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第三話 『神様へ。人間の作り方見直せ』

ある人「神様、質問です!人間の作り方はどーなってるんですか?!」


神様「記憶にございません。私ではありません。私じゃないんですぅぅううう!!」


ある人「」

 俺がボッチへと堕ちた話は、また別の機会で話すとして━━━━━━━


 今以上にボッチを後悔したことはない。

 この空気、この時間、そしてこのメンツ。どれもこれもが、ボッチ故に地獄となる。

 喋ろうと思えば喋れない事はない。寧ろ、『彼女達』と喋れないクラスメイトなどクラスメイトではないに等しいものである。

 つまり、俺と隣の彼は彼女達とはクラスが違う事になるのだが、それはそれ。


 それにしても、この状況はいささか酷過ぎるモノである。


 ブラウンに染めた髪を手で弄りながら、大きくため息を吐く元気の良さそうな少女。

 配られた要項を真面目に熟読する、黒髪ロングの清楚な少女。

 顔はクラスで二番目にカッコいいと謳われるが、趣味がリア充とは遠く無縁故友達がいない茶髪のイケメン少年。

 そして、俺。


 何これ。新手のイジメですか?修学旅行中に精神的苦痛によって死ねと?それともウチのクラスの四天王の内二人を付けるから、ボッチを解消して来いとか言う無理難題?

 どれを取っても、ワーストツーをトップツーが甚振る現場しか浮かばねぇわ。


 一人、いや一班、和気藹々と修学旅行の計画を立てる他の班とは違い、進退両難で犬猿どころか犬猿鳥猪の四尽くめの状態だ。


 つまり、結論を言おう。

 俺の修学旅行の班は、浅黄楓(あさぎかえで)白澤茜(しろさわあかね)、そして柳涼太の四人。

 内二人はボッチで、残り二人は学年女子トップスリーの内の二人だ。


 うん。あのハゲ担任、絶対殺す。バーコードみたいな頭しやがって。


 俺の怒りは次の瞬間に、浅黄楓が喋るまで猛威を振るった。あと残り三秒である。




 ーー



 四月は文字通り瞬く間に過ぎ去った。

 桜は早々と散り落ち、新学年だと浮かれていた気持ちも大学やら就職やらを考えさせられるに当たって微塵と消えて行った。


 今俺を救ってくれるのは、窓から流れ込んでくる春風だけである。

 暖かい陽気に、暑くも寒くもない涼しい風。

 ホント、日本に四季がある事を恨むのはこの時期だけだ。夏は早く冬になれと、冬は早く夏になれと願い続け、秋は願う間も無く過ぎ去ってしまう。


 机に顔を置いてしまうと、もう後戻りはできない。陽気が、風が、俺の体を優しく包み、夢と言う名の楽園へと誘って来る。


「はぁ……早く学校終わらねぇかな」


 それだけ溢し、俺の意識はその場で切れた。

 確かこの後の授業はホームルームだった気がする。何を話し合うんだっけ?何か重要な……俺の生死に関わるような事。あー思い出せねぇ。まぁ、いいや。んじゃ、起きた時の俺、せいぜい上手くやれよ。俺は今から楽園に行ってくる。


 ━━━━━━━━━あ、思い出した。


 今日のホームルームで決める題って、『修学旅行について』だった。




 ーー



「━━━━━━━つか、誰?」


 茶髪の少女━━━━━浅黄楓は思い出したように口を開いた。

 その声には半分ほど怒りがこもっており、残り半分はクエスチョンマークが入っている。その怒りと質問の矛先はもちろん俺と隣のイケメンボーイ。いや、俺だけなのかもしれない。うん、絶対俺だけだわ。


「それ、誰に言ってるの?」


 黒髪ロングの少女━━━━━━白澤茜は浅黄を冷やかすようにそう質問した。

 瞬間、俺の周囲二メートル強の範囲が氷点下へと到達する。二人の少女の目は一切の笑みが無い。凍りついた女帝のような目。蛇に睨まれたカエルではなく、大蛇が大蛇を睨んでいるに等しい現場だ。


 仲が良い、とか女子同士だから〜なんて雰囲気は微塵もなく、完全にバブル期のスケバン女子。釘バットを持たせてセーラー服を着せたら良い絵になるだろうな。その辺のヤクザも顔負けのドンだわコイツら。


「誰ってあんた達全員ですけど?」


「三年生にもなってまだ覚えていない人とかいるの?あなたもしかしてボッチ?」


 あ、ボッチって俺だけじゃなかったんだ!そこに歓喜を覚える辺り、俺は相当のボッチクラスだな。異世界転生する勇者並みのレベル。俺Tueeee!

 一人楽しそうに現実逃避している間も、彼女達の論争は続く。燃える炎のようにはいかないが、冷えきった氷のように冷たくはなる。

 いかんせん怖いのは変わりない。


「は?じゃあコイツ誰か知ってるの?」


 そんな中、俺の方へと矢先が向いた。

 いや、お前ら本人の前でそれはダメでしょ。「コイツの名前知ってる?」は流石に酷いだろ。俺の心はスタンドガラスだぞ。

 まぁ答えてくれたら結果オーライなんだけどな。


「えっ……。えっと……」


 あ、これ知らないパターンだ。故に彼女はパリピ。もしくはリア充。くそっ!これだから現実は残酷なんだ。

 ってか、この学年女子を仕切る二人が俺の名前知らないってどうなの?俺一種の天才じゃね?名前隠す天才……影の薄さ世界一……なんもカッコよくねぇわ。


「ほら?知らないでしょ?」


 あのですね。何を自慢げに言うてはるんですか。健気な兵庫県民に対する当て付けですか?そうですか。

 世も末だな。サッサと異世界転生したい。俺を召喚してくれる美少女はいませんか!金髪ヒロインだと尚喜ばしい!あ、体が豊かである事も追加で。どちらもいける口ですが、ね?


「……あのな、お前らの喧嘩に俺を巻き込むな。新手のイジメですか?」


「「は?」」


「あーいや、なんでもないです。続けてどうぞ」


 ほら、勇気を出してみればこのザマだ。しかも今ので俺の発言権は今後一切無くなったに等しい。

 おい、隣のえっと、名前なんだっけ?爽やかイケメンボーイ君でいいや。君は多分、笑顔で彼女達の後ろを歩いていれば、何も言われないだろうから上手くやるんだよ。

 僕?僕はちょっと修学旅行の日を何でサボるか考えてるから放っておいてくれ。


「……そうね。誰も名前を知らないんじゃ、これからを考えると不都合だわ。あなたから名前を言ってくれるかしら?時計回りでね」


「なんであんたが仕切ってんのよ?仕切らないといけない体質なわけ?」


 余りにも「しょうがない」を全面に出して意見を言う黒髪の少女に、ブラウン髪の少女は口を挟む。またしても一触即発の状況の中、黒髪の少女━━━━━━白澤茜に指名された爽やかイケメンボーイ君は優しそうな笑みを浮かべながら口を開いた。


「拙者、柳涼太(やなぎりょうた)と申す。以後よろしくぅ!」


 なんと言えばいいのだろうか。

 予想外?想定外?いや、なんか違う。見た目とのギャップが激し過ぎて、俺の脳の処理が追いつかない。

 あ、これってネタか。ネタなのか?えっ?どっち?

 誰だよ爽やかイケメンボーイなんてクソみたいなあだ名付けたの。どっからどう見ても爽やかじゃないじゃん。どちらかといえば陰湿に近い気さえする。けど、全てを覆すモノを持っている。『イケボ』&『イケメン』。神様、作る時にちょっと個人の思いが入ってるのはどうかと思うんですけど?


 さて。この班が壊滅的で、お互いがお互いを嫌う班なのは理解した所で、次は俺の自己紹介の番となった。

 恥ずかしいなどと言った感情よりも、どうしたら機嫌よく終わるか、なんていったご機嫌取りのような感情が先に現れる時点で、俺の心は荒んでいると理解する。

 柳涼太と言った少年のインパクトが大き過ぎた為、アレを越さなければ俺のインパクトは薄い。


 別段、ここは合コンの場ではなく、単なる高校生の修学旅行の自己紹介の場だ。

 俺の名前を覚えくれ!なんて発想は毛頭ない。どの道この三人との関係など人生の中で言えばほんのつま先程度な物。

 慌てず騒がず適当に流すのが吉である。


 軽くため息に似た息を吐き、ゆっくりと口を開いた。


「黒垣蓮です。よろしく」


 うん。言ってみて思ったが、シンプル過ぎたな。無愛想、と認識されただろうか。

 おかしいな。小中の時は結構自己紹介得意だったんだけどなぁ。やっぱり他人と喋らなくなると、途端に喋れなくなるってのは迷信じゃなかったのか。

 ま、もう遅いか。


 太陽が雲により陰り、教室内が少し暗くなった。気候までもが俺の自己紹介にガックリしているのか、なんて思いながら今日も俺は日を過ごす。

 これはこれでなんだか居心地のいい気さえし始めて来た。「居場所がある」なんて思うから帰りたくなる。だったら初めからその『居場所』自体を消してやればいい話。俺とコイツらはこの先生涯無縁な関係を築き上げていくだろう。連絡の交換は元より、会っても話すことはなく挨拶もない。同窓会もコイツらは呼ばれても俺は多分呼ばれないだろうしな。

 だってこのクラスで唯一クラスのグループに入ってないの俺だけだぜ?入ろうかと思った事もあるが、誘われないから入ってない。先ず誘ってくれる友達がリストにいない。よって逆説的に無理。

 俺が何をしたって言うんだ。

 まぁ?確かに?高校一年のちょうど今頃に問題は起こしたよ?だからってお前ら、いつまで根に持つんだよ。もうお前ら蓮根でいいわ。ずっと繋がっとけ。


 そ。俺の居場所はこのクラスにはない。ないと言えば自然に消えた印象になるのでこう言おう。なくされた、と。

 学級という場は、ある意味国と似ている。委員長が大統領、総理の立場にあり、各委員がそれを補佐する大臣の立場にある。何も役職のない人は市民とし存在する。世は民主主義。結果論で言えば多数決の世界。つまり仲間が多いものが勝つ世界だ。戦国時代のような下克上は許されなく、腕だけで生きようとするのも又に同じ。

 あぁ、言い忘れていた。この学級って言う国は日本やら他国とは違い、中々に陰湿で裏切りが絶えなく、崩壊に近い国だと言うことだ。


「……しょうもねぇ」


 口の中で俺はそう溢した。

神様、部活動体験の感覚で自分と変わってくんねぇかな……。

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