ、私たちを作りだしたのですか?




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


第1話「小さな珈琲屋さん」


どうしてこうなった?わからない...ただ、いつも通り変わらない生活を送っていただけなのに...


私は先程起こった事を思い返しながら、多くの人々が行き交う街道をフラフラと歩いていく。

通りすがっていく人々は皆、賑わっていた。いや、賑わっているのはこの国全体だ。

今日は年に一回開催される「フリデント王国」の平和祭の前夜祭。本番は明日だと言うのに、待ちきれずお酒を飲んでは騒ぎ、ヘンテコなダンスを踊り、ショーを見せ、みんな楽しそうだ。


ここまで賑やかだと、さっきの事が嘘だと思ってしまう。だが、それは隣を見てすぐにわかる。


「ユズ...ヒカリ...」


いつも側にいてくれた、大切な友達はここにいない。

今頃、殺されてしまったのだろうか。助けを呼びたいが、奴にかけられた「呪い」のせいで私は何もできない。


「うぅ...ッ」

自分の無力さに、涙が溢れた。


そんな私にはお構いなしと言わんばかりに、街道の奥から大きな歓声が聞こえてきた。どうやら王国の騎士達が、王に命じられた「モンスター討伐の任務」から帰ってきたみたいだ。あたりは完全にパレード状態である。

戦争が無いこの国を脅かすものはモンスターだけ。稀に、ギルドのハンターでは太刀打ちできないほどの強力なモンスターが出現するのだとか。


「わ!ちょっと!」


パレードがこちらに来るにつれ、人混みが波のように流れてきた。私はその波の中に溺れてしまい、なんとか壁側に出ようと足掻く。が、波は自然に私を街道横にある路地に私を押し、さらにその衝撃で石で作られた地面に尻を打った。


「いったぁ...ん?」


私は吐き出された路地の横にある、だいぶ年季の入った木製の扉が目に入った。その横には看板がかけてあり「Bonds」と言う文字と一緒に可愛らしいコーヒーカップの絵が書いてあることから察すると


「コーヒー屋さん...?」

こんなところにコーヒー屋なんてあったんだ。


私は何かに惹かれるようにお店のドアを開けた。

チリンチリンと、ドアに付けてある鈴の音が店内に響く。「いらっしゃいませ」の声が飛んでくるかと思ったが、店員は不在のようだった。それどころか、店内にはお客さんすら見当たらなかった。


「あれ?今日はお休みだったのかな?」


今日は前夜祭だ。別にお店が休みでも変でもないのだが、カウンターに置かれたふたつのコーヒーカップから立つ湯気から、先程まで誰かがいたと言う状況がわかった。なのに、無音だけが私の鼓膜を突く。


「お客さん?」


突如現れたその声に、全身の、いや、それどころじゃない。心臓が私の代わりに悲鳴をあげた。当の私は、あまりの衝撃に声が出なかったが、あまりの衝撃に、胡瓜に驚いた猫のように飛び跳ねた。後ろを振り向くと、そこには黒髪の若い青年が立っていた。


「ごめんごめん。驚かすつもりはなかったんだよ」


嘘つけ!っと、心の中で青年に一喝いれたところで深呼吸。


「あ、あの...あなたは?」

私は恐る恐る、青年に質問した。


「俺はユウタ。ここの店長やってるんだよね。お客さんだよね?なんか飲んでいく?」


そう言って、店長さんは私をカウンター前の椅子に案内してくれた。


「店長さん、お若いのに大変ですね」

いや、自分もまだ学生だが、つい言ってしまった。


「本当だよね〜俺まだ19歳だよ?この歳で店長なんか任されてプレッシャー半端ないって」

店長は笑って答えてくれた。19歳...私より年齢は上だと思っていたが、何があったらコーヒー店の店長なんか任されるんだろう。


「まあとりあえず座って座って。俺のことは気軽にユウタって呼んでよ。はいメニュー」


そう言うとユウタ君はカウンターの中に立ち、私にメニュー表を見せてくれた。私はそのメニュー表を見てすぐ違和感に気づいた。


ブラックのホットかアイスしかない...いや、他にもいくつか料理やコーヒーの種類はあるのだが、名前の横に「品切れ」の文字がついていた。私はユウタ君の顔を見上げた。あなた、なんて苦笑いをしているんだ...え、嘘、まだお昼前だよね?


「ごめんね...うち、あんまお客さん来ないし、従業員も俺含めて3人しかいないからさ...」


「あぁ...それじゃあ、ブラックコーヒーのホットで...」


「ミルクもつける?」


ミルクはあるんかい。っと、心の中でツッコんでしまった。

「じゃあミルクもお願いします」


「了解!すぐ作るから待っててね!」


そう言うと、ユウタ君はコーヒーを淹れる準備を始めた。


その合間に私は、先程のことを思い返す。

本来なら早く助けに行かなくてはならないのに、何をやっているんだろう。でも、誰かに相談したくても、奴の「呪い」で何もできない。私はまた、自分の無力さに涙が出そうだった。今頃、あのふたりは無事だろうか...


「はい、おまちどうさま」


目の前に置かれたブラックコーヒーで、私はハッと我に返った。


「砂糖は好きなだけ使ってね」


彼はは私の隣にある椅子に座り、来る時から置いてあったカウンターのコーヒーを飲み始めた。

あ、それ貴方のだったんだ、と、謎がひとつ解消されたところで、淹れたてのコーヒーを一口いただく。

ユウタ君の淹れてくれたコーヒーは普通に美味しかった。気が利いたコメントは出来ないが、気持ちが落ち着く、そんな感じだ。


「ねぇ。何かあったの?」


「へ?」唐突な質問に対して思わず間抜けな返事をしてしまった。


「顔色があんまよくなさそうだし、カップ持つ手は震えているからさ」


その言葉で、今朝の出来事がフラッシュバックする。


「具合でも悪いのかと思ったけど、違うしょ?君の服から微量だけど、火薬と煙の匂いがする。今日は前夜祭だけど、花火を使うようなことはまだやっていないのにね。そして」


彼は私の首に手を触れた。


「ここから魔力を感じる。誰かに能力エレメントを使われたんじゃないかな」


彼の言う通りだった。私は今朝、友達と学校に向かう途中、ある3人組に襲われたのだ。この首に付けられた

「呪い」は、その時に付けられたものだった。「俺たちの事を話した瞬間、起爆するようになっているからな」その男はそう言っていた。


「その能力、解除してあげようか?」


「え?」

この人、今なんて...


「俺なら、その首に付けられた呪いを解除することができるよ」


私は彼に、首にかかっている呪いの解除をお願いした。


「了解。じっとしててね」


そう言うと彼は左手につけていたグローブを外してみせた。露わになった彼の左手は、爪の先まで全て真っ黒に染まっていてかなりおぞましかった。


「気持ち悪いよね」


「あ、いえ...」


気持ち悪い...というより、怖い。まるで闇に飲み込まれそうな感じだ。


漆黒に染まった彼の左腕が、私の首に触れる。その左手は冷たい。私は幼い頃、母親と手を繋いだ時のことを思い出した。母の手は暖かかった。安心できる温もりと心地よさだった。この人の手は....


「はい終わり」


「あ...え?」

私は呆気にとられてしまった。もっと大掛かりな事になると思っていたからだ。彼が私の首に触れてからまだ数十秒しか経っていないのに、もう終わってしまったのか。


「もう喋っても大丈夫だよ」

彼はニコリと笑った。


本当に解除されたのか心配だった。このまま今朝あった事を話した瞬間に「ドカーンッ!」なんて事になったらシャレにならない。別に彼を疑っているわけではないが、解除前と後での変化を感じられない。でも、心なしか少し体が軽くなった気がした。


「ほんとほんと大丈夫だって!君の首からはもう魔力も感じられないし、その能力も解除して俺が喰ったからさ」

彼は漆黒に染まった左手を私にひらひらと向けてそう言った。


喰った?「呪い」を?よくわからないが、私は彼の言葉を信用することにした。


「あ...えと、け、今朝...」

心臓の音がうるさい。


「変な、お...男たちに、友達が」

体が熱い。でも、言わなきゃ!


「友達が攫われたんです!」


店内は静かだった。私、生きてる?


「ね?言ったでしょ?」


彼の言う通り、「呪い」は解除されていた。私は嬉しくなり、その場に泣き崩れてしまった。攫われた彼女たちを助けられるからだ。ならば泣いている場合ではない。私は制服の袖で涙を拭いた。


「ユウタ君、あの...」


「わかってるよ。その子達を助けて欲しいんでしょ?」


「...!はい!」


私は彼に、起こった事を全てを話した。今朝、学校に遅刻しそうだった私達は、普段あまり通らない街の裏通りを通ることにしたのだ。走っている途中、交差点で横から現れた男にぶつかり転んでしまう。男はその拍子で運んでいた箱を落としてしまったので、私は謝りその箱を拾おうとしたら、蓋が開いていたのだ。見たくなくても、蓋が開いていたならば視線は中の方にいってしまう。中に入っていたのは人間の頭部だった。その時点でもう遅かった。私達は数人の男に囲まれていた。そのうちの1人が、私の首を掴み、なにかを唱えたのだ。おそらくそれが「呪い」だったのだろう。


「私を逃がしてくれたのは友達なの」


「その男って、こんな奴じゃなかった?」

彼はそう言うと、一枚の写真を見せてくれた。そこに写っていたのは、私の首に呪いをかけた男だった。


「その感じだと、君が会ったのはコイツで間違いなさそうだね」


私は頷いた。


「コイツ、名を『ボマー』って言ってね。あちこちの街で爆破事件を起こしている犯罪者なんだ」


「は、犯罪者!?」


「最近、近くの町を襲ったらしくてね。以降行方をくらませていたんだけど、まさかこの街に来ていたとはね」


ユウタ君は少し困った顔をしていた。そしてポケットから折りたたみ式の携帯を取り出し、どこかに電話をかけ始めた。


「カイト?『ボマー』の件で、情報を持っている子いたんだけど、今から店に戻ってこれる?...うん。了解」


カイト?私が少し気になった顔をしたのに気づいたらしく


「あぁ。うちの従業員だから大丈夫だよ。見た目クールだけど中身は良い奴だから」


「はぁ...」


「それでなんだけど、この街のどこかに奴のアジトがあるに違いない。そこに君のお友達もいると思うよ。革新じゃないけどね」


それだけでも私の心は少し軽くなった。助けられる希望が少しでも見えたのだから。後は彼女達の無事を祈るだけだ。


私がそう思っていたときだった。突然、お店のドアが開いた。


「いらっしゃいませ...ってカイトじゃん!早かったね」


この人がカイトさん...爽やかな印象のユウタ君とは逆で、本当にクールな印象だった。

彼の腰には二本の剣がかけてあった。ハンター...なのかな?


「場所は割り出せそうか?」


「おおよその所はね。後は現場に向かってみる」


彼はそう言うと、カウンターの下から真っ黒な刀を取り出した。


え?珈琲屋さんなのに武器?え?


「んじゃ、行きますか」



〜西の街「レーニアス」裏通り〜


私達は、今朝奴らに襲われた現場に来た。何か手がかりを探すためにだ。


「ユウタ、これを見ろ」

カイトさんが何かを見つけたようだ。それは地面に散らばった黒い粉だった。それを手に取り匂いを嗅ぐユウタ君。


「火薬だ。それと少しながら魔力の反応、間違いないね」


「やはり奴は能力者エレメント・マスターだったか」


能力者、通称「エレメント・マスター」。この世界には、特殊な能力を持った人間が沢山いる。体内にある魔力を消費し、様々な力を使うことができる。水を起こす能力。風操る能力。特定の動物に変身できる能力...様々な種類の能力エレメントがこの世界にはある。


生まれつき持っている者や、成長の過程で手に入れる者など、能力エレメントの習得方法は色々あるが

どれも簡単ではない。望んだ能力を手に入れることは難しいが、勉強や厳しい訓練次第で目覚めることもある。そして、能力を得た者は常人の倍の身体能力を得ることができる。


ちなみに、私は能力者エレメント・マスターではない。最近、魔導学校で回復魔法を覚えたばっかだし、これは能力エレメントじゃなくて下位能力...


「これは気を引き締めないといけないな。カンナ、任せてもいいかな?」


ユウタ君が突然、自分の陰に話しかけ始めた。その瞬間、陰の中から女の子の声が聞こえてきた。


『え〜!私も行くのかぁ!?』


影が喋った!?いったい、何が起きているんだろうか。


「頼むよ。カンナがこの子を守ってくれるとすげぇ助かる」


『はぁ〜そもそも敵のアジトに一般人連れて行くかよ...まぁ、わかったよ。そのかわり、この依頼終わったらスイーツな!』


「わかったよ」と、ユウタ君が何かにそう答えた時だった。彼の影から女の子が出てきたのだ。何を言っているかわからないと思うけど、私が一番わかっていない。けど、女の子が出てきた。


「こいつの名前はカンナ。悪魔族だけど、悪い奴じゃないから安心して」


悪魔族!?教科書とかで見たことあるけど見た目が全然違う。私が知っている悪魔はもっと恐いイメージだったのに、ここにいる悪魔族の子は少女だった。もうわけがわからない。


「お前、名はなんと言う?」


私は数秒フリーズした後に答えた


「み、ミーナです」


「ミーナか。私はカンナだ。よろしくな!」


そう言って彼女は私の手を握った。




〜西の街外れにある廃倉庫付近〜


「町人に聞いたところ、数日前から見かけない男たちがあの倉庫を出入りしている姿を目撃したらしい」


「ならここで決まりだね。あの倉庫の中からは火薬の匂いもするし」


火薬の匂いなんて全然しないんだけど、この人の嗅覚はどうなっているんだろう。


「それじゃあ、カイトは回ってくれる?カンナとミーナは俺についてきて」


「わかった」


「ほいほ〜い」


「わ、私もついて行って大丈夫なんですか?」


正直、不安しかない。相手は能力者エレメント・マスターなのだから。下位能力しか使えない私がついて行ったところで、足手まといになってしまうのは一目瞭然だ。


「大丈夫大丈夫。カンナがいれば心配ないよ」


「なーに?私がいても不安か〜?」


あ、いえ、そういうわけじゃ。


「奴らの事は俺らに任せて、その隙に友達を救出するんだ。ここの倉庫、作りは単純だからすぐ見つかるはず」


そうは言われても、やはり不安はある。が、今朝は2人に助けられたのだから、今度は私が助ける番だ。


「わかりました」



〜廃倉庫入り口〜


ユウタ君の言う通り、この倉庫の作りは単純だった。正面入り口に大きなシャッター、その横に人が出入りするためのドアがついていた。ドアから中の様子を伺っていたところ、ユウタ君の携帯にメールが届いた。差出人は倉庫裏で中の様子を確認していたカイトさんからだ。


「『中に武装した男が1人。拘束されて気絶している女の子が2人。もう1人は外でタバコ吸ってたから仕留めておいた』だってさ。仕事早いな〜カイトは」


女の子が2人...きっとユズとヒカリだ!


「武装されてるのは少し厄介だな...ここはカンナの出番かな?」


「お、いいのか?」


「ほどほどにね。ミーナは俺が付いてるから」


「やったー!」と言いながら、彼女はドアから堂々と倉庫の中に入って行った。


「大丈夫なんですか?相手は武装しているんですよね?」


いくら悪魔族とはいえ、見た目は少女だ。


「まぁまぁ、見てて」


そのまま彼女は音も隠さず、男の前に姿を表した。


「誰だテメェ。何しに来やがった」


カンナちゃんに銃口を向ける男。子供に銃を向けるってどうなのと思ったが、かなりやばい状況なのでは?早くなんとかしないと!


「んとね、あのね、今日前夜祭だから、友達とかくれんぼしてたんだけどね...その、迷子になっちゃって...」


可愛い。いや違う。マジか。さっきの雰囲気とのギャップで私もやられてしまった。っていうか、あの子さっきより幼くなってない?


「あいつ、自分の体を好きな年齢に変えることができるんだよ。若くしたり、大人にしたり。まぁ、実年齢は俺より上なんだけどね。ほら、悪魔族は人間の倍以上は生きるって言うでしょ?」


なんだって...なんでもありなのかあの子は。


「あぁん?ここはガキのくるところじゃ...」


「眠れ」


そう言うと彼女は、男の顔の前で指を鳴らした。男は魂でも抜けたかのように地べたに崩れ落ちた。


「終わったぞ〜」


「よし行こう」


なんて恐ろしい子なんだ...


倉庫内に入ると、中には大量の木箱が置かれていた。私たちが中を見ていると、壁側で横たわっている人を見つけた。あれは


「ユズ!ヒカリ!」


私は彼女たちに近寄り、体を起こした。外傷はないが、眠らされているようだ。よかった...ちゃんと生きてた...生きていることがわかっただけで、私は安心て泣きそうになってしまった。


「安心するのはまだ早いよ。奴がまだ見つからない」


そういえば、あの写真の男「ボマー」が見当たらない。


「ひとまず彼女たちの縄を解いてここから出るぞ。そこら辺に置いてある木箱、中身は全て火薬だ」


カイトさんの言葉に従い、彼女たちの縄を解く。この木箱全てが火薬?ボマーと言う男は、こんな大量の火薬で何をしようとしていたのだろうか。


「ユズ!起きて」

ダメだ起きない。


「何か強力な催眠術でもかけられたみたいだな。これは背負って行くしかないぞ」


カンナちゃんがヒカリの頭に手を当てながらそう言った。私がユズを背負い、カイトさんにはヒカリをお願いした。


「ユウタ、行くぞ」


「あぁ、ちょっと先行ってて」


私たちは、彼女たちを安全なところに運ぶため先に廃倉庫を出た、そのときだった。私の背後から爆発音が鳴り響いた。そう、廃倉庫の中にあった火薬が爆発したのだった。私は爆風で軽く飛ばされてしまい、転んでしまった。


「ユウタ君!カンナちゃん!」

2人はまだ倉庫の中だ。嘘、死んだ?いやだ、そんな...


「人のアジトでな〜にやってんのかな〜?」

それは聞き覚えのある声だった。この声は...あの男だ。


「アイツらも使えね〜な。人質をちゃんと見てろって言ったのによぉ」


こいつ、まさか自分の仲間も一緒にいるとわかって爆破したの!?


「明日は平和祭だろ?なんかムカつくから爆破してやろうと思ったのに、俺の計画を台無しにしやがってよぉ」


こいつ、クズだ。今すぐ立ち上がってこいつを殴りたいのに、さっきの爆風で転んで足を怪我してしまった。


「少しは気晴らしになったけど、まだイライラするからお前で遊ぼうかな」


ボマーが私を見て不気味に笑う。その顔を見て私はゾッとした。恐怖で体が動かなくなってしまった。悔しい..こんなクズに、殺されるなんて...だれか...だれか助けて!


「おいおいおい。うちの依頼人になにやってんだ?」


その声は、私の背後で燃え盛る倉庫の中から聞こえた。


「いやぁ焦ったぜ。まったく派手なことやってくれんな」


彼は爆炎の中から現れた。


「ユウタ君!!」


今日はやけに涙が出る。


「テメェ!あの爆発をモロに受けて、なんで生きてやがる!?」


「お前さん、自分の仲間ごと爆破するとか正気か?私が連れ出してなかったら今頃死んどったぞ?」


カンナちゃん!彼女の両手には敵の男が2人が掴まれていた。なんて馬鹿力なの...


「人質は安全なところに置いてきたぞ」


「おん!お疲れ様!」


カイトさんはいつのまにか、ユズとヒカリを運んでいた。爆発の衝撃で、私が倒れたときに回収していたみたいだった。


「さてと、ボマー。覚悟はできているな?」


「...ッ!!この、バケモノどもがぁ!」


ボマーは倒れている私の髪を掴み、能力エレメントで作り上げた爆弾を私の頭に近づけた。


「いたッ!」


「動くとコイツの頭を吹き飛ばすぞ!」


「お前ッ!カンナなんで一緒についてないんだよ!」


「おぁ!私としたことが!ミーナ今助けるからな!!」


助けるって言ったって...この状況じゃ...


「調子に乗りやがってガキどもが。助けることなんて無理に決ま...って?」


ボマーの様子がおかしい?それと、カンナちゃんに目が薄らと赤く光っているのが離れていてもわかった。その眼差からは、少女のような可愛らしさは1ミリも感じられなかった。あれは「獲物」を見つけた時の、殺意の眼だ。


「バーカ。あまり悪魔をなめるなよ?」


「なっ...んだ...?かッ、体が...動かねぇ...」


ボマーは私の髪を離し、その場に座りこんでしまった。その隙に、カンナちゃんが私を回収してくれた。


「ごめんな。痛かっただろ?」


彼女はそう言うと、私の頭を撫でてくれた。


「クソがぁ...まだ、終わっちゃいねぇぞ...」


ボマーにはまだやり返す体力があるらしかった。奴は能力で作り上げた爆弾を私とカンナちゃんい目掛けて投げてきた。


大きな爆発音が遠くで鳴り響いた。私は何が起きたのかわからなかった。


「お前の爆弾は、俺の能力で喰った」


「何だとぉ!?」


奴が爆弾を投げた瞬間、ユウタ君が私たちの前に立った。彼が左手を前に構えた瞬間、黒い渦のようなものが現れ、爆弾を飲み込んだのだ。


「『闇喰ヤミクイ』全てを喰らう闇の力だ」


闇を操る能力者『エレメント・マスター』


「な、ならば!街にしかけた爆弾を起爆させッ!」


ユウタ君は手に持っていた黒刀を鞘から抜き、ボマーを斬った。


「ダメに決まってんだろ」


「ば...バカな...」


斬られたボマーは、地べたに倒れた。


「安心しろ。致命傷は避けてやったぞ」


「依頼完了だな!」


「なーにが依頼完了だよ。ミーナが人質に取られた時は焦ったぞ」


全て終わった。これで、やっと安心だ。そう思うと、なんか眠くなってきたような...あれ、目の前が暗く...





ここはどこだろう。真っ暗な世界。みんなどこに行ったんだろう。ユウタ君、カイトさん、カンナちゃん、ユズとヒカリは?そういえば、あの後どうしたんだっけ。ボマーを倒した後、私気を失ったんだっけ?体が重い。う、動けないぃぃ!


ハッ!?


目が覚めたら、身に覚えのない天井が見えた。どうやら、どこかの部屋のベッドで私は寝ていたらしい。


「ここは...」


横に目を向けると、見覚えのある顔が心配そうにこちらを見ていた。友達のユズとヒカリだ。


「ミーナ!目が覚めたんだね!よかったぁ!」


ユズは私が目を覚ましたことに気づくと、泣きながら顔に抱きついてきた。


「ンブッ!?」


苦しい苦しい!


「私、店長さん呼んでくるね!」


ヒカリはそう言って、部屋を出て行った。


私は顔に張り付くユズを何とか剥がした。そのとき、私にかけてあった布団の中にある違和感を感じた。恐る恐る布団をめくると、そこにいたのは私に抱きついて寝ているカンナちゃんだった。どうりで体が重いと思ったら...


「んぁ...ミーナ起きたのかぁ...良かったなぁ...」


「カンナちゃん、私を看病しててくれたんだね」


「おうよ...」っとだけ言って、彼女は二度寝に入ってしまった。いや、私動けないんだけど。


「おす。体調はどうかな?」


いや、こっちのセリフなんですが...なんであの爆発を直に受けてそんなピンピンしているんですか。まぁ、足の痛みも落ち着いているので「良い感じです」とだけ答えた。


ユウタ君の話によると、あの後、爆発に気づいた警備隊が駆けつけて、ボマーたちはそのまま逮捕されたらしい。


そっか。全部終わって、私hいつもの生活を取り戻せたんだ。


「ありがとうございました」


色々驚くこともあったけど、この人たちにはたくさん助けられた。


「あの...今回の件で、報酬みたいなのって...」


「あぁ!そうそう、その事なんだけどね」


「依頼」として頼んだのは私だ。ここで報酬を払うことが彼らに対するお礼だ。でも、いったいいくら払えばいいんだろう...


「ミーナ、うちで働かない?」


「へ?」





第1話 完

こんにちは。ハルカです。


「小さな珈琲店の悪魔」第1話を読んでいただき、ありがとうございます。

プロフィールにも書いてあるとおり、学生時代は国語が一番苦手だったので、文章表現がおかしい、読み辛いなど色々あると思います。勉強不足の自分を許してくれぇ...


頭の中には結構先までストーリー出来てるんですが、文章として起こすのがこんなに難しいとは...


ほんのちっとネタばらしすると、これから色々な仲間が増えていきます!それがどんな奴か、どんな能力を使うか、どんな過去を背負っているかなどは教えられないけど、頑張って更新していきます!


はぁ、早くiPad用のキーボード買うか...

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