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[短編集] 猫な上司と部下の日常  作者: まめ苔鳥
1/6

上司が猫になってしまった話

上司(先輩)→猫

部下(後輩)→神奈


「…で?これは一体どういう事なのでしょうか」

「見たままだよ、神奈(かんな)…呪詛返しに失敗して、猫の姿になってしまったんだ」


上品なグレーの毛並みに、ピンと立った形の良い三角耳。柔らかい肉球のついた手足の先は靴下を履いたように白く、アーモンド形をした目の色は人間だった頃と同様、優しい黒を宿している。


いやはや、困ったねぇ


口ではそう言いながら、特別焦った素振りを見せるわけでもなく、上司はのんびり毛繕いを始めた


上層部(うえ)は何と…」

「姿が猫であること以外は特に問題がないから、今まで通り任務をこなしながら元に戻る方法を探せだってさ」

「……姿が猫になってる時点で大問題だと思うんですがね…」


怒りと呆れが混じった溜め息を吐く


我々[退魔師]は古より人の世を魑魅魍魎から守る剣であり盾であり、駒である

雑な扱いを受けることには慣れているが、これは…


「…あんまりだよなぁ」

「まぁそう言うなよ、神奈」


ポツリと溢れた本音を、猫がたしなめる。


「研究部に『貴重な症例』として被験体にされなかっただけ、僕は有難いよ」

「そんな事になったら、うちの式神()全部引き連れて暴れてやりますから」


研究棟なんて、跡形もなくぶっ壊してやる


「穏やかじゃないねぇ」


カラカラと楽しげに笑う猫を複雑な思いで見遣る

この人はどうして…


目の前にいる柔らかい毛玉を抱き上げてみた

温かくてずっしりと重い


「……生きててくれて、ほんとによかった…」

「…僕もそう思うよ」


首筋に顔を埋めると、猫は目を細めて頬を擦り寄せた


呪詛返しの失敗…それは本来『死』を意味する

死を免れ、猫の姿に変じてしまうなど聞いたことがない。

貴重な例であると、研究部の連中に連れていかれてしまったっておかしくない。

人間に戻れる保証も…ない


それでも


『生きていれば、希望がある』


「神奈、泣いているの?」

「泣いてませんよ… 涎です」


なんで涎垂らすのっ?!


腕の中で慌てる毛玉の重さと温かさが心地よい

どんな姿になったって、貴方は貴方だから…


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