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第十一話『暗闇に溺れる』

はい、えっとですね、そのですね……。

昨日はちょっと金色の羊?山羊?の大角を折りに行ってましたッ!!あとは30回ぐらいナイチンゲールさんの顔を見に回ったり……してました!!

明日からちゃんとまた投稿します。

 お化け屋敷。それは男としての度胸が試される場所。超カッコいいイケメンはともかく、見た目だけのチャラ男ニキは心を鋼のように固めて前を歩かなくてはならない。それができるかできないかで『リア充』か『非リア』の分かれ目になる。

 もちろん、超カッコいいイケメンさんは中身も色んな意味で図太いのでただの好感度を上げるようなもの。一方で元々非リアの人からすれば、彼女がいないのでどれだけ叫ぼうが喚こうだ関係ない。

 つまりお化け屋敷を一番楽しめるのは非リアなのである。

 と、後でお化け屋敷委員会にメールしよう。非リアだけ安くならないかなぁ……。


「蓮はお化け屋敷もジェットコースターもイケるクチなのでござるな」


「まぁ、お化け屋敷は脅かして来るのが機械じゃなきゃいいよ」


「何ゆえ?」


「だって、ロボットって生きてないじゃん。あー『なんかいる』的な感じがしないだろ?」


 逆に言えば人の場合は「あれ?これ居るんじゃね?」的な雰囲気がある。まぁ、ロボットの方は大体不審な点があるからわかるんだが。ほら、なぜか隙間がある壁とか。ベッドで寝てる人形とか。

 究極に怖かったのは、いきなり天井から下ろされた首だけ人形だな。アレはマジで泣きそうになった。後にも先にも外で泣いたのはそれだけだ。だっていきなり目の前に吊るされるんだぜ?しかも生首だけ。

 あれ?でもそれってどこのお化け屋敷だっけ……。


「次だよ次!楽しみだなぁ!」

「キャラはもういいんだな、お前……」


「で?そっちのビビリさんはなぜ黙ってるの?」


「……は?ジェットコースターごときでビビってた人に言われたくないんですが?」


「もう私はジェットコースター乗らないんでいいんですぅ!今からお化け屋敷だから!」


 キャラ問題の次は喧嘩かよ……。そろそろ俺にツッコミ以外の役割をくれよ、ホント。

 色々あるだろジョブが。モテ男とかイケメン男子とか、クラスの超人気者とか!超モテモテのイケメン男子とかッ!!


「……はいはい、煽んな煽んな」


 二人の横に立ち、どうどうっと怒りを鎮めに入る。今回のお化け屋敷分で白澤の弱点が露わになるも、浅黄がジェットコースターの件で弱点をだしたのでおあいこって所だな。

 ひでぇ話だよ、全く。つか、コイツらは何の為に争ってんの?アレか?日本一位とか目指してんの?男子かお前ら。


 そんなこんなでぐうたれていると、中からスタッフさんが現れ、「四名様ですね、どうぞ」と声がかけられた。

 足早に入る柳とは裏腹に、白澤は怯えながらも中へと入る。中にいた店員さんがルール説明もとい設定説明を喋り始めた。内容はこの前に置かれているお札を一枚、出口にいるスタッフに届けて欲しいとのこと。懐中電灯等の灯りの使用は認めない、と後から注意された。


「ま、何とかなんだろ」


「お札は拙者が持つー!」


「はいはい。サッサと行くわよ」


 一方で、白澤茜はジェットコースターの時とは一転した状態である。まぁ、向こうからしたら良い餌なんだが。お化け屋敷やら洋服屋。その辺のスタッフはよく客の様子を見ている。

 例えるのなら、柳と白澤の二人のうちどちらが自分の脅かしに驚いてくれるか?もちろん白澤だ。なにせ怯えてるんだからな。

 洋服屋はあれだよ……。迷い迷ってる奴がよく声をかけられる。コミ症からすれば勘弁して欲しい。あの人らは俺らが出す『声掛けるなオーラ』を粉砕するからなぁ……。この世で一番ボッチキラーは服屋の店員とまで言える。


「……健全真面目キャラのお前も、ここじゃただの女子だな」


「━━━━嫌な言い方ね。私は健全でも真面目でもないから」

「そりゃ悪い」


「私なんかをナンパする暇があるのなら、あのビッチ女の方が良いんじゃないの?軽そうよ、股」


「イキナリだな、おい」


 相変わらず氷の女王みたいな冷たさで受け答えをして来る。その氷の女王も白い不可思議な奴には弱いらしいが。


「……はっきりしないってのが嫌いなのよ。あなたと言い、そう言った妖といい」


「それだと俺が妖怪の類になるんですが?」


 下駄に黄色と黒のちゃんちゃんこでも着ろってのか?色々と危険過ぎるわ。


「一緒じゃない。この学校に来て、一回でも色を持った事がないあなたなんか」


 彼女はそう寂しく言い放つ。その時の彼女の顔はどこか陰湿で、脳裏に何かを浮かべている時のような顔だったように思えた。

 彼女が言う色とは果たしてどんな色なのだろうか。その疑問は答えがない問いである。

 俺が何も言い返さなかったからなのか、彼女の興味が消えたのか。彼女はサッサと先に進む柳と浅黄の後ろへと向かって行った。俺もその後を追おうと足を踏み出す。

 ━━━━色、か。

 その一文字が大きく脳裏に刻まれた。


 ーー


「ひっ……!」

「ファッッ!!?!!」

「ぁ、ぁああ!!」


「・・・・・」


 真っ暗闇の中を歩き続け二分ほどが経過した。時折「ぐわぁ!」っと奇声を発しながら飛び出す血だらけ人間や、床下から手を出して歩行者の足を掴もうとする女、あとは扉から出てくる人形さん。

 正直なところ、全く怖くない。多分ホラゲの方が怖い。あとは急に目の前に湧く敵モブとか。対象が全年齢対象と書いてあったので、まぁどっこいどっこいと言った所だろう。

 つか、白澤と柳は普通にビビってるとしても浅黄はカケラもビビってないだろ。絶対今の「ひっ……!」も演技じゃん。見ろよ白澤を。ガチでビビってる奴は悶えてる時みたいな声出すんだぜ?

 あ、次そこの扉から何か出る。


「━━━━ママァッッッ!!!」

「ひょぎゅうっ?!?」

「きゃぁああ!!」


 はい、悲鳴頂きました。

 まさか出てくるのが頭を斧でパッカンされてる赤ん坊だとは思ってなかったが。って、斧小さ過ぎじゃね?あー収納スペースとの関係ね。それは仕方ない。


「ふふふ……」


 隣を歩く浅黄から妙な笑い声が聞こえて来た。恐る恐るそちらの方へ視線を向けると、彼女の手にあるのはスマホが一つ。

 ……録音してたな。絶対してた。お前その録音したヤツって何に使うんだよ。怖くて聞けねぇわ。ねぇ、なんで女子ってこんな腹黒なの?天使はいないのかね?悪魔ばっかり?


「ご、ゴールだ!!」

「━━━━っ!」


 目の前には、大きな明かりが一つ灯っている。多分出口の明かりだろう。ビビり二人組は我先にとダッシュで出口へ向かう。その姿はまるで映画のワンシーンのような━━━━


 ━━━あ、


「ウォォオオオオオオオッッッ!!!」


 ドンッ!と横の壁をぶち破り、真っ黒の巨体が二人の目に姿を表す。二メートルほどの大きな巨体に、金属バットの四倍ぐらいある太い棍棒、そして足型の顔。アレはミノタウロスを模した怪物だ。

 なるほどね。これがこのお化け屋敷の魅力の一つか。出口だと思い意気揚々と来るお客に最後の渾身の一撃か。さすがの浅黄もコレにはビビったらしい。そして前を歩くターゲットとなっていた二人なんかは、腰を抜かして地面に座り込んでいる。人間、本気で恐怖に陥った時は涙も出ないらしい。あの二人にとってはそれが今だ。


「……びっくりしたー」


「他人の悲鳴を録画とかしてっからだろ」


「あ、バレてた?大丈夫、アッチは私のグロッキーな状態を撮ってるから!これでノーカンよ」

「お前らなぁ……」


 隣で声を漏らした浅黄と軽口を交わしながら、前でへたり込む二人に手を差し出す。柳は「だ、大丈夫。うん、ホント」とキャラもクソもない喋り方になり、白澤は魂が抜けたような顔に変貌していた。

 結論から言うと、このお化け屋敷はちゃんと考えて作られてるって事だな。それにまんまとハマってしまったのがこの二人、と。


 お化け屋敷ってホント寿命が縮んでいく気がする。目が涙で一杯になっている白澤の顔を見ながら、ふとそう思った。

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