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第零話『プロローグ』

 ふわりとした風が俺の頰を優しく撫でる。春の暖かい日差しと、熱くもなければ寒くもない気温が俺の睡魔に味方する。

 やはり春とは腹が立つが憎めない季節である。

 こうやって春を睨むのも、今年で五十回目となる。その内の三、四回は睨む心すら持っているのか怪しいのだが、そこは気にする事ではない。


 そう言えば、一番春を嫌ったのはいつなのだろうか。


 卒業が恋しくて恨んだ小六の頃か?

 高校受験と言う壁にぶち当たる年になった中三の時か?

 社会人一年目として、緊張と恐怖で潰れそうになった二十四のあの頃だろうか?

 はたまた今現在だろうか?


 いや、思い出した。

 一番辛くて、毎日のように恨み続けたのは高校三年生の春だ。

 センター試験と言う馬鹿でかい壁。あの絶望的な人間関係。そして新学期早々に行われる修学旅行。

 多分最後が一番辛かっただろう。実際辛かったし。


 それにしても、思い出とはおかしなものである。

 その日、その当時に過ごしていた時は辛いだの苦しいだのと苦しみ悶えていたが、十年二十年と経てば懐かしく輝いたモノと変わっているのだ。


「今が一番幸せなのかもしれないな」


 カッコよく、どこかの主人公気取りでそう呟いてみる。まさか今年で五十にもなってまだ厨二病を患っているとは。中二の頃の俺が見れば爆笑するに違いない。


 しかし、中二の俺。お前はその二年先で絶望を見る事になるんだな!ザマァ!!……なんで過去の自分に喧嘩売ってんだろ。


「━━━━━爺ちゃーん!暇?暇だね!遊ぼうよ!」


「あぁ、(ゆず)か。って、爺ちゃんって呼ぶな爺ちゃんって。これでもまだ五十なんだから」


 それに、聞くのなら勝手に決めつけるな。俺が『休日の真昼間から酒飲んでる老害』みたいなレッテルが貼られるだろ。


 可愛く髪をツインテールで結んだ少女は、気さくな笑みを浮かべながら色々な玩具を俺の前に並べた。将棋、オセロ、トランプ、UNO、百人一首、そしてプレステ5のコントローラー。


 いや、コレお前一択じゃん。最近の小学六年生の少女がオッさんと将棋するとかどこの薄い本の冒頭だよ。薄い本でも見かけねぇわ。


「お前、これ一択だろ?いや先ず百人一首って何か知ってる?うかりけるハゲって知らないだろ?」


「バレた……!うかりけるハゲ?うかりけるって何?」


「百人一首における小中学生で一番人気の札だ。ほら、ハゲ好きだろお前ら?」


「いや、好きじゃないけど」


 おかしいな。俺の頃はハゲ大人気だったのにな。あー違った。ハゲが大人気だったのは、担任がハゲだったからだ。毎度ハゲハゲ言いながら先生の悪口を言っていた。言うことなんてハゲとデブしかなかったんだけど。


「そんなハゲの事より、おじさんゲームしよ?得意ってママが言ってたよ」


「いや、ゲームのジャンルが違うからそんな期待かけられても……」


 俺がやってたのはひたすらPvPを繰り返すガンゲーと、モンスターを狩りまくるアクションゲームだけ。

 故に小学六年生女子と言う、人によれば『妻』と成り得る女性とバンバン銃ぶっ放したりできるわけがない。


「?やるのコレだよ?前に誕生日で買ってくれたんだー!」


 嬉しそうに語る柚が取り出したのは『私に青春ラブコメは存在しない!』と言うタイトルのギャルゲーだった。ピンク髪の少女が、四方八方にイケメン男子に囲まれている。


 いやおい。それ一人プレイ専用だから!それだと一緒に遊べないから!まずなんて物を欲しがってんだよ、お前。


「ほら、私一人だったら男の人の気持ちなんてわからないじゃん?おじさんなら経験豊富だから教えてくれる!」


 なぜだ。なぜ特に何も思っていないのに『経験豊富』がエロく聞こえるんだ……!

 賢者だ。賢者にならないと!


「あの、俺そんなに恋愛経験ないんですけど?」


「えー?だっておばさんと結婚してるじゃん。それだけで十分だよー」


「はぁ……ちょっとだけだぞ。ルート一個しかやらないからな?」


「う、うん。結構手伝ってくれるんだね」


 やや呆れ気味にそう呟いた彼女を他所に、俺はゲームの主電源を入れて以前に入れていた『キングオブムカデ』を抜いて、彼女の持つディスクと入れ替えた。


 キングオブムカデに関しては最上級の糞ゲーである。ムカデ競争で順位を決めるレーシングゲームなのだが、チーム全員を操作できないので途中でドミノ倒しが起こったり、前の奴がつんのめって撃沈したりとマトモに遊べるものではなかった。

 こんな物を深夜テンションと言う理由で買ってしまった俺を心底恨みたい。


「青春かー。どんなんなんだろ……」


 そんな風にして準備をしている俺とは別に、彼女はそうどこか楽しそうで、どこか不安がっている様子で口を開いた。そんな彼女を横目に見ながら俺はふと思う。

 彼女の思う青春とはどんなモノなのだろうか、と。

 このゲームのような逆ハーレムなのか。それとも両思いの純愛ラブストーリーなのか。はたまた片思いからの逆転系ラブコメなのか。


 まぁなんにせよ。その物語に俺は存在しない。俺は俺の物語で主人公となったのだ。今度はゆっくり彼女の青春ラブコメを堪能しようと思う。


「……ねぇ、おじさんの青春はどうだったの?話してよー」


 ボーッと幼き少女の色恋事に夢馳せていると、唐突に彼女が聞いてきた。その顔には好奇心が非常に溢れており、まるで散歩前の子犬のようにソワソワしている。

 そんな幼女を見て、NOと言えるわけがない。


「多分なんも面白くないぞ?」


「別に大丈夫!」


「ゲームできないぞ?」


「いーよ。家でもできるから」


「はぁ……そうだな俺の青春は━━━━━━━」


 さて、俺の青春の話か。

 俺に青春の二文字が存在したのかどうか怪しいものだが、恋をしたと言うのであればそれは青春に当てはまるのだろう。

 ならば言葉で表すのなら、どれが一番当てはまっているだろうか。


 ひとしきり考えたが、良しと思える物は一向に出ない。だからあの時の事を思い出しながらパッと口に出たものにした。



「━━━━秋花が彩っていたな」




 そう。これが高校三年生の俺に起きた青春。

 長い長い俺の人生の春は、青くもなければ鮮やかでもない。秋花が目立つ春だった。



 ただ迷い、ただ悩み、ただ楽しんだ、俺のただ少ない思い出。それが黒垣蓮(くろがき れん)の青い春である。


初めまして、お久しぶりです、おはようございます、こんにちは、こんばんは。

これから『二度とない俺の青春は崩壊に向かっている。』を書いていくつもりの■です!

一応青春ラブコメって型ですが、中身は青春群像劇なので「は?なんで目線変わんだよ氏ねよ」的な発言は勘弁して下さい。泣きます。死にます。


最後に!これから毎日投稿する(つもり)ですので、どうぞよろしくお願いします!


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